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第13章 アルスラン帝国
第95話 フミンの盗人
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第95話 フミンの盗人
冒険者ギルドから外へ出ると大陸の中にあるせいか大陸性高気圧で空が澄み渡っていた。
降雨量は少ないらしく風が乾いているが、嫌な臭いは相変わらずだ。
ここは平民街と貴族街の間にあるからそれほどではないが臭うのは変わらない。
フレーベルの街はここよりまだ清潔だったんだと思う。
人口100万人を誇るだけあって人通りが多い。
香辛料や衣服などを売っている大バザールを見に行くと人の流れが川のようだった。
僕はミレーヌと手をつないで人の波に紛れる。
財布は盗られないようにしっかりと胸元にしまい縫い付けておいた。
アストラハンの大バザールは生活に必要な鍋や釜などから香辛料や宝石衣服果物などあらゆるものを売っている。
僕達の生まれたフレーベルなんて足元にも及ばない。
ただバザールから離れた裏通りには浮浪者がたむろし、乞食や病人はマシなほうでアルコールや薬物中毒者だろうか。
生きる気力を無くした人々の姿も見えた。
強いものには天国のような街も弱いものには地獄だと思い知る。
前世で僕のいた日本も貧富の差はあった。
でもみんなが病院に行けて社会保障が整っていた。
病気がちだった僕は日本の社会保障が無ければもっと早く死んでいたはずだ。
だからこの世界の現実はいつ見ても苦しくなる。
「待て!!待て~!!」
僕が路地裏を見ていると遠くから店主だろうか、誰かの怒鳴り声が聞こえたと思ったら手に果物やソーセージを持った少年グループが僕のほうへ走ってくる。
浮浪児だろうか、みな痩せていて汚い姿で必死に逃げている。
その姿を見て僕はフミンの民の子供だとわかった。
「どけどけどけ~!!」
先頭を走るのはリーダーだろうか?
僕とそんなに年齢が変わらない少年が僕を突き飛ばそうとする。
捕まえるべきか迷ったが商品を奪われた店主にも生活がある。
僕は突き飛ばそうとした少年の腕を取りねじ上げた。
「いてえ!!いてえよ!!放しやがれ!!」
ロッテに簡単なアルスラン語を教わっていたので簡単な言葉ならわかる。
少年グループはリーダーを取り戻そうと僕に一斉に飛び掛かってくる。
「ユキナに何するのよ!!」
僕に飛び掛かってきた少年グループにミレーヌが舞うようにステップして回し蹴りを放った。
ミレーヌの勢いの付いた回し蹴りの直撃をうけた少年たちは、まとめて吹っ飛び建物の壁に身体をぶつけ呻いている。
僕達が少年グループを抑え込んでいると先ほど怒鳴っていた店主が追いついてきた。
「いやあすまんね、すまんね助かったよ」
口ひげを生やした見るからに善良そうな中年の男性だった。
店主は僕とミレーヌの手を取って何度も礼を言う。
あまり感謝されるので困るくらいだ。
そのいかにも人の好さそうな店主の顔つきが少年グループを見て一変した。
近所の優しいおじさんのような顔が、まるで何人も人を殺してきた殺人鬼のように凄惨な顔つきに変わっていた。
「フミンのガキか……覚悟はできてるだろうな」
そう言って店主は腰に差していたダガーを引き抜いた。
先ほどまで見せていた善良そうな表情とは違い、明らかな蔑視と殺意を瞳にみなぎらせている。
よく見ると周りの人たちも手に棒やナイフを持ち少年グループを取り囲んでいた。
「ま、待ってください!!何も殺すことはないでしょう!?」
「そうだよ!!みんな変だよ!?」
僕とミレーヌが店主たちと少年たちの間に割って入る。
殺意を向けられた少年たちは怯えながら肩を寄せ合ってうずくまる。
この雰囲気はただ事じゃない。
善良な人たちを残虐な人間に変えてしまうほどフミンの民は恨まれているのだろうか?
このままだとフミンの少年たちは殺されてしまうだろう。
「旅人さん邪魔をしないで貰えないか?ここにはここのルールってものがあるんだ」
そう言って店主がダガーを手に持って近づいてくる。
邪魔をすれば僕を刺し殺しかねない。
だけど僕はこの少年たちを見殺しにはできない。
僕は誰かを助ける為にこの世界で二度目の人生を歩んでいるのだから。
「くっ」
僕は剣の柄に手をかける。
ここでこの人たちを切り殺して少年たちを逃がす事も出来る。
だけどそんな事出来るはずもない。
ミレーヌも僕と同じように剣の柄を握りしめている。
僕達とおじさんたちの緊張が最高潮に達しそうな時だった。
「双方剣をおさめてくれんか」
そうしわがれた声で僕達に話しかける老人がいた。
冒険者ギルドのギルドマスターだ。
あの薬物中毒者のような外見から一変して鋭い眼光で僕達と店主たちを見据えている。
「冒険者ギルドマスター……」
店主が冒険者ギルドマスターの姿を見てダガーを鞘に収める。
周りの人たちも武器を収めて道を開けた。
「こいつらはうちの商品に手を出したんだ、殺されて当然だろう」
そう言って少年たちに指を突き付ける店主。
だが冒険者ギルドマスターは平然と笑うと指を3本開いた。
「こやつらが盗もうとした品はわしが30倍の値段で買い取ろう。それでどうじゃ?」
「30倍!?」
店主が驚いた表情で冒険者ギルドマスターを見る。
周りの人たちもざわついている。
どうやら店主は少年たちから盗んだ商品を30倍の値段で買い取るつもりらしい。
「フミンのガキなんぞいつでも殺せるじゃろ?悪い取引ではない筈じゃ」
そう言ってヒヒヒと気持ちの悪い笑いを浮かべる冒険者ギルドマスター。
どうやら彼はこの街の顔役のようだった。
店主は冒険者ギルドマスターの言葉に納得したように頷くと少年たちに向き直る。
「わかった、30倍の値段で手をうとう」
そう言って少年グループを見逃す事にした店主に冒険者ギルドマスターが銀貨の入った袋を手渡すと店主は店の中へと戻っていった。
冒険者ギルドから外へ出ると大陸の中にあるせいか大陸性高気圧で空が澄み渡っていた。
降雨量は少ないらしく風が乾いているが、嫌な臭いは相変わらずだ。
ここは平民街と貴族街の間にあるからそれほどではないが臭うのは変わらない。
フレーベルの街はここよりまだ清潔だったんだと思う。
人口100万人を誇るだけあって人通りが多い。
香辛料や衣服などを売っている大バザールを見に行くと人の流れが川のようだった。
僕はミレーヌと手をつないで人の波に紛れる。
財布は盗られないようにしっかりと胸元にしまい縫い付けておいた。
アストラハンの大バザールは生活に必要な鍋や釜などから香辛料や宝石衣服果物などあらゆるものを売っている。
僕達の生まれたフレーベルなんて足元にも及ばない。
ただバザールから離れた裏通りには浮浪者がたむろし、乞食や病人はマシなほうでアルコールや薬物中毒者だろうか。
生きる気力を無くした人々の姿も見えた。
強いものには天国のような街も弱いものには地獄だと思い知る。
前世で僕のいた日本も貧富の差はあった。
でもみんなが病院に行けて社会保障が整っていた。
病気がちだった僕は日本の社会保障が無ければもっと早く死んでいたはずだ。
だからこの世界の現実はいつ見ても苦しくなる。
「待て!!待て~!!」
僕が路地裏を見ていると遠くから店主だろうか、誰かの怒鳴り声が聞こえたと思ったら手に果物やソーセージを持った少年グループが僕のほうへ走ってくる。
浮浪児だろうか、みな痩せていて汚い姿で必死に逃げている。
その姿を見て僕はフミンの民の子供だとわかった。
「どけどけどけ~!!」
先頭を走るのはリーダーだろうか?
僕とそんなに年齢が変わらない少年が僕を突き飛ばそうとする。
捕まえるべきか迷ったが商品を奪われた店主にも生活がある。
僕は突き飛ばそうとした少年の腕を取りねじ上げた。
「いてえ!!いてえよ!!放しやがれ!!」
ロッテに簡単なアルスラン語を教わっていたので簡単な言葉ならわかる。
少年グループはリーダーを取り戻そうと僕に一斉に飛び掛かってくる。
「ユキナに何するのよ!!」
僕に飛び掛かってきた少年グループにミレーヌが舞うようにステップして回し蹴りを放った。
ミレーヌの勢いの付いた回し蹴りの直撃をうけた少年たちは、まとめて吹っ飛び建物の壁に身体をぶつけ呻いている。
僕達が少年グループを抑え込んでいると先ほど怒鳴っていた店主が追いついてきた。
「いやあすまんね、すまんね助かったよ」
口ひげを生やした見るからに善良そうな中年の男性だった。
店主は僕とミレーヌの手を取って何度も礼を言う。
あまり感謝されるので困るくらいだ。
そのいかにも人の好さそうな店主の顔つきが少年グループを見て一変した。
近所の優しいおじさんのような顔が、まるで何人も人を殺してきた殺人鬼のように凄惨な顔つきに変わっていた。
「フミンのガキか……覚悟はできてるだろうな」
そう言って店主は腰に差していたダガーを引き抜いた。
先ほどまで見せていた善良そうな表情とは違い、明らかな蔑視と殺意を瞳にみなぎらせている。
よく見ると周りの人たちも手に棒やナイフを持ち少年グループを取り囲んでいた。
「ま、待ってください!!何も殺すことはないでしょう!?」
「そうだよ!!みんな変だよ!?」
僕とミレーヌが店主たちと少年たちの間に割って入る。
殺意を向けられた少年たちは怯えながら肩を寄せ合ってうずくまる。
この雰囲気はただ事じゃない。
善良な人たちを残虐な人間に変えてしまうほどフミンの民は恨まれているのだろうか?
このままだとフミンの少年たちは殺されてしまうだろう。
「旅人さん邪魔をしないで貰えないか?ここにはここのルールってものがあるんだ」
そう言って店主がダガーを手に持って近づいてくる。
邪魔をすれば僕を刺し殺しかねない。
だけど僕はこの少年たちを見殺しにはできない。
僕は誰かを助ける為にこの世界で二度目の人生を歩んでいるのだから。
「くっ」
僕は剣の柄に手をかける。
ここでこの人たちを切り殺して少年たちを逃がす事も出来る。
だけどそんな事出来るはずもない。
ミレーヌも僕と同じように剣の柄を握りしめている。
僕達とおじさんたちの緊張が最高潮に達しそうな時だった。
「双方剣をおさめてくれんか」
そうしわがれた声で僕達に話しかける老人がいた。
冒険者ギルドのギルドマスターだ。
あの薬物中毒者のような外見から一変して鋭い眼光で僕達と店主たちを見据えている。
「冒険者ギルドマスター……」
店主が冒険者ギルドマスターの姿を見てダガーを鞘に収める。
周りの人たちも武器を収めて道を開けた。
「こいつらはうちの商品に手を出したんだ、殺されて当然だろう」
そう言って少年たちに指を突き付ける店主。
だが冒険者ギルドマスターは平然と笑うと指を3本開いた。
「こやつらが盗もうとした品はわしが30倍の値段で買い取ろう。それでどうじゃ?」
「30倍!?」
店主が驚いた表情で冒険者ギルドマスターを見る。
周りの人たちもざわついている。
どうやら店主は少年たちから盗んだ商品を30倍の値段で買い取るつもりらしい。
「フミンのガキなんぞいつでも殺せるじゃろ?悪い取引ではない筈じゃ」
そう言ってヒヒヒと気持ちの悪い笑いを浮かべる冒険者ギルドマスター。
どうやら彼はこの街の顔役のようだった。
店主は冒険者ギルドマスターの言葉に納得したように頷くと少年たちに向き直る。
「わかった、30倍の値段で手をうとう」
そう言って少年グループを見逃す事にした店主に冒険者ギルドマスターが銀貨の入った袋を手渡すと店主は店の中へと戻っていった。
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