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 来訪者 2

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 レオンハルトの、静かな迫力のある声音が部屋に響いて、ルティエラの心臓が高鳴った。
 こんなことをしているのに、扉越しに誰かと平然と話している。
 それがつれなくもあり、同時に背徳的な魅力もあるようで、ときめくほどに体は追い詰められてしまう。

「クレスルードです。レオンハルト様、国王陛下がお呼びとのことです」
「そうか、わかった。すぐに行く」
「レオンハルト様、何か、泣き声がするようですが、大丈夫ですか?」
「天井裏に子猫でもいるのだろう。ネズミを追って、以前から猫が住み着いていたようだからな」
「子猫、ですか」
「あぁ。下がれ、クレスルード。用件はもう終わりだろう?」

 扉の前で、クレスルードはしばらく逡巡しているようだった。
 ルティエラは、半年間世話になった男の気配に、やや青ざめる。
 こんなことをしているなんて、生真面目なクレスルードに知られたら、レオンハルトを惑わす悪女と言われかねない。
 きっと、軽蔑の目を向けるだろう。

 自分は何をどう思われてもいい。レオンハルトの名前に傷をつけたくない。

「──戦から戻ってから、どうにも風紀が乱れているようです。団長は、職場に女を連れ込み、騎士たちは恋人を宿舎に連れ込む。あちらこちらで、子猫が泣いてばかりいる」
「それは悩ましいことだな、クレスルード。お前もたまには、娼館にでも行けばいい。真面目なばかりでは、女が寄ってこないだろう」
「レオンハルト様は、女嫌いでは」
「全ての女が嫌いというわけではないな。クレスルード、お前には、盗み聞きの趣味でもあるのか?」
「い、いえ」

 扉の向こうの、人の気配が遠ざかっていく。
 足音が遠のいていき、レオンハルトは薄く笑うと、ルティエラの頬を撫でた。

「いい子だったな、ティエ。よく、我慢できた。知られるのは構わないが、君の声を聞かせたくない」
「れおさま……っ、わたし、恥ずかしくて、それに、レオ様の名前に、傷がついたら……」
「君を抱いていることが知られたとして、つく傷などありはしない。クレスルードと話をしている最中、二回、達したな。君は見られるのが好きな、淫乱のようだ」
「ち、ちがいます、わたし……レオ様が、動く、から……っ、気持ちいいの、我慢できなく、て……」

 レオンハルトは嬉しそうに笑った。
 それから、ルティエラの体が揺れるほどに、激しく奥を穿ち始める。
 ゆるりとして優しい抽送の最中に、二回も甘く達していたルティエラの中はひどく敏感で、子宮口を昂りが穿つたびに達したまま戻ってこれないような、拷問じみた感覚を味わった。

「あ……ひっ、ぅ、ん……ん、ぁ、ああっ、れおさま、いく、れおさま……っ」
「あぁ、ティエ。俺も。君の中で、果てたい」
「はい、果ててください、れおさま……っ、れおさまの、好きに……っ」

 レオンハルトは両手を机につくと、ルティエラの最奥を押し潰すようにして腰を揺らした。
 机が揺れて、皮膚がぶつかる音が響く。

 ばちゅ、ばちゅと、ひっきりなしに激しい音がルティエラの鼓膜を犯した。

「ぁ、あああっ、いく、れおさま、いく、いく、一緒に、ね、一緒がいいの、レオ様、好き……っ」
「愛している、ティエ」
「好き、好きです、すきぃ……っ」

 好きだと、その単純な言葉をうわごとのように繰り返しながら、ルティエラは絶頂を迎えた。
 腹の奥に、レオンハルトの精が迸るのを感じて、甘美な幸福感でいっぱいになる。

 ぎゅっときつく体を抱きしめられて、大きく何度か、レオンハルトは腰を揺らした。
 ひときわ膨れた熱杭が、ルティエラの中で大きく震える。

「ぁ、は……っ、あ、あ……」
「ずっと、達している。中にいるだけで、気持ちがよくて、もう一度と思いそうになってしまうな」

 レオンハルトは名残惜しそうにしながら、ずるりとルティエラの中から自身を引き抜いた。
 ルティエラの中から溢れる白濁を指で丁寧にかきだして、布で清める。

 それから、陶酔するように呆然としているルティエラを抱き上げると、ソファに寝かせた。

「可愛かった。一度だけでは足りないぐらいに可愛くて、今すぐもう一度犯したいぐらいだが、呼び出しだ。行ってくる」
「レオ様、お気をつけて……」
「君の方こそ。俺が戻るまでは、内鍵を閉めていろ。誰も中に入れてはいけない」
「内鍵……?」
「あぁ。今も、かけてある。君の姿を誰かに見られたくはないからな」

 ちゅ、と音を耐えてルティエラに口付けると、レオンハルトは乱れた服や髪を手早く治した。
 それからルティエラの手を引いて、扉の前にやってくる。

「俺が出たら、すぐに鍵を。わかったか?」
「は、はい。わかりました。レオ様、いってらっしゃいませ」
「行ってくる。すぐに戻る」

 レオンハルトは内鍵の掛け方をルティエラに伝えた。
 棒状の番を動かすだけの簡単な作りである。
 部屋に内鍵があることさえ気づいていなかったルティエラは、内鍵がかけられていたことにほっとした。

 レオンハルトが部屋を出たので、いいつけ通りに内鍵を閉める。
 それから、ふらふらとソファの前に戻ると、ころんと横になった。

 まだ、体に熱が残っている。それは全く引く気配がなく、ルティエラを困らせていた。

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