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 あなたの優しさを、愛情を 2

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 悲しみは、まだきりきりと心臓を締め付けている。
 けれど──ディルグの温もりが、声が、言葉が、感情が、メルティーナの悲しみを半分受け取ってくれるような気さえした。

「ティーナ、俺と君は、手の大きさが違う。体の形が違う。声も違うし、生まれた場所も違う」
「そうですね、違います」
「だが、出会った。俺は君に出会って恋をした。他の誰でもない、君に恋をしたんだ。耳と尻尾があるかないかなど、ほんの少しの違いだろう? それ以外にも、君と俺とはあまりにも、違う」
「……ディルグ様は、大きいです。手も大きくて、体も大きくて、私よりも年上で」
「君は俺よりも小さい。年下で、体も小さくて柔らかい。声も、耳が蕩けるほどに甘い」

 重なった手を、慎重に握られる。
 握った手を引き寄せられて、指先に唇が触れた。

「君が、好きだ。この一年でもっと、好きになった。今まで手紙など書いたことがなかった。だが、君には書きたいと思う。君の返事を待ち望んでいる。そうすると、毎日がとても楽しいんだ」
「私も同じです。ディルグ様の手紙を読むと、心が弾むようで……」
「それは……君も俺のことが好きだと……自惚れていいか?」

 メルティーナは、こくんと頷いた。
 恥ずかしくて、好きだとは口に出せなかった。
 彼はいつか自分を裏切るかもしれない。捨てるかもしれない。
 そう思いながら傍にいるなんて──それこそ、彼に対する酷い裏切りだろう。

 両親のいいつけには反してしまうけれど、両親なき今、メルティーナは自分自身で考えていかなくてはいけない。
 そしてメルティーナ自身が、ディルグが好きだと、信じたいと思っている。
 どんな結果になったとしても。ディルグの、優しさを、愛情を、裏切りたくない。

「……君の両親に、約束をしなくてはいけないな。必ず君を幸せにする。何があってもずっと一緒だ、ティーナ」
「ディルグ様……嬉しいです。……きっと両親も安心してくれています。私も、泣いてばかりいないで、あなたに相応しい女にならなくてはいけません」
「君はそのままで十分だ。何か辛いことがあったらすぐに俺に言って欲しい」
「はい。……ありがとうございます」

 番の話は──胸の奥に隠しておいたほうがいいのだろう。
 ディルグを疑いたくない。そして同時に、疑っていたことを、知られたくなかった。

「ティーナ……眠れないなら、話をしようか。それとも、ただ、抱きしめていようか」
「……ありがとうございます、ディルグ様。あなたがいてくださって、よかった。大丈夫です、眠ることができそうです」
「そうか。おやすみ、ティーナ。君が怖い夢も、不安な夢もみないように」

 ディルグは、メルティーナが眠るまでずっと、髪を撫でたり頬を撫でたり、額に口付けたりを繰り返した。
 やがて、柔らかい眠りの淵へとメルティーナは落ちていった。

 夢の中で両親が、「それがお前の選択なら、最後まで頑張りなさい」と、微笑んでくれたような気がした。

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