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さん

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* 狩りの後の描写がほんのり出てきます。苦手な方は念のためご注意くださいませ。








******

 
 ワタシはこの街に来てまだ三ヵ月。
 とりあえずみつけた日雇いで皿洗いの仕事は、低賃金で長時間労働。
 職場で用意してくれた部屋にルームメイトと一緒に住んでいるけど、もうすぐ彼女が結婚するから辞めてしまうし、ワタシも長居するつもりはなかった。
 そんな事情をアルに話したところ。

「ここに住んでいいから、俺の助手をしろ」
「本当⁉︎ すごい! 神様、アル様、ありがとう!」

 神様と並べて讃えたら、大袈裟だとアルが顔をしかめた。

「でもでも! 仕事と住まいと番がいっぺんにみつかったんだよ! ワタシのフグウの人生はこれから春を迎えるんだぁ~」
「不遇……?」

 アルが眉をひそめる。

「聞いてくれる?…………あのね、ワタシが小さいのは十分に食べれなかったからなの」
「…………」
「……ワタシ、三人兄妹なんだけど……ご飯の時は二人の兄におかずを奪われ、隠しておいたおやつを盗まれ、庭に出て畑の野菜を食べてしのいだ! そしたら、兄たちが野菜好きと勘違いしたのか食べたくない野菜をワタシの皿に山盛りのせて、それを食べるしかない! 他にもね、ワタシが作った花のモチーフは寝ている間に兄たちが勝手に持ち出して恋人にあげてしまったんだよ! それで……成人したし、家を出たの」
「…………家出か?」
「ううん。母さんが!」
「母親が許可したのか?」
「うん。かわいい子には旅をさせろって!」
「……ここまでよく無事にこれたな」
「あ~、ワタシ、危機察知能力と運動神経、反射神経もものすごくいいんだよね。そのおかげかな」

 そんな会話をした後、アルの職業が猟師で、バナナを作る人じゃないことがものすごく残念に思った。

「……この土地でバナナは作れねぇだろうよ」
「……ソウナンダー! ゴメンネ?…………アルはやっぱり素手で狩るの? 素手かな? 素手だよね?」
「……罠を仕掛けて狩りをしている……地味だなとか思ってるだろ」
「ウウン、ソンナコトナイヨ」
「…………」

 バナナ発言でイラッとさせちゃったから、本気で褒める!

「どんなアルもカッコいいよ」

 あ~でも、携帯食はバナナがいいな。









 山の中をずんずん歩くアルの後をワタシは一生懸命追いかけている。
 後ろを振り向かないから、ワタシが遅れがちなことに気づかない。
 その背中、カッコいいなぁって思って見惚れてしまうのも遅れる原因なんだけど。

 しばらくそんな感じで歩いていたら、ゆっくりとアルが振り向いた。

「キャット? なんでそんな離れてるんだ?」
「アルが早いから?」
「すまん……そこに獲物がかかっているから回収してくる。そこで待っていてくれ」

 アルが鹿を抱えてやって来て、山小屋に向かうことになった。
 当たり前だけど、手慣れた様子で下処理をして今晩はここに泊まるらしい。

「……気を失ったり、悲鳴あげたりしなかったな」
「田舎育ちだから、ワタシもトリ締めたり羽根むしったりできるよ?」
「……なるほど」
「ワタシを試したの? さらに相性ピッタリなことがわかってよかったね!」
「…………お前にはここで燻製にするのを手伝ってもらおうと思ったんだがな。もうちっとやれそうだな。……肉ならたらふく食わせてやるよ」

 燻製肉が食べられる!
 
「アル、大好き! お肉も大好き! なんでもやるからね!」

 肉と同列かよって聞こえたから、ワタシは首を横に振って抱きついた。

「アルの背中を初めて見た瞬間にワタシの全部がアルを大好きになって、ワタシの全部がアルのものになったんだよ!」

 ぐりぐりとアルの厚い胸板に頭を押しつけて、こっそり匂いを嗅ぐ。
 うん、血の匂いで残念。
 下処理していたからしかたないけど。

「……こっちこい」

 アルの肩にかつがれて、小屋を出た後、数十歩歩いたところに小川があった。

「入るぞ?」

 いきなり?
 一瞬で裸になったアルが、私に手を伸ばす。
 あっという間に脱がされて、抱えられて川に入った。
 冷たくはないけれど、ぶるりと震える。

「すぐあったまる」

 一緒にしゃがみ込んで手早く肌をこする。

「今夜のお風呂のかわり?」
「……キャット。掴まってろよ」
 
 腰を持ち上げられて、下から陰茎がワタシの脚の間をノックする。

「……ア、ル……? ここ……、川あああ~っっ!」

 ひと息に挿入されて震えるカラダをアルに預けた。

「なんでぇ~?」
「お前がかわいいこと言うのが悪い」

 ぐりぐりとアルが腰を押しつけているうちに、馴染んできて濡れてくる。

「冷えるな」

 そのまま立ち上がり、どっしりと構えてワタシのお尻をしっかり掴んで腰を打ちつける。
 安定感抜群で落とされる不安はないけど、なんで川でこんなことになってるのかわからない。

「アルぅ」
「…………痛いか?」
「痛くないけどぉ、アルがおっきいからぁ」
「…………小屋まで待てねぇ」

 ワタシはアルの太い首に腕を回してぎゅっとしがみつく。
 筋肉質で体温の高いカラダが、川の水で冷えたワタシにはとても気持ち良くて、絡めた足に力を入れた。

「んぅ~、キスもぉ」

 ぱちゅんぱちゅんとワタシのナカを擦り、肉厚な舌が口内を暴れる。
 こんな野生みたいに遮るもののない明るい空の下でカラダを繋ぐことになるなんて。
 この開放的な空間がワタシの心とカラダを自由にする。

「んむっ……いいっ、……気持ち、いいよぉ……アル、大好きぃ……」

 ワタシの中でグッと大きくなったアルが、欲望を解き放った。

「……キャット……お前……」

 何かを言いかけたけど、黙ってワタシを力いっぱい抱きしめる。

「……腹減ったな」
「うん、バナナ持ってる?」

 ワタシがワクワクして聞くと、アルが眉を寄せた。

「…………俺は肉を食うが、お前はバナナでいいんだな」
「肉にしてください、お願いします」
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