上 下
11 / 11

10 新婚旅行② ※

しおりを挟む
* 懲りずに書きました! 風呂シーン、ファンタジーです! 








******


 浴室を開けると、そこは別世界だった。
 青々とした木々と咲き乱れる見たことのない花々。
 奥のほうに滝があって、水面はなぜか虹色に輝いていた。そして湯気がたっている。

「まさか……あれが浴槽……?」
「そうみたいだね。噂は聞いていたけど、なかなかすごい。先に体を洗って、マッサージにしよう」

 クレメンテ様が進んだ先に、なぜか天井から吊り下げられた2人掛けのブランコがあって驚いた。

「これは、休憩のため……?」

 裸で2人で並んで?
 とてもそんなことはできそうにない。
 子どもなら喜ぶのかな。
 
「そうだね。あとで座ってみる?」
「す、座るわけないでしよ、クレメンテ様っ」

 クレメンテ様は何も言わずに笑って、私を大理石でできた長椅子に下ろした。
 ちょうど上から雨のように湯が落ちるように作られていて、寝転がったら気持ちいいのかもしれない。

 すみのほうにいびつな形の椅子のようなものまであった。見たことのない芸術的な置き物が飾られている。
 とにかく不思議な空間で、夢の中にいるみたい。

「ルフィナ」

 クレメンテ様が石鹸を片手に目の前に立った。

「私が自分で」
「俺から楽しみを奪うの?」
「え? あの、でもっ……」
「じゃあ、ルフィナが俺を洗って、俺がルフィナを洗えばいい」

 そう言われて私も石鹸に手を伸ばしたのだけど、クレメンテ様が蛇口を開いたせいで、上からお湯が降り注いだ。
 ややぬるめだけれど、驚いてクレメンテ様にしがみつく。

「今日のルフィナは積極的だね」
「そう、じゃありません! 雨みたいに落ちてくるから……っ」
「ごめん、ごめん、一度止めようか」

 私が顔にかかった髪をよけていると、クレメンテ様の大きな手が体をなぞる。

「ひぁっ……⁉︎ 待って」
「そのまま大人しくしていて」

 一緒にお風呂に入るのは初めてではないし、体を洗ってもらうのも初めてではないけど……恥ずかしさは消えてなくならない。

「私も……!」

 石鹸を泡立てて、目の前のたくましい体に触れる。
 2人で触れ合っていると、だんだん目的が変わってきているような気がして――。

「ルフィナ、流すぞ」

 再びお湯が降り注いだけど、今度は慌てずにすんだ。
 きれいに流した後は長椅子でマッサージを受けるのかと思ったものの、抱き上げられて滝へと向かう。

「温まりながら、足をほぐしてあげるよ」
「クレメンテ様、マッサージだけですからね!」
「……ルフィナ、下を見て。何とも不思議な湯だな」

 湯に入ると、クレメンテ様の脚までキラキラと光っている。
 何かの魔法でもかかっているのかもしれない。そのまま一緒に胸元まで浸かった。

「すごく、きれい……!」
「ルフィナ、きれいだね」
「どういう仕組みなんでしょう? 滝はただのお湯に見えるのに……」

「この島には特別な魔法があるみたいだよ。特にこの宿屋は温泉で有名だ」
「クレメンテ様、連れて来てくださって本当にありがとう。忘れられない旅になりそう……」

 新婚旅行っていうだけで、幸せなのに――。

「毎年訪れてもいいね。俺もすごく気に入ったよ」

 満足そうに目をつぶるから、お礼の気持ちをこめてそっと唇にキスをした。
 少しだけずれてしまって、もう一度、押しつける。

「ルフィナ」

 クレメンテ様の腕が私をきつく抱きしめて、深いキスを返された。
 そんなつもりは全くなくて、クレメンテ様の肩をぎゅっと掴むのだけど、全然離してくれない。

「……ん、……めっ、マッサージだけ、って……」
「煽るのが悪い」

 後頭部に片手が伸びて、ますますキスから逃れられない。
 舌を絡めるのも、口内を探られるのも、全部彼が教えてくれた。
 どうされると気持ち良くなるのかも……。

「ルフィナ、いやか?」

 わずかに唇を離して、低くささやく。
 クレメンテ様はずるい。
 こんなふうにされたら、いやだって言えないのに。
 
 頷く代わりに唇を押しつけた。
 クレメンテ様が私を抱えたまま立ち上がり、大きな岩に腰を下ろす。

「クレメンテ様? ここで……?」
「いやか?」
「……ここはいや、です」
「そうか、ならキスしようか」

 お互いに裸のまま抱き合って、深いキスをして。
 クレメンテ様はいつも、ずるい。
 いやって言ったけど、先に進んで欲しくなるから。

「クレメンテ様……」
「どうした?」
「……触れて下さい」
「あぁ、マッサージがまだだったね」

 そう言って脚に触れる。
 今の私はクレメンテ様の熱が欲しいのに、すごく焦らされて。

「……クレメンテ様、意地悪しないで」
「ルフィナを愛しているだけだ」

 笑いながら私の腰を持ち上げて、熱の上へと下ろす。

「あ……っ」

 深く穿うがたれて、クレメンテ様にしがみついた。
 今の刺激だけで、彼の熱を取り込もうと体が震える。

「まだ始まったばかりなのに……ルフィナは可愛いな」

 私の腰を揺らして、高みへと追い上げた。私の中に彼の熱で満たされるのを感じて、浅く息を吐く。ようやく言葉らしい言葉が口をついた。

「クレメンテ様のっ、せいです、から……っ。少し、休ませて……」

 クレメンテ様は体力がありすぎる。
 私の耳元で低く笑った後で、ささやいた。

「ブランコに乗ろうか」

 部屋に戻ったほうが休めるんじゃないかと思ったけれど、それ以上考えられなかった私は頷いた。
 大人仕様のブランコについて、私は身をもって知るのだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(29件)

鍋
2022.04.29

わぁー
   ∧_∧ ∧_∧ ∧_∧
⊂ヽ( ´ิω´ิ)つ ´ิ∀´ิ)つ ´ิ0 ´ิ)つ
  \   /  / /
  ( __フ( __フ ( __フ
  (/  (/ (/
このお風呂で遊びたい 
ブランコだって乗るよー!!

       ___
      /      \
  /          \
  /   ⌒   ⌒   \
  |  /// (__人__) ///   |
. (⌒)              (⌒)
./ i\            /i ヽ.

甘エロ、嬉しいです💖

能登原あめ
2022.04.29 能登原あめ

ブランコって無心になれていいですよね!
好きな遊具No.1かもしれません♪
٩(๑>∀︎<๑)۶٩(๑>∀︎<๑)۶

私、ここに本を持ち込んだら、数時間かるく過ごせそうな気がします✨
甘……甘くなってましたか⁉︎
コメディに傾きそうで困りました。
鍋さま、コメントありがとうございました🤗

解除
青空一夏
2022.04.29 青空一夏

|ェ)・`)チラックマ💓
ぶ、ぶらんこ、ブランコォーー😳
大人の......

なんとなく想像できる
( ˶‾ ꒳ ‾˵)ムフフ←多分、間違ってる青空

ユーチューブでウォータースライダーがある❤ホテル
見たことあって
滑り台があるのかなって想像してたんですけど
ブランコなんだぁーー

  (ニ三三三三三()
  || ̄8 ̄ ̄8 ̄||
  || /  /゙ ||
  |∧_∧ /゙  ||
  (・ω・`) キーコ ||
  ○  ○ノ キーコ||
  /< < /)   ||
(三三三三()ソ  ||
  ||     ||
""""""""""""""""""""

能登原あめ
2022.04.29 能登原あめ

なんとなんと、想像できると✨
!?(✧︎◡︎✧︎) ​ )੭ु⁾⁾

実はすべり台も考えました♨️
大浴場にすべり台がある温泉施設が昔あって、裸ですべる女子達。
裸だからか勢いついて水しぶきすごかったですね。
今考えるとすごい空間(๑˃▿︎˂๑))

ブランコは休憩中しつつ……
休憩できるような感じのことを……
多分(* ˘ ³˘)♪
青空さま、コメントありがとうございました🤗

解除
とまとさん
2022.04.29 とまとさん

(´∀`*)ウフフ、甘い新婚旅行ですね。
(*≧艸≦)♡︎キャ─(´∩ω∩`)─♡キャー(⁎˃ ꇴ ˂⁎)ッ💕
大人仕様のブランコ?(*≧艸≦)♡︎(♡▽♡)
(´∀`*)ウフフな時間なんでしょうね。
イチャイチャ((っ´ω`)💗(´ω`⊂))イチャイチャ
ハネムーンベイビーできたりして。(´∀`*)ウフフ

能登原あめ
2022.04.29 能登原あめ

子どもの頃、ブランコ大好きでしたー♪
大人仕様……きっといろんなことしちゃうのかしら(ノ∀︎\*)キャ♡

このまま甘々な新婚旅行を過ごすことになりそうです(ღ′◡︎‵)
お〜✨ハネムーンベイビー!
これだけ仲良くしていたら……もしかして⁉︎
とまとさんさま、コメントありがとうございました🤗

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】優しくて大好きな夫が私に隠していたこと

恋愛
陽も沈み始めた森の中。 獲物を追っていた寡黙な猟師ローランドは、奥地で偶然見つけた泉で“とんでもない者”と遭遇してしまう。 それは、裸で水浴びをする綺麗な女性だった。 何とかしてその女性を“お嫁さんにしたい”と思い立った彼は、ある行動に出るのだが――。 ※ ・当方気を付けておりますが、誤字脱字を発見されましたらご遠慮なくご指摘願います。 ・★が付く話には性的表現がございます。ご了承下さい。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福

ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨ 読んで下さる皆様のおかげです🧡 〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。 完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話に加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は是非ご一読下さい🤗 ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン♥️ ※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。

妻と夫と元妻と

キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では? わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。 数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。 しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。 そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。 まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。 なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。 そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて……… 相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。 不治の誤字脱字病患者の作品です。 作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。 性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。 小説家になろうさんでも投稿します。

最悪なお見合いと、執念の再会

当麻月菜
恋愛
伯爵令嬢のリシャーナ・エデュスは学生時代に、隣国の第七王子ガルドシア・フェ・エデュアーレから告白された。 しかし彼は留学期間限定の火遊び相手を求めていただけ。つまり、真剣に悩んだあの頃の自分は黒歴史。抹消したい過去だった。 それから一年後。リシャーナはお見合いをすることになった。 相手はエルディック・アラド。侯爵家の嫡男であり、かつてリシャーナに告白をしたクズ王子のお目付け役で、黒歴史を知るただ一人の人。 最低最悪なお見合い。でも、もう片方は執念の再会ーーの始まり始まり。

(完結)姉と浮気する王太子様ー1回、私が死んでみせましょう

青空一夏
恋愛
姉と浮気する旦那様、私、ちょっと死んでみます。 これブラックコメディです。 ゆるふわ設定。 最初だけ悲しい→結末はほんわか 画像はPixabayからの フリー画像を使用させていただいています。

妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました

コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…

【完結】嫌われ令嬢、部屋着姿を見せてから、王子に溺愛されてます。

airria
恋愛
グロース王国王太子妃、リリアナ。勝ち気そうなライラックの瞳、濡羽色の豪奢な巻き髪、スレンダーな姿形、知性溢れる社交術。見た目も中身も次期王妃として完璧な令嬢であるが、夫である王太子のセイラムからは忌み嫌われていた。 どうやら、セイラムの美しい乳兄妹、フリージアへのリリアナの態度が気に食わないらしい。 2ヶ月前に婚姻を結びはしたが、初夜もなく冷え切った夫婦関係。結婚も仕事の一環としか思えないリリアナは、セイラムと心が通じ合わなくても仕方ないし、必要ないと思い、王妃の仕事に邁進していた。 ある日、リリアナからのいじめを訴えるフリージアに泣きつかれたセイラムは、リリアナの自室を電撃訪問。 あまりの剣幕に仕方なく、部屋着のままで対応すると、なんだかセイラムの様子がおかしくて… あの、私、自分の時間は大好きな部屋着姿でだらけて過ごしたいのですが、なぜそんな時に限って頻繁に私の部屋にいらっしゃるの?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。