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一年の溝と、交わり

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 下着を脱がせると、すぐに中から硬く勃起したディルグ自身が飛び出るようにして顔を出した。
 その猛々しさに、メルティーナは息を呑む。
 こんな形をしていただろうか。こんなに大きなものが、体に入ったのだろうか。

 あの時は必死だった。心も体も、今にも壊れそうなほどに切羽詰まっていて、ディルグの体の様子まで見ているような余裕はなかったように思う。
 
 痛くないように優しく布で清めていく。
 膨らんだ先端や、血管の浮き出た竿の部分。付け根にある袋のような大きな膨らみ。

 足の間や、口に出せないような場所までを清め終わると、メルティーナは布をタライに戻した。

「……ティーナ、忘れてくれ。自分では、どうにもならない。君の柔らかい手や、匂いや、全てに……興奮、してしまって。俺はまた、君を」
「傷つけることなど、ありません。……一年前のあの日、ディルグ様に望んだのは私です。私の名を呼んで、愛してくださって……嬉しかった」

 ディルグはあの時から、つがいではなく、メルティーナを選んでくれていたのだろう。
 あの時のメルティーナにはそれが、わからなかった。
 ディルグは本心を伝えてくれていたのに、信じ抜くことができなかったのだ。

 一方的で独りよがりな思いを胸に勝手なことをして、その結果がこれだ。
 だからもう、惑わない。

「……私、こんな姿で、あまり魅力はないかもしれません、けれど」
「何を言っている? 君は、美しい。ティーナ、可憐で美しく、魅力的だ。……だから、君は」
「だから?」
「なんでもない」

 どこか苦しげに、ディルグは呟いた。 
 硬く結ばれた唇は、何かを言わないように堪えているようだった。
 無理に聞き出すことは難しいかもしれない。それよりも、ディルグを楽にしてあげたい。

 その一心で、メルティーナはディルグの昂りを両手で包むようにして優しく握る。
 どうしたら気持ちがいいのだろうと考えて、ディルグがかつてメルティーナにしてくれたことを思い出した。

 同じようにすればいいはずだ。ディルグの膨らんだ先端に、おずおずと口を近づける。
 舌先でちろりと舐める。なんともいえない味がする。
 それがディルグだと思うと嫌悪感はまるでなく、メルティーナを求めてくれているのだと、両手に伝わってくる熱からわかり、愛しささえ感じた。

「ん……」

 口に、先端を含む。奥まで飲み込もうとしたが、大きすぎて先端を口に含むだけでやっとだった。
 舌で包むようにして撫でながら、添えた手をゆっくり動かしてみる。

「っ、く……」

 艶のある声に視線を向けると、激しく熱の灯る瞳と目があった。
 怪我をしている頭を低くしないほうがいいと思い、枕と共にありったけのクッションや、シーツを丸めたものを敷いている。
 体を半分起こした状態で横たわるディルグは、ただ動かずに、何も言わずにメルティーナをじっと見ている。

「ん、ん……」

 はしたない水音をたてながら、メルティーナはできる限りのことを、ディルグにした。
 じゅぶじゅぶと舌で擦り、先端を優しく食んで、先端の窪みの部分を舌先でつつく。
 くびれの部分をねっとりと舐めて、反り返った裏側をちろちろと何度も舐めあげる。

 あまり、上手くないのだろう。
 ディルグはさらに大きく膨らむばかりで、精を吐き出させて楽にしてあげることが中々できない。

「く……ぅ……」
「ディルグ様、私、下手で……ごめんなさい」
「ティーナ……君は、体を売っていたのか? それとも、やはりジュリオと」
「……っ、違います……っ、……あ。そう、なのですね、ディルグ様は、それで悲しい顔を……」

 本当は、離れていた一年で何があったのか、ゆっくり話さなくてはいけないのだろう。
 ディルグは、メルティーナが男の体に慣れていると、勘違いをしているのだと気づいた。
 それで、先ほど傷ついた顔をしていたのだと。

 メルティーナは、エプロンを外した。
 それから、体を覆うものを、羞恥心を堪えながら全て取り払った。

 たおやかな、瑞々しい白い肌が顕になる。ディルグ以外には誰にも触れられていない、桃色の胸の突起も、豊かな胸も、薄い腹も、形のよい足も。
 メルティーナは何もかもを、ディルグの前に曝け出した。
 彼に、信じてもらうためだ。
 慎重にディルグの上に跨り、片手で体を隠しながら羞恥に頬を染めるメルティーナの姿に、ディルグは息を呑んだ。

「ディルグ様にしか、見せたことはありません。触られたこともありません。村では、村の人々のお手伝いをしたり、それからパンを作って売っていました。皆、よくしてくださって。特に女性たちは、若い男性が一人で私の元に行かないように、気をつけてくれていて」
「君は、魅力的、だから」
「……私は、地味ですし、今は……髪も肌も荒れていて。お見せするのは、恥ずかしい、です」
「そんなことは、ない。……ティーナ、すまない。ひどいことを聞いた」
「いいんです。なんでも、おっしゃってください。ですが今は……待っていてください、はじめてですから、上手くできるかわからないのですが、頑張りますので」

 ディルグの味と匂いを感じて、メルティーナの秘所は、触れてもいないのに潤っていた。
 自分の指でその場所を広げて、ディルグの昂りに手を添えて、蜜口へとピタリと押しつける。
 それから、慎重に腰を落としていく。
 誰かを受け入れることを忘れていたその場所は、それでもディルグの屹立に押し広げられていく。

「ん、んぅ、ぅ……っ」

 圧迫感を堪えながら、先端の膨らみを飲み込んだ。
 僅かな痛みがある。それよりも、彼を迎え入れることができたという充足感のほうが大きかった。

「あ……あ……っ」

 腰を落とすと、ずぶりと奥までディルグがはいってくる。
 子宮口を押し上げられて、メルティーナは甘い吐息をついた。
 ──おかしくなってしまったのかと思う。
 体が、どうにかなってしまったように。

「ぁ、あっ、あぁ……っ」

 強引に中に迎え入れたというのに、体の奥が泣き叫びたくなるぐらいに気持ちがよくて、メルティーナはディルグの腹に手をつくと、はあはあと促迫した呼吸を繰り返した。

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