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第6章 ハーフエルフの兄妹
第37話 パーティ誕生。
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第37話 パーティ誕生。
僕達が依頼板を眺めているとシグレさんとセシルさんが現れた。
いつものボディシャツの上にジャケットを羽織ったロングパンツ姿だが腰に挿しているのは短剣だけだ。
街中でも喧嘩や決闘で短剣は必要になるのが常。
短剣だけというのは街で生きる最低限の武器だけ身に着けているというという信頼の証だ。
ジャケットとボディシャツとロングパンツは綺麗に洗濯されていて、見るからに礼儀正しい。
いつもは酔って欠伸をしているセシルさんだが今日は素面で微笑みながらも真剣な雰囲気だった。
「またせたな。私はシグレという剣士だ。こちらの赤毛はセシルでスカウトをしている。よろしく頼む」
そう言って一礼してクヌートとフェリシアの握手を求める。
ハーフエルフの兄妹は驚いた顔をしながら握手をした。
ハーフエルフを明らかに見下したり警戒する人間が多いのだ。
そのあと歓談と相談の為に喫茶店でお茶を飲む事にする。
「驚いたな。ハーフエルフに礼を尽くす人間もいるのだな」
クヌートがそう言うとフェリシアも慌てて頷く。
そんな二人の様子に僕とミレーヌは困惑している。
「なに、私も可能なら末永くパーティを組みたいからな。礼も尽くすし適切な報酬も払うぞ」
そう言って微笑むシグレさん。
どういう事だろう。
そんな僕にフェリシアが答えてくれる。
「私たちハーフエルフは蔑まれ軽くみられる事が多いんです。酷い人になると報酬を値切る人間までいるから信用できないの」
「そうなのですか?」
「私とクヌート兄さまも醜い心根の冒険者によく出会ったのです。だからお金しか信じない。冒険一回ずつの更新だというのはそう言う事です」
「酷い話ですね」
僕とフェリシアがそういう会話をしているとクヌートが満足げに頷いている。
どうやら第一印象は成功のようだ。
「ユキナに告げたように冒険一回ごとの契約だ。更新するかどうかはこちらが決めさせてもらう。報酬は頭割りでいい」
「それでいい。私もセシルもその件は合意済みだ」
クヌートがシグレさんに念押ししている。
ハーフエルフのウィザードと言えば他の冒険者が皆欲しがる逸材で、僕達のテーブルの会話を羨ましそうに見つめる冒険者の視線が気になるが、同時に好奇と蔑視の表情を浮かべる人もいる。
「ボク達はこのクエストがいいと思っています」
そう言ってミレーヌが先ほどのオーガ退治の依頼書の写しをシグレさんに手渡すと、シグレさんが確認しセシルさんが目を通す。
「ん~少し控えめだけど初回としてはいいんじゃない?」
いやいやセシルさん。
これって成功報酬もの凄く高くて、難易度も僕とミレーヌだと絶対無理なくらい厳しいですけど!?
そんな僕の表情を見てシグレさんが答えてくれる。
「これだと頭割りしても結構な報酬になるからな。鉄級のウィザードが二人もいるなら控えめなくらいだ」
どれだけウィザードの評価高いんですか!?
確かに魔法の最上級職が、しかも二人ですけど。
「それではこの依頼で契約という事でいいかな?」
「異論はない。よろしく頼む」
そう言ってクヌートが自分から手をだしてセシルさんと握手する。
あ、結構打ち解けてくれたのかな。
昨日渡した銀貨の袋が功を奏したみたい。
「折角パーティを結成したのだし前祝いに一杯どうだ?」
「悪いが遠慮しておく。人間と酒を飲むのは懲り懲りだ」
シグレさんが飲みに誘ったがクヌートに拒絶された。
やっぱりあまり信用されていない。
流石に気分を害したと思ったけど、当のシグレさんは当然のように頷いただけだった。
「では私とセシルはこの依頼の手続きをしてくる。今日の会合はこれで終わりだ」
「兄さま、私はユキナとミレーヌと話がしたいです」
「わかった。私は色々と準備をしておくから夕方までには部屋に戻るのだぞ」
「はいわかりました」
そう言ってシグレさんとセシルさんがクエスト受諾の手伝いを、クヌートがクエストの準備があるとの事で別行動になり、僕とミレーヌとフェリシアだけが喫茶店に残った。
みんなが去った後、フェリシアが申し訳なさそうな顔をする。
「兄さまの事を悪く思わないでください。私を危険に晒したくないから厳しい態度をとるんです。本当はとても優しい人なんです」
そう言って綺麗なサイドポニーが軽く揺れるくらいの小さなお辞儀をする。
「いえいえ気にしないでください」
「ボクもユキナも気にしてませんから」
と言っても面食らったのが本音。
あんなに警戒されたのは生まれて初めてだったりする。
「折角だし、ボク達と一緒にお昼ご飯を食べませんか?」
「はい喜んで」
そう言って微笑んでくれるフェリシア。
エルフの少し人間を見下したような笑みとは違って優しい微笑み。
フェリシアは意外と社交的なのかもしれない。
僕とミレーヌはフェリシアと仲良くなれると思った。
クヌートとも仲良くなりたいけど、それは時間がかかると思う。
僕とミレーヌはテフという米に似た穀物を炊いたご飯に卵焼きとデルっていう白身魚の焼き物を、フェリシアはハンバーグを注文した。
エルフは果物と野菜しか食べない。
せいぜいパンを食べるくらいなのに肉を食べるのを見て驚いていると、フェリシアが僕の顔をみて微笑む。
「肉を食べるエルフを見るのは初めてですか?」
「あ、いえ。すみません」
「謝らなくていいですよ。ハーフエルフはエルフと違って果物や野菜だけでは無く肉を食べないといけないのです。エルフの里では『肉食い』と呼ばれ蔑まれていました」
確かにハーフエルフの為だけに肉を狩らないといけないエルフから見れば厄介者だっただろう。
……あれ?そう言えばエルフってどうやってカロリーとタンパク質を摂っているんだろうか。
「エルフは胃の中で野菜や果物を発酵させる事ができるんです。そのお陰で肉を食べなくても良いのです」
つまり胃の中で植物を発酵させる酵素があるんだね。
エルフって牛みたいだなと思った。
僕達が依頼板を眺めているとシグレさんとセシルさんが現れた。
いつものボディシャツの上にジャケットを羽織ったロングパンツ姿だが腰に挿しているのは短剣だけだ。
街中でも喧嘩や決闘で短剣は必要になるのが常。
短剣だけというのは街で生きる最低限の武器だけ身に着けているというという信頼の証だ。
ジャケットとボディシャツとロングパンツは綺麗に洗濯されていて、見るからに礼儀正しい。
いつもは酔って欠伸をしているセシルさんだが今日は素面で微笑みながらも真剣な雰囲気だった。
「またせたな。私はシグレという剣士だ。こちらの赤毛はセシルでスカウトをしている。よろしく頼む」
そう言って一礼してクヌートとフェリシアの握手を求める。
ハーフエルフの兄妹は驚いた顔をしながら握手をした。
ハーフエルフを明らかに見下したり警戒する人間が多いのだ。
そのあと歓談と相談の為に喫茶店でお茶を飲む事にする。
「驚いたな。ハーフエルフに礼を尽くす人間もいるのだな」
クヌートがそう言うとフェリシアも慌てて頷く。
そんな二人の様子に僕とミレーヌは困惑している。
「なに、私も可能なら末永くパーティを組みたいからな。礼も尽くすし適切な報酬も払うぞ」
そう言って微笑むシグレさん。
どういう事だろう。
そんな僕にフェリシアが答えてくれる。
「私たちハーフエルフは蔑まれ軽くみられる事が多いんです。酷い人になると報酬を値切る人間までいるから信用できないの」
「そうなのですか?」
「私とクヌート兄さまも醜い心根の冒険者によく出会ったのです。だからお金しか信じない。冒険一回ずつの更新だというのはそう言う事です」
「酷い話ですね」
僕とフェリシアがそういう会話をしているとクヌートが満足げに頷いている。
どうやら第一印象は成功のようだ。
「ユキナに告げたように冒険一回ごとの契約だ。更新するかどうかはこちらが決めさせてもらう。報酬は頭割りでいい」
「それでいい。私もセシルもその件は合意済みだ」
クヌートがシグレさんに念押ししている。
ハーフエルフのウィザードと言えば他の冒険者が皆欲しがる逸材で、僕達のテーブルの会話を羨ましそうに見つめる冒険者の視線が気になるが、同時に好奇と蔑視の表情を浮かべる人もいる。
「ボク達はこのクエストがいいと思っています」
そう言ってミレーヌが先ほどのオーガ退治の依頼書の写しをシグレさんに手渡すと、シグレさんが確認しセシルさんが目を通す。
「ん~少し控えめだけど初回としてはいいんじゃない?」
いやいやセシルさん。
これって成功報酬もの凄く高くて、難易度も僕とミレーヌだと絶対無理なくらい厳しいですけど!?
そんな僕の表情を見てシグレさんが答えてくれる。
「これだと頭割りしても結構な報酬になるからな。鉄級のウィザードが二人もいるなら控えめなくらいだ」
どれだけウィザードの評価高いんですか!?
確かに魔法の最上級職が、しかも二人ですけど。
「それではこの依頼で契約という事でいいかな?」
「異論はない。よろしく頼む」
そう言ってクヌートが自分から手をだしてセシルさんと握手する。
あ、結構打ち解けてくれたのかな。
昨日渡した銀貨の袋が功を奏したみたい。
「折角パーティを結成したのだし前祝いに一杯どうだ?」
「悪いが遠慮しておく。人間と酒を飲むのは懲り懲りだ」
シグレさんが飲みに誘ったがクヌートに拒絶された。
やっぱりあまり信用されていない。
流石に気分を害したと思ったけど、当のシグレさんは当然のように頷いただけだった。
「では私とセシルはこの依頼の手続きをしてくる。今日の会合はこれで終わりだ」
「兄さま、私はユキナとミレーヌと話がしたいです」
「わかった。私は色々と準備をしておくから夕方までには部屋に戻るのだぞ」
「はいわかりました」
そう言ってシグレさんとセシルさんがクエスト受諾の手伝いを、クヌートがクエストの準備があるとの事で別行動になり、僕とミレーヌとフェリシアだけが喫茶店に残った。
みんなが去った後、フェリシアが申し訳なさそうな顔をする。
「兄さまの事を悪く思わないでください。私を危険に晒したくないから厳しい態度をとるんです。本当はとても優しい人なんです」
そう言って綺麗なサイドポニーが軽く揺れるくらいの小さなお辞儀をする。
「いえいえ気にしないでください」
「ボクもユキナも気にしてませんから」
と言っても面食らったのが本音。
あんなに警戒されたのは生まれて初めてだったりする。
「折角だし、ボク達と一緒にお昼ご飯を食べませんか?」
「はい喜んで」
そう言って微笑んでくれるフェリシア。
エルフの少し人間を見下したような笑みとは違って優しい微笑み。
フェリシアは意外と社交的なのかもしれない。
僕とミレーヌはフェリシアと仲良くなれると思った。
クヌートとも仲良くなりたいけど、それは時間がかかると思う。
僕とミレーヌはテフという米に似た穀物を炊いたご飯に卵焼きとデルっていう白身魚の焼き物を、フェリシアはハンバーグを注文した。
エルフは果物と野菜しか食べない。
せいぜいパンを食べるくらいなのに肉を食べるのを見て驚いていると、フェリシアが僕の顔をみて微笑む。
「肉を食べるエルフを見るのは初めてですか?」
「あ、いえ。すみません」
「謝らなくていいですよ。ハーフエルフはエルフと違って果物や野菜だけでは無く肉を食べないといけないのです。エルフの里では『肉食い』と呼ばれ蔑まれていました」
確かにハーフエルフの為だけに肉を狩らないといけないエルフから見れば厄介者だっただろう。
……あれ?そう言えばエルフってどうやってカロリーとタンパク質を摂っているんだろうか。
「エルフは胃の中で野菜や果物を発酵させる事ができるんです。そのお陰で肉を食べなくても良いのです」
つまり胃の中で植物を発酵させる酵素があるんだね。
エルフって牛みたいだなと思った。
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