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「きれいだ。すごく似合っている」

 丈の短いナイトドレスだから脚が丸見えで恥ずかしい。つい脚をすり合わせてしまう。

「あり、がとう……」
「触れてもいい?」
「どうぞ」

 ぎゅっと目をつぶったら、ノア様が少し笑ったみたいだった。
 薄布越しにノア様の手が肌に触れる。

「可愛い。早く脱がしたいけど、脱がすのも惜しい」

 ノア様にまぶたの上にキスされて、そっと目を開けた。

「ずっと見ていてほしいな。二人の初めての夜だから」
「うん……でも、恥ずかしくて」
「恥ずかしいのはお互い一緒だから。先に脱ごうか?」

「でもっ、そしたら、私……どこを見ていいのか困っちゃうから……!」

 ノア様は小さく笑って、自身が着ていたガウンを脱ぎ捨てた。

「ノア様……っ!」
「イーディ、私の顔を見ていたらどうかな?」
「……っ! ……はい」

 ノア様にからかわれてしまったみたい。
 思わず口をとがらせていたらしい私の唇をノア様がついばんだ。
 柔らかい内側に触れられてピクッと身体が震える。

「本当に、素直で可愛い」

 ノア様の口づけが深まる。
 唇の内側を舌でなぞられて、さらに口内を探られた。
 さっきまでとは違う舌を絡ませる口づけに頭の中がぼうっとしてくる。

「ん……っ」

 息づきが難しくて、鼻から高い声が抜けた。
 ノア様が鼻から息を吸って、って教えてくれたけど、うまくできない。
 口から息を吸おうとすると、ノア様が深いところまで舌をはわせてくる。
 
 ノア様に丸ごと食べられてしまいそう。
 話したり食べたりする以外に、こんなふうに口を使うことを初めて知った。
 
 お兄様から借りた本ではわからなかったけど、恋愛小説にはキスしたら天にも昇る気持ちになって、その先は熱かったり、体が解けちゃいそうになったり。
 間違っては……いないのかな?

「ノア様……っ、ん……!」

 シーツをきつく握る私の右手を包み込んで、指を絡ませて握ってくれた。
 どうしよう、すごく幸せ。
 でももう片手はナイトドレスの上から私の胸を柔らかく包み込む。
 
 もっと大きかったらよかったのに、ノア様は可愛いって言って薄布越しに先端を指ではさんだ。

「んんっ」

 新しい刺激に驚いて、唇を合わせたまま背をそらしてしまった。

「痛かった?」
「痛くない……けどびっくりして」
「それならよかった」

 肩紐のリボンを引いて、そっと鎖骨に指をはわせる。
 リボンをほどいてしまえば簡単に素肌をさらしてしまう造りだけど、ノア様はほんの少し生地を下げて直接胸に触れた。
 
 彼の手のひらが熱くてますます鼓動が速まる。
 でも少ししか見えていないはずで、隠れていることに安心してしまった。

「きれいだ」

 そっと唇をついばんだ後、ノア様はあごの先に口づけ、首へ吸いつく。
 ふわふわのノア様の髪がくすぐったいのに、同じライラックの匂いがして嬉しい。
 
 撫でてみたい気持ちもあったけど、首すじをなぞる唇は熱いし、胸に触れる手はいたずらに動くから感情が追いつかない。
 
 混乱しているうちにノア様が胸の先を口に含んで舌で転がした。

「あ……っ!」

 思わず口を抑えると、ノア様が私に笑いかける。

「もっと聞きたいのに」

 片方を口に含んだまま、もう片方は親指で弾くように柔らかく触れる。
 ささやかな大きさなのにノア様は意外と楽しそう?
 私だけ乱されている。

「ノア様……ノア、さまっ」

 触れられていないのにお腹の奥がなんだかおかしい。
 自分の身体なのにどう伝えていいかもわからなくて、ノア様の名前を呼ぶと――。

「そろそろ、ノアって呼んでほしいな」

 まだ早いの。
 そう思って首を思いきり大きく横に振ると、ノア様が残念そうに笑った。
 ノア様は私にとってずっと好きで、特別な人だから、ノアと呼ぶ心の準備もできていない。

「しかたないね」

 私の瞳をのぞきこんで再びキスをした。
 何度か重ねるだけの口づけをした後、私の頬をそっと撫でる。
 なんだかとても大事にされているみたいで幸せな気持ちで心が満たされる。

「好き、もっと……」
「キス?」

 ノア様が触れるだけのキスをして私をじっと見つめる。
 
「キスも、ノア様も……大好き」
「素直なところが本当に可愛くて……アンドレが大事にしていたのがよくわかる。……イーディ、首に腕を回して」

 言われた通りにすると、ノア様の顔が近づいて吐息を奪うように深く唇を重ねてきた。

「イーディ、愛しているよ」

 キスの合間にささやかれて、驚きと嬉しさでぎゅっと抱きつく。
 好き、大好き。ノア様のすべてが好き。

「あぁ、もう、本当に……大切にする」
 
 かすれた声でつぶやいたノア様は、ナイトドレスを引き抜くと私の脚の間に身体を置いた。
 お互いの素肌が心地よいけれど、何もへだてるものがない。腕を離したら身体が見えてしまうし、この後はどうしたら――。

「ん、んんっ……!」

 ノア様の手が脚のつけ根に触れた。
 本にあった通り、濡れているみたい。
 ちらりとノア様を見上げると嬉しそうな顔?

「大丈夫だよ」
 
 ゆっくりと指をすべらせ、花芽を見つけると優しく撫でる。
 甘いうずきが下肢全体に広がった。
 ノア様にも私の驚きが伝わっているはずだけど、やめてくれない。

「ん、ノア、さま、あ、んんっ」
「痛くない? 気持ちいい?」

 痛くない。気持ちいい。
 口づけを続けながら同じ調子で指を動かすから、答えることができないけど、ノア様には私がどう感じているかわかっているみたい。

「こうされるの、好き?」
「ん」
「可愛い」
 
 息つぎの合間にも可愛いって何度もささやいてくれる。
 どんどん熱がたまってもどかしいけど、ノア様だもの。大丈夫って思えた。

「たくさん気持ち良くなろうね」

 たくさん? 
 
「ん……っ、あ、あっ――‼︎」

 目の前がチカチカして熱がはじけ、一気に身体から力が抜けた。
 空気を求めて喘ぐ私をすみれ色の瞳がじっと見つめてくる。
 私だけ息を乱していて、恥ずかしい。

「イーディ、続けていい?」
「うん……大丈夫と思う」

 身体がベッドに深く沈んでいるような気がする。
 このまま目を閉じたら眠ってしまいそうだけど――。
 
「このまま寝かせてあげたいけど、本当の夫婦になりたいんだ。だから、もう少し起きていてね」
「うん」

 ノア様の優しい眼差しと想いに嬉しくなった。
 私だって本当の夫婦になりたいもの。

「目が覚めるくらい気持ちよくなれるように頑張るから」
「私はもう十分だから……ノア様が気持ち良くなれるほうがいいわ」
「イーディが気持ちいいと私もよくなるんだ」
 
 そういうものなのかと思ってうなずいた。
 ノア様が嬉しそうに笑って、唇にキスをする。
 多分ノア様もキスが好きだと思う。

「ノア様のキス、気持ち良くて好き。幸せな気持ちになるの」
「そう……私も同じだよ」
 
 私の髪を撫でて、優しい笑みを浮かべた。
 もう一度キスした後、ノア様は私の身体にキスを落としながら移動して太ももに触れる。
 それからためらいなく脚のつけ根に顔を寄せた。

「ノア様! 待って……⁉︎」
「大丈夫だよ」
「でも」

 花芽にキスされて、ハッと息を呑んだ。
 湿った温かい感触が甘く響いて、一気に下肢に力が入る。

 快楽を知ったばかりの身体は、もっとほしいって言っているみたいでノア様を拒めない。
 思わず顔を覆った。

「ノア様、そんなことしないで」
「ごめんね、この先に進むためには必要なんだ」

 
 
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