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あの朝の悲嘆

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 ──そうかもしれないと、感じた。
 けれどそれが正解だと知ったときの衝撃は、ただ予想をしていただけの時の比ではなく、ルティエラは目を見開いてまじまじと男の顔を凝視した。

「レオンハルト様……」
「似ていたか、ティエ。あの夜も君を、夜明けまで抱いた。もうやめてと泣くまで、抱き潰したつもりだった。……だが、まさか俺を一人残していなくなるとはな」
「……っ、あ、あぁっ、まって、れおさま、まって……っ」
「話はあとでいい。……邪魔くさいものが外れた。ティエ、よく見ていろ。もう、忘れることは許さない」
「あ、あっ、あっ、れおさま、あ、ひ……ぅ……っ」

 ルティエラの顔の横に手を置いて、レオンハルトは激しくルティエラの中を熱杭で貫いた。
 引き抜かれては最奥を責め立てられて、ルティエラの足先が天井を向く。 
 どちゅ、じゅぶ、じゅぶ。
 卑猥な水音と荒い息づかい、ルティエラのはしたない声が部屋に充満して、大きくて頑丈なベッドが揺れた。

「ティエ、君の中は熱くて、狭くて気持ちがいい。あの朝も、抱こうと思っていた。それから、頬を撫でて口付けて、体を清めて……一緒に、朝食を、と。全て、叶わぬ夢に終わってしまったが」
「ごめんなさい……っ、れおさま、ごめんなさい……」
「もう、いい。俺も君を傷つけた。あんなことになるとは、思っていなかった。迂闊だった。俺の、甘さだ」
「もう、いいの……っ、れおさまが、助けてくださったから……もう、忘れ、ました……だから……」

 大勢の男たちに囲まれて穢されそうになったことは、もう遠い記憶のようだった。
 記憶はレオンハルトのあたえてくれた支配的な快楽によって塗り替えられて、おそろしさも嫌悪感も悲しみも、今は消えてしまった。

 今はただ、気持ちがよくて。
 追い詰められるように激しく強く責められて、ルティエラは体にあふれる快楽が弾けそうになっているのを感じた。

「れおさま、いく、いきたいの……っ、ゆるして、もぉ、いきた……っ」

 許可をとらなくてはと、レオンハルトの美しい顔を見上げて懇願の言葉を口にした。
 僅かに朱に染まる頬が、少し潜められた形のいい眉が、長い睫に縁取られた神秘的な空色の瞳が──彼を形作る全てが、精巧に描かれた絵画のように美しかった。

 仮面の下の素顔は醜い。ひどい怪我を負っている。そんな噂は全て的外れで、ルティエラが知るどの男性よりもレオンハルトの美貌は際立っていた。

 けれど、そんなことはルティエラにはあまり重要ではなかった。
 あの朝、ルティエラは彼に対して不誠実にふるまった。眠る彼に声をかけず、逃げるように、部屋を出てしまった。
 それでもルティエラを想い心配をしてくれいたことが、嬉しい。

「あぁ、ティエ。いけ。何度でも、達していい」
「っ、あ、いく、いく……きちゃう、れおさま……っ」
「ティエ、好きだ。君が好きだ、ティエ。もう、離さない」
「ぁ、あああ、あっ、ああああ……っ!」

 目の前が白く弾けて、ルティエラの意識は高く浮かびあがるようだった。
 絶頂感から戻ってこれずにふわふわした感覚の中で揺蕩う。
 レオンハルトに抱きしめられて、達したばかりの敏感な、震えて収縮する中をがつがつと穿たれる。
 続く責め苦に泣きじゃくっているのが、自分ではないように感じられた。
 
 突き上げられながら指先が物欲しそうに顔を出している陰核を撫でる。
 次第に強く押し上げられるようにされて、強すぎる快楽に、悲鳴をあげる。

「れぉさま、もお、おわりに……くるし……っ」
「いい子だ、大丈夫。もっと気持ちよくなれる、ティエ。大丈夫。気持ちいい、俺も、同じ」
「れおさま、も……?」
「あぁ。好きだ、ティエ。好きだ、君が好きだ。ティエ」
「……っ、れおさま、れおさま……っ、きもちい、すき……っ、あっ、あぁ……っ」

 何度も囁かれると、その言葉以外には何も考えられなくなってしまう。
 好きだと言われる度に体が震えて、レオンハルトの昂ぶりを離さないとでもいうように、膣壁が熱杭に絡みついた。
 突き上げられた最奥は昂ぶりの先端に吸い付くようで、呼吸が乱れ、休む暇もなく与えられる快楽が苦しいのに、気持ちがいい。

「また、いく……わたし、すぐ……っ、いってる、いってるの……っ、あぁ、もお、だめ、だめ……っ」
「はは……可愛いな、ティエ。俺は、足りない。まだ、付き合えるな?」
「れおさま、ひ、うぅ、あ、あああっ」

 レオンハルトの熱は、高まる一方だった。
 ルティエラの中で更に硬くふくれて、大きくなった。
 全てを飲み込めないぐらいに長く太い楔が、残酷なほどに何度もルティエラを穿つ。
 ルティエラはぐったりとベッドに体を投げ出して、揺さぶられるたびに甘い声を漏らした。

 もう、幾度達したのか分からない。
 絶頂を迎えているのに、終わりが見えない。上り詰めては戻ってくることができず、もっともっと、高いところまで連れていかれる。

「おかしく、なるの……っ、わたし、へんに……っ」
「大丈夫、君は可愛い。愛らしく淫らな俺の花だ」
「や、あ、あああっ、また、きちゃ……っ、あ、あ……っ!」

 レオンハルトの自身が、ルティエラの中で大きく膨らみ震えた。
 どくりと腹の中に熱いものが広がり、多幸感に涙があふれる。
 あたたかい液体が、じわりと秘所からあふれて滴り、ぐっしょりとシーツを濡らした。
 レオンハルトはルティエラの中から自身を引き抜いた。それはまだ硬く起立したままだったが、これで終わりだというように、ルティエラの濡れた頬に口付けた。

「……ティエ、愛している。よく頑張ったな、いい子だった」
「ん……」

 優しい口付けが心地よくて、ルティエラは何かを言おうとした。
 けれどそれは言葉にならず、深く目を閉じると意識が眠りの底へと落ちていった。

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