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10 if タイトル通りに鉱山へ行ってワイルドマッチョを手に入れようとした私の話。
しおりを挟む* 無事に鉱山に着いたバージョンです。
筋肉好きの方に捧げよう……と思ったのですが、ちょっと物足りないかもしれません~。
******
まるで先行きを暗示するかのような雷雨の中、私は鉱山へとたどり着いた。
しかし、ずらりと並ぶワイルドマッチョたちに、私は恐怖を覚えるどころか興奮した。
ザ・荒くれ者、かっこいい!
無精髭、野性的~!
ムキムキの腕に、ぶら下がりたい!
たまらなーい。目の保養~‼︎
「……お嬢ちゃん、本当にこんなところでやっていけるかい?」
「はい! 私、がんばります!」
実際、食堂で働くのは楽しかった。
隙あらば触ってこようとするワイルドマッチョたちをかわしながら、食器を片づける。
「ベル、今度デートしようぜ!」
「今度ね~」
「ベル、今度きれいな夕日を見に連れて行ってやる」
「ありがとー」
「ベル、海に連れて行ってやる」
「うん、またね」
こんな調子でよりどりみどりなんだけど、誰かとデートするのが面倒くさいなんて。
なんでだろう?
ここに来た当時はワイルドマッチョの旦那さまをつかまえる気満々だったのにな。
「ベル、こっち手伝ってくれない?」
私より少し遅れて入った料理人の彼に呼ばれて、いそいそとそばへ行く。
ワイルドマッチョではない、むしろ細身……とはいえ、それなりに筋肉はついている彼のアイスブルーの瞳に見つめられるとドキドキする。
「何をすればいいの?」
「これを混ぜているから、少しずつ注いでくれないか?」
まかない用の野菜のスープに溶き卵を加えていく。
私達が食べるものは、鉱山労働者よりあっさりしている。
「ありがとう。うまくいった」
なぜだろう。
彼の隣は居心地がいい。
「ベル、あとで試作品のケーキ食べてくれない? みんなに出す前に評価して欲しいんだ」
「うん、いいよ。いつ?」
「仕事終わった後でもいい? 部屋に届けても?」
「うん」
先に仕事を終えた私は、なぜか部屋を掃除して、彼を待っていた。
包みを手にしていた彼の手を引いて、中に入れる。
ここは、一応小さな女子寮のようなところで、他のみんなも恋人を連れ込んではいるけれど、これ以上目立ちたくない。
ちなみに……女性であればモテる環境のため、入れ替わりも激しく、女同士で争いが起こらないくらいサバサバしている。
それよりもどこかから話が漏れて彼がワイルドマッチョにかわいがられても困るからね。
「積極的だな……」
そう言われて、パッと手を離した。
「あの……」
「これまでもこうして、俺以外の男を連れ込んだの?」
「そんなわけない! ここに入れたのは、あなたが初めてよ」
じっと見つめてそういうと、彼が信じるよって言った。
「あの、他の人に見られて、もしあなたが危ない目に遭ったら、嫌だなって思って……」
「俺の心配をしてくれたの?」
私の部屋で、近くに彼がいて、なんだか恥ずかしくなって小さく頷いた。
すると、ぽんぽんと頭を撫でられる。
「ありがとう。意外と喧嘩に負けたことないから、大丈夫だよ」
え? そうなの?
最強の細マッチョ……?
そんなの惚れちゃう。
「これ、ベルのために作ったんだ。前に好きだって言ってたから」
包みの中に、母が作ってくれたような木の実がぎっしり入ったケーキが入っていた。
彼にそんな話をした記憶はないけど。
「……すごく、おいしい」
「よかった。ね? これからも部屋に入っていいのは俺だけにしてくれない?」
「いいよ、ルディ」
「約束だよ」
******
お読みいただきありがとうございました。
ベルを追いかけてきたルディに、そのうちつかまっちゃうことでしょう!
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