3 / 6
3 ※
しおりを挟む「もう少しつき合ってもらおう」
ディルクが小さく笑って近くに置いてあった小瓶をあおると唇を重ねてきた。
甘い香りがするこれは、何?
まさか媚薬?
顎を掴まれ、歯を食いしばって侵入を拒む。
胸を押すがびくともしない。
鼻をつままれ、咄嗟に顔を左右に振るが息苦しさに観念して口を開けると生温かい液体が送り込まれた。
「ただの回復薬だ」
ディルクの言葉に、迷った末飲みこんだ。
ハンナが普段使用するものより数段ランクの高いそれ。
彼も冒険者だった?
体を重ねながら回復薬を飲ませる男なんて初めて会ったから、ハンナは眉をひそめる。
ディルクが笑って言う。
「もったいなくて終われない」
抜かずに足を持って回転させられたハンナは枕に顔を埋めていた。
うつ伏せになると自分の激しい心音が身体中に響く。
だから、空気を取り込もうと顔を上げ浅い呼吸を繰り返した。
ディルクは後ろからのしかかりながら浅くゆるゆると動く。
剛直がまんべんなく内壁をこする。
「これ、だめ……」
お願いだから早く終わってほしいと、ハンナは潤んだ瞳に力を込めて振り向いた。
体力に自信があると思っていたし回復薬も飲んだけれど、すでに何度も達していてつらい。
なのに今すぐにも体は快感を受け取ろうとしている。
「こんなの死んじゃう」
「煽るな」
そんな色っぽい顔で言われても、とディルクが呟く。
背中に強く吸いついていくつもの赤い花を咲かせて満足すると、ハンナの腰を引き上げた。
「待って!」
当たる位置と角度が変わり、内壁がうねってディルク自身を思い切り絞り込んだ。
「……っ! 早く終わってほしいのだろう?」
ゆるゆると突かれて愛液が震える太ももへと伝う。
それを塗りこむように秘核を撫でながら、腰を押しつけた。
「んっ、ふぅ」
ハンナの腰が左右に揺れた。
ゆっくり引いてからぐっと突くと、あからさまに腰が揺れる。
快楽を受け取ろうとする様子をディルクは笑って楽しむ。
「ディルク!」
「遅い自覚はあるんだ……協力してくれ」
手を伸ばし胸の先端を指で挟んだ。
ハンナの内壁が誘い込むように蠢いている。
「んぅ、ん、んーっ……」
それからディルクが思い切り揺さぶると、ハンナの嬌声が枕に吸い込まれ、肌が重なる音と水音が部屋に響く。
ハンナの声が聞きたい、そう思ったディルクは口に指を突っ込んだ。
そうされて思いがけない刺激に喉がつまる。
口を閉じることもできず声が抑えられず、ハンナは負けずにその指を噛んだ。
痛みに呻いたディルクだが、速度を早めハンナを絶頂に追い上げる。
「あうぅ……!」
すぐさま剛直を離すまいと内壁が収縮して、ディルクもようやくハンナの中に白濁を吐き出した。
***
なぜだろう、ハンナが目を覚ますと湯船に浸かっていて後ろから抱きしめられていた。
先ほどが夢か、今が夢か……いや体の状態からわかっているけど現実だと思いたくない。
窓の外はまだ薄暗く、夜明け前だろうか。
ここに来たのは夕方前だったはずだけど。
ハンナがゆっくり振り向くと、彼は目を閉じている。
知り合って数時間で一緒に風呂に入り体を重ねた。
いくらなんでもあり得ないのに、この男のことをなぜか嫌いになれない自分がいる。
いつもなら一度寝たくらいじゃなんとも思わないし、整った顔と言うわけではないのに彼に惹きつけられた。
体の相性がいい……?
こっちの気持ちに構わず始めるし。
長いし、自分勝手だし。
もっと下手くそだったらすぱっと切れてよかったのに……心が乱されて困る。
じっと見つめていたからだろうか、ディルクの鳶色の瞳がまっすぐ見つめてきた。
「大丈夫か?」
「多分。お腹空いたわ」
「食事をしてから話をしよう」
ハンナが頷くとディルクは先に浴槽から出て浴布を手にした。
「立てるか?」
浴槽の縁に手をついて立ち上がるとハンナの足はがくがくと震えていて。
ディルクは浴布を広げて包んで抱き上げ、手早く拭いた。
ここまで脚に力が入らないとかあり得ない。
ご飯食べたら帰ろう。
ハンナは心に決めた。
***
ディルクがスープを温めながら、オムレツを作り、棚からビスケットを出した。
ハンナはその様子を横目に見ながら椅子に座って言われたとおりに野菜をちぎる。
腹におさまれば何でもいいというタイプではなくて、美味しい料理が作れる男。
それほど料理は好きじゃないからすごく楽だった。
ハンナの手元をのぞき込み、上出来だと言うと皿に取り分け塩とオイルとヴィネガーをかけた。
夜食には十分すぎる量の料理が並ぶ。
「今はビスケットしかないが、朝はパンケーキにしよう」
「朝? もうビスケットで十分よ」
今食べて数時間後にパンケーキは入らない、と言うとディルクが首を横に振る。
「もう夜だ。今夜も泊まっていけばいい」
「……夜⁉︎」
「ああ、はりきり過ぎて寝過ごしたな」
この疲れはそう言うことだったのかと、回復薬を飲んでこれなのかとハンナは力なく笑った。
再び寝台に横になり悩む。
敷布は先ほど替えた。壁側に横になると当然のようにディルクも隣に滑り込んできて、後ろからそっと抱きしめられる。
一緒にいて違和感がない。
もう絆されている?
無理をさせてしまったからお詫びに元気になるまで世話をさせてほしいとディルクに言われたけど、明日には回復してるはずだから、帰れるだろう。
いや、帰ろう。絶対に帰る。
8
お気に入りに追加
427
あなたにおすすめの小説
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
【完】二度、処刑されたマリアンヌ・ブランシェットの三度目の人生は大きく変わりそうです
112
恋愛
マリアンヌ・ブランシェットは死ぬ度に処刑前に時が戻る。
三度目の巻き戻りで、なんとか生き延びようと画策している所に、婚約者の侍従がやって来て、処刑が取りやめとなり釈放される。
婚約者は他ならぬマリアンヌを処刑しようとした人物で、これまでの二度の人生で助けられることは無かった。
何が起こっているのか分からないまま婚約者と再会すると、自分は『魅了』によって操られていたと言い出して──
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
婚約破棄されて捨てられたけど感謝でいっぱい
青空一夏
恋愛
私、アグネスは次期皇后として皇太子と婚約していた。辛い勉強に日々、明け暮れるも、妹は遊びほうけているばかり。そんな妹を羨ましかった私に皇太子から婚約破棄の宣言がされた。理由は妹が妊娠したから!おまけに私にその妹を支えるために側妃になれと言う。いや、それってそちらに都合良すぎだから!逃れるために私がとった策とは‥‥
この恋に終止符(ピリオド)を
キムラましゅろう
恋愛
好きだから終わりにする。
好きだからサヨナラだ。
彼の心に彼女がいるのを知っていても、どうしても側にいたくて見て見ぬふりをしてきた。
だけど……そろそろ潮時かな。
彼の大切なあの人がフリーになったのを知り、
わたしはこの恋に終止符(ピリオド)をうつ事を決めた。
重度の誤字脱字病患者の書くお話です。
誤字脱字にぶつかる度にご自身で「こうかな?」と脳内変換して頂く恐れがあります。予めご了承くださいませ。
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
菩薩の如く広いお心でお読みくださいませ。
そして作者はモトサヤハピエン主義です。
そこのところもご理解頂き、合わないなと思われましたら回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんでも投稿します。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる