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 魔女とは何か 2

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 ◇

「魔女を知っているか、ティエ」

 ぐちゅぐちゅと、はしたない水音が響いている。
 動くたびに、ギシギシと、ベッドがほんの小さな音をたてて軋んだ。
 もう、終わりかと思っていた。穏やかな朝を迎えて──それからまた、一日がはじまる。
 支度をして、これからレオンハルトの専属秘書として働くのだと、ルティエラは考えていた。
 けれどレオンハルトは、ルティエラの手を取り「運命だ」と口にして、それから唇を貪った。

 激しすぎる口づけのあと、まだ跡の消えない体に新しく赤い跡を散らされた。
 あらゆる場所に触れられて、長い時間をかけて快楽を与えられて、一つになった。
 レオンハルトの出自や、過去の話。
 それから、ルティエラが酩酊した夜の話。
 一つ一つをルティエラに思い出させるようにして、快楽を教え込みながら優しい声音で話してきかせた。

 何度も最奥を穿たれながらの会話はルティエラには困難で、返事は全て甘い喘ぎへと変わってしまう。
 あの夜も、こうして──尋ねられただろうか。
 空っぽの記憶に、新しい記憶が重なっていく。
 レオンハルトと言葉を交わした庭園の記憶も、酩酊したあの一夜だけの恋人の記憶も、すべて覚えていないのに。

 まるで、無理やり記憶を植え付けられているようだった。
 少し怖い。けれど、嫌ではない。
 レオンハルトが熱心に好きだと伝えてくれるたび、ルティエラの心は歓喜に震えた。

「れおさま、まって……っ、きもちい、の……おはなし、できない、から……っ」
「君は聞いていればいい」
「っ、んぁ、ああ……おく、やぁ……っ、いい、よぉ……っ」
「あぁ、可愛いなぁ。あの日も、君は同じように泣いていた。返事ができないと言ってな」

 同じように抱いているのだという。
 思い出せないのなら、同じことを繰り返せばいい。
 確かにルティエラの記憶の琴線に触れる何かはあったが、それ以上に与えられる快楽についていくのに必死で、ただただ翻弄されて、濁流に流されることしかできなかった。

「聖女とは魔女。この国には魔女という存在がいる。不思議な力を持つ女たちのことだ。魔女の血筋から、魔女がうまれる」
「ふしぎな、ちから……」
「俺の呪いは、魔女にかけられた。だが、君は俺に魅了をされていないな。君は、俺の魅了にかからない。そんなことがあるのかと思ったがな。きっと、君は俺の運命だ」
「……ん、ぁう、れおさま、もお、やぁ……っ」

 嬉しそうに、そして嗜虐的に微笑んで、レオンハルトはルティエラの額に口づけた。
 
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