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第3章 愛しい時間
第18話 告白
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第18話 告白
村でお風呂を借りて旅の汚れを落とそうと石鹸とタオルで身体を洗った。
この世界に来て驚いたのは石鹸があるという事。
僕のいた前世でも石鹸はギリシャ時代にあったらしいから驚く事ではないのだけど、異世界に行ったら石鹸を作るゲームや小説が多かったから、固定イメージで文化や化学が遅れてると思い込んでしまうのは傲慢と言うものだ。
僕のいた前世のローマ帝国はトンネルを作ったり、大きく山の斜面を切り開いて山道を作ったり、土木技術も発達している。
崖の側面に穴を穿ち太い木材を差し込み上に板を並べて崖に道を作った。
川底をさらい船の行き来を活発にして運河も作ったんだ。
前世の過去の人は僕が思うより賢い。
「んん……良いお風呂だった」
僕達はそれぞれ個室を借りている。
旅人が立ち寄る事もあるから村々にはこういう宿泊施設は結構あるのだ。
久しぶりのお風呂に堪能してゆったりとしたシャツとパンツ姿で廊下を歩いていると、僕の部屋の前にパジャマ姿のミレーヌが立って僕を待っていた。
「ユキナ。お部屋入っていいかな」
「え、あ。うん」
こんな時間に何だろう。
僕だって健康な男子だから甘い夜を期待してしまうがまだ僕とミレーヌは恋人関係じゃない。
いつか恋人になれたらいいのに。
そうなったらあの綺麗な長い緑髪をなでて柔らかそうな頬と唇にキスをして……。
やめよう我ながらキモイ。
ミレーヌを伴って僕が借りてる部屋に入った。
部屋の中は綺麗に掃除されていて質素だけどベッドにはふかふかの布団が敷いてある。
ベッドは大きなダブルベッドで当然だけど旅人がそういう事をする事を想定している。
この世界の神様はお酒を推奨しているくらいだから性行為にも寛容だ。
だから行きずりの旅人が性行為をする事はそれほど咎められない。
勿論責任は取らなければならないが村にいる神官は避妊魔法を習得しているし、僕達も神聖魔法で真っ先に教えられる。
冒険者に限らずこの世界は危険が多く旅に出るだけでも命の危険がある。
だから現世に心置きなくというのが心情。
ミレーヌがベッドに腰かけると僕も隣に腰かける。
震えるミレーヌの手を優しく握ってミレーヌが落ち着くまで待つ。
温水を含んだミレーヌの手は暖かかった。
「ユキナ……ボク怖いよ」
「うん」
僕とミレーヌはゴブリンなら殺した事はある。
でも人間を殺した事は無かった。
自分が死ぬという事の覚悟はできている。
そう思っていたけど人を殺した時思ったんだ。
自分もこんな死に方をするかもしれない。
あの時感じた肉を切り裂く感触。
あふれ出る血しぶき。
多分一生忘れない。
「ボクいままで冒険者ってもっと夢のある生き方だと思ってんだ。ドラゴンと戦ったり雲の王国を見つけたり誰も行ったことのない海の果てを見たりするものだと思ってた」
「僕もそう思っていた。怖いけど楽しい世界が待っているって思ってたよ」
「でも本当はゴブリンや……人間と殺しあうなんて事になるなんて。ボクだってゴブリンやオークと戦うって思ってたよ。でもね。人間と殺しあうなんて思わなかった。ボクたちがいた世界はすごく平和だったんだって思い知ったよ」
「その人達の幸せを守るのも大切な仕事だよ。ミレーヌはそれが嫌なの?」
「嫌じゃないよ。すごく大切な事だってわかってる。でも怖い、怖いの。明日ボクはあの人達みたいにゴブリンに殺されるかもしれない。そう考えると怖くて眠れないの」
僕だって怖い。
死ぬのも怖いけど目の前にいる女の子が無残に殺されるなんて事になったら僕は耐えられるのだろうか。
男は殺されるけど女はゴブリンの慰み者にされる。
ミレーヌがそんな目にあうなんて耐えられない。
「ねえ、ユキナは怖くないの?」
「僕も怖いよ。自分が死ぬのも怖いけどミレーヌを失うのが何より怖い」
「ユキナ?」
「ミレーヌ。僕はミレーヌが好きだ。初めて君に出会った時からずっと好きだ」
本当はもっとロマンチックなシチュエーションで言うべきだったろう。
大きな冒険をして成功したあと二人で星空を見上げながらとか。
そういう時に告白とはするものだと思う。
間違えても今じゃない。
明日死ぬのが怖いから。
そんな情けない状況でいうべきではない筈だ。
それでも言ってしまった。
今言わないと永遠に言えなくなると思ったから。
「…ボクと初めて会った時の事覚えてる?」
「覚えてるよ。ヤオとミンとシンジとクズハと僕が湖で遊んでいた時だよ」
「覚えててくれたんだ」
「一目ぼれだったからね。そのあと一緒の学校行ったりみんなと遊んだりした」
「ごめんね。ボクは一目ぼれじゃなかったよ」
そう言われて僕は苦笑する。
僕は男らしくないし身体だって大きくなかった。
自分が何をしたいのかもわかってなかった。
「でもみんなと一緒に遊んで学んでる時からユキナの事、いいなとは思ってたの」
「今でもいいなって思ってくれてる?」
「思ってなかったら一緒に冒険者になってコンビ組もうなんて思わないよ。ボクに告白してくれてありがとう。でももう少しムードがあった方がよかったかな」
「うん、急すぎた。ごめん。でも言わないまま死にたくなかったから」
もっとゆっくりと時間をかけて信頼を作っていくべきだった。
そう後悔したけど言えずに死ぬよりはマシだ。
結果はご覧の有様。
ミレーヌにも迷惑をかけちゃった。
「ユキナが告白してくれて凄く嬉しい。でも答えは保留にさせて」
「うん。そうだよね」
答えをくれるだけでも良しとしよう。
ミレーヌの気遣いに感謝してベッドから立ち上がろうとした僕の手をミレーヌが掴む。
その手は少し震えていた。
「今はまだユキナと恋人になれるかわからない。だからボクをユキナに惚れさせて。ユキナがボクを好きならボクも答える」
そう言ってミレーヌは僕の手を自分のお腹に。
丁度子宮のあたりに導いた。
「ミ、ミレーヌ!?」
「ボクを恋人にしたいんでしょ?だったら勇気を見せてよ」
ミレーヌのお腹に手を当てて神聖魔法を唱える。
避妊魔法。
娯楽の少ないこの世界に必須の魔法で最も大切な魔法。
そしてその魔法を女の子にかけるという事。
その意味を知らないほど僕とミレーヌは子供じゃない。
「ミレーヌ。今から君を抱くよ」
「うん…ユキナならいいよ」
村でお風呂を借りて旅の汚れを落とそうと石鹸とタオルで身体を洗った。
この世界に来て驚いたのは石鹸があるという事。
僕のいた前世でも石鹸はギリシャ時代にあったらしいから驚く事ではないのだけど、異世界に行ったら石鹸を作るゲームや小説が多かったから、固定イメージで文化や化学が遅れてると思い込んでしまうのは傲慢と言うものだ。
僕のいた前世のローマ帝国はトンネルを作ったり、大きく山の斜面を切り開いて山道を作ったり、土木技術も発達している。
崖の側面に穴を穿ち太い木材を差し込み上に板を並べて崖に道を作った。
川底をさらい船の行き来を活発にして運河も作ったんだ。
前世の過去の人は僕が思うより賢い。
「んん……良いお風呂だった」
僕達はそれぞれ個室を借りている。
旅人が立ち寄る事もあるから村々にはこういう宿泊施設は結構あるのだ。
久しぶりのお風呂に堪能してゆったりとしたシャツとパンツ姿で廊下を歩いていると、僕の部屋の前にパジャマ姿のミレーヌが立って僕を待っていた。
「ユキナ。お部屋入っていいかな」
「え、あ。うん」
こんな時間に何だろう。
僕だって健康な男子だから甘い夜を期待してしまうがまだ僕とミレーヌは恋人関係じゃない。
いつか恋人になれたらいいのに。
そうなったらあの綺麗な長い緑髪をなでて柔らかそうな頬と唇にキスをして……。
やめよう我ながらキモイ。
ミレーヌを伴って僕が借りてる部屋に入った。
部屋の中は綺麗に掃除されていて質素だけどベッドにはふかふかの布団が敷いてある。
ベッドは大きなダブルベッドで当然だけど旅人がそういう事をする事を想定している。
この世界の神様はお酒を推奨しているくらいだから性行為にも寛容だ。
だから行きずりの旅人が性行為をする事はそれほど咎められない。
勿論責任は取らなければならないが村にいる神官は避妊魔法を習得しているし、僕達も神聖魔法で真っ先に教えられる。
冒険者に限らずこの世界は危険が多く旅に出るだけでも命の危険がある。
だから現世に心置きなくというのが心情。
ミレーヌがベッドに腰かけると僕も隣に腰かける。
震えるミレーヌの手を優しく握ってミレーヌが落ち着くまで待つ。
温水を含んだミレーヌの手は暖かかった。
「ユキナ……ボク怖いよ」
「うん」
僕とミレーヌはゴブリンなら殺した事はある。
でも人間を殺した事は無かった。
自分が死ぬという事の覚悟はできている。
そう思っていたけど人を殺した時思ったんだ。
自分もこんな死に方をするかもしれない。
あの時感じた肉を切り裂く感触。
あふれ出る血しぶき。
多分一生忘れない。
「ボクいままで冒険者ってもっと夢のある生き方だと思ってんだ。ドラゴンと戦ったり雲の王国を見つけたり誰も行ったことのない海の果てを見たりするものだと思ってた」
「僕もそう思っていた。怖いけど楽しい世界が待っているって思ってたよ」
「でも本当はゴブリンや……人間と殺しあうなんて事になるなんて。ボクだってゴブリンやオークと戦うって思ってたよ。でもね。人間と殺しあうなんて思わなかった。ボクたちがいた世界はすごく平和だったんだって思い知ったよ」
「その人達の幸せを守るのも大切な仕事だよ。ミレーヌはそれが嫌なの?」
「嫌じゃないよ。すごく大切な事だってわかってる。でも怖い、怖いの。明日ボクはあの人達みたいにゴブリンに殺されるかもしれない。そう考えると怖くて眠れないの」
僕だって怖い。
死ぬのも怖いけど目の前にいる女の子が無残に殺されるなんて事になったら僕は耐えられるのだろうか。
男は殺されるけど女はゴブリンの慰み者にされる。
ミレーヌがそんな目にあうなんて耐えられない。
「ねえ、ユキナは怖くないの?」
「僕も怖いよ。自分が死ぬのも怖いけどミレーヌを失うのが何より怖い」
「ユキナ?」
「ミレーヌ。僕はミレーヌが好きだ。初めて君に出会った時からずっと好きだ」
本当はもっとロマンチックなシチュエーションで言うべきだったろう。
大きな冒険をして成功したあと二人で星空を見上げながらとか。
そういう時に告白とはするものだと思う。
間違えても今じゃない。
明日死ぬのが怖いから。
そんな情けない状況でいうべきではない筈だ。
それでも言ってしまった。
今言わないと永遠に言えなくなると思ったから。
「…ボクと初めて会った時の事覚えてる?」
「覚えてるよ。ヤオとミンとシンジとクズハと僕が湖で遊んでいた時だよ」
「覚えててくれたんだ」
「一目ぼれだったからね。そのあと一緒の学校行ったりみんなと遊んだりした」
「ごめんね。ボクは一目ぼれじゃなかったよ」
そう言われて僕は苦笑する。
僕は男らしくないし身体だって大きくなかった。
自分が何をしたいのかもわかってなかった。
「でもみんなと一緒に遊んで学んでる時からユキナの事、いいなとは思ってたの」
「今でもいいなって思ってくれてる?」
「思ってなかったら一緒に冒険者になってコンビ組もうなんて思わないよ。ボクに告白してくれてありがとう。でももう少しムードがあった方がよかったかな」
「うん、急すぎた。ごめん。でも言わないまま死にたくなかったから」
もっとゆっくりと時間をかけて信頼を作っていくべきだった。
そう後悔したけど言えずに死ぬよりはマシだ。
結果はご覧の有様。
ミレーヌにも迷惑をかけちゃった。
「ユキナが告白してくれて凄く嬉しい。でも答えは保留にさせて」
「うん。そうだよね」
答えをくれるだけでも良しとしよう。
ミレーヌの気遣いに感謝してベッドから立ち上がろうとした僕の手をミレーヌが掴む。
その手は少し震えていた。
「今はまだユキナと恋人になれるかわからない。だからボクをユキナに惚れさせて。ユキナがボクを好きならボクも答える」
そう言ってミレーヌは僕の手を自分のお腹に。
丁度子宮のあたりに導いた。
「ミ、ミレーヌ!?」
「ボクを恋人にしたいんでしょ?だったら勇気を見せてよ」
ミレーヌのお腹に手を当てて神聖魔法を唱える。
避妊魔法。
娯楽の少ないこの世界に必須の魔法で最も大切な魔法。
そしてその魔法を女の子にかけるという事。
その意味を知らないほど僕とミレーヌは子供じゃない。
「ミレーヌ。今から君を抱くよ」
「うん…ユキナならいいよ」
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