5 / 9
5 妹の婚約者チャーリーは混沌を連れてきた
しおりを挟む姉の気持ちの浮き沈みもまだまだ気になるけれど、母があと数日で戻ってくると連絡があっで安心した。
心配性で悲観的な祖母は、今回体調を崩したことで、あとわずかしか生きることができないと思い込んでしまったらしい。
けれど、医師によると全く問題ないらしいので、元気になって、姉の結婚も祝ってほしい。
そして、穏やかな昼下がりに妹の婚約者チャーリーもやってきた。
「僕、リアさんとなら婚約してもいいです」
私の隣にいたウォードが無言で私の手を握り、チャーリーに笑顔を向けた。
「……なんだって?」
「ヒッ、え⁉︎ あの、メロディから聞いたんですが、僕達の婚約者を交換するって……」
そう言いながら、彼は父を見る。
でも、父は目を逸らしてモゴモゴつぶやいた。
「いや、それは……」
「あり得ませんよ。……ねぇ、リア?」
父がはっきりしないから、ウォードが私のほうを向いた。
「あのね、ウォード。メロディが言ってるだけだから、本気にしないで」
「ひどい! 私だけが悪いみたいな言い方して! 先にエリザベスお姉様が、エイダン様をリアお姉様に押しつけようとしたのよ!」
ウォードが笑顔のまま私の手を強く握る。
何この状況。
あとで説明が大変になるんだけど。
「お姉様が結婚に対して不安に思って気の迷いで言っただけで、解決してるわ。ね、エリザベスお姉様?」
「…………」
ちょっと、お姉様、ここで俯いて黙らないで!
「……私としては、このままリアと結婚するので、交換なんてあり得ませんね」
「私もウォードと結婚するのが楽しみなの」
そう言って彼に目を向ければ、微笑んでいるけど目が笑っていない。
ここにいる人達は彼の様子に気がつかないの?
これ以上、煽らないでほしい。
「本当に? でも、リアお姉様ってウォード様とデートの後はいつもぐったりしてるから、チャーリーのほうが気楽につき合えると思うわ! チャーリーと一緒にいたらそんなことないもの」
それは、ウォードが私の体に触れてくるからで。
俺を忘れないように、ってしばらく会えないのは寂しいからって私が何度も達するまで離してくれないから。
でも、そんなことは言えない。
だって私たちはまだ結婚してないんだもの。
というより、ここまでしていて今さら結婚しないなんて考えられない。
「僕となら楽しく過ごせますよ! 流行りの場所は知ってますし、僕に気なんて遣わなくていいですから」
チャーリーはニコニコして言うけれど、ウォードの顔は見てないのかな。
隣から冷気を感じて、怖い。
「ウォード様、一旦私と婚約したことにしてすぐ解消すればいいんですわ。……私達、うまくやれそうにないですもの!」
妹の言葉にぎょっとする。
みんなが見つめる中、妹があっけらかんと言い放った。
「私、デビューして思ったの! 私より可愛い子なんてほとんどいないわ。だからね、たくさんの方が私と話したがるし、ダンスに誘ってくださるの。いろんな方と出会って、私は真実の愛を見つけるべきだわ!」
私は顔が引きつるのを感じて、言葉を失った。
同じ親の元で育ったのにどうしてこうなってしまったんだろう?
父が甘やかし過ぎたんじゃないかと私が睨むと、視線に気づいて目をそらした。
早く母が戻ってこないと収集がつかないかもしれない。
そう思っていたら。
「……メロディ、チャーリーに謝って。チャーリーは素直でいい子じゃないの」
ずっと黙っていた姉が妹をまっすぐ見る。
「え? だって本当のことよ。お父様も頷いてくれたわよね」
「え、いや、その……」
さすがに父も本人の前で言葉を濁す。
そこははっきり否定したらいいのに。
「あなたは私達から見てもとても可愛いわよ。だけどね、縁があって婚約したのだから、そんなふうに言うものではないわ、メロディ」
姉がまともなことを言っているけど、最近まで結婚したくないって言っていたのを私は忘れない。
その調子でエイダン様と結婚してほしいから黙っているけど。
「エリザベスお姉様だって、結婚したくないって言ったじゃない! エイダン様とリアお姉様が結婚するようにって、お父様まで味方につけたくせに! ずるいわ! さっきから自分ばっかりいい子ぶって!」
癇癪を起こした妹が泣き叫ぶ。
もう、どうしたらいいんだろう。
ぎゅっと握られた手が痛いんだけど。
「僕がエリザベスさんと結婚すれば……。そのほうが幸せかもしれない」
チャーリーがぽつりと漏らした。
1
お気に入りに追加
1,123
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
『番外編』イケメン彼氏は警察官!初めてのお酒に私の記憶はどこに!?
すずなり。
恋愛
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の身は持たない!?の番外編です。
ある日、美都の元に届いた『同窓会』のご案内。もう目が治ってる美都は参加することに決めた。
要「これ・・・酒が出ると思うけど飲むなよ?」
そう要に言われてたけど、渡されたグラスに口をつける美都。それが『酒』だと気づいたころにはもうだいぶ廻っていて・・・。
要「今日はやたら素直だな・・・。」
美都「早くっ・・入れて欲しいっ・・!あぁっ・・!」
いつもとは違う、乱れた夜に・・・・・。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんら関係ありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
〈短編版〉騎士団長との淫らな秘め事~箱入り王女は性的に目覚めてしまった~
二階堂まや
恋愛
王国の第三王女ルイーセは、女きょうだいばかりの環境で育ったせいで男が苦手であった。そんな彼女は王立騎士団長のウェンデと結婚するが、逞しく威風堂々とした風貌の彼ともどう接したら良いか分からず、遠慮のある関係が続いていた。
そんなある日、ルイーセは森に散歩に行き、ウェンデが放尿している姿を偶然目撃してしまう。そしてそれは、彼女にとって性の目覚めのきっかけとなってしまったのだった。
+性的に目覚めたヒロインを器の大きい旦那様(騎士団長)が全面協力して最終的にらぶえっちするというエロに振り切った作品なので、気軽にお楽しみいただければと思います。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
慰み者の姫は新皇帝に溺愛される
苺野 あん
恋愛
小国の王女フォセットは、貢物として帝国の皇帝に差し出された。
皇帝は齢六十の老人で、十八歳になったばかりのフォセットは慰み者として弄ばれるはずだった。
ところが呼ばれた寝室にいたのは若き新皇帝で、フォセットは花嫁として迎えられることになる。
早速、二人の初夜が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる