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第二話 青い瞳の子
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「スミレ、腕輪を外してくれないか?」
「なぜですか?」
腕輪とはいえ、スミレにとっては物心がついた時から、ずっとつけているお守りのような物なのだ。今更外せと言われて、疑問に感じるのもしょうがないだろう。
「大丈夫だ。入学式が終わったらまた返すから。ほら、もうすぐ入場だぞ」
「まあ、いいですけど…」
急かされたスミレは、腕輪を外して、速めに歩いて式場に向かう。
ゴーン.......。ゴーン.......。
学園特有の大きな鐘の音が鳴り響く。
入学式が始まる合図だ。
スミレは新入生の座席に座っていた。
「我が校の生徒会長でもある、在校生代表、緑葉夕丞、挨拶をお願いします」
「はい。......皆様、ようこそ凪晴学園へ。我が校の悠長な歴史の中、こうして皆様と出会えた事を....」
…始まったわね。
そう思いながらスミレはあたりに座っている同級生を見回す。いくら貴族とはいえ、子供は子供だ。みんなキョロキョロとせわがしなく頭を動かしていた。
ここは全国の貴族が集まる学校なので当然大きく、生徒の数も多い。新入生をざっと見渡しただけでも、300人ぐらいいるようだ。
ふとスミレは自分の右斜め後ろに座る男の子が目に入った。
…なんて青くて綺麗な瞳なんだろう。かすみ姉さまにそっくりだわ。
その時、目があった。
その子は澄んだ笑顔で笑ってくれた。スミレも笑い返したが、その子はすぐに顔を伏せてしまった…。いや、よく見ると耳が少しだけ赤みがかっていた。
なんだか、“いけないもの”を見てしまったようで、バッと頭ごと目線をそらした。
…どうしたんだろう。とりあえず、そろそろちゃんとスピーチを聞かないと…。
案の定、後ろの方で何人かの新入生が、教授に注意された。
「以上をもちまして、第231期入学式を閉会します。1年生はこれより生徒手帳の配布と、学校案内及び入学測定が予定されていますの、終了時まで、保護者の皆様はしばしの茶会をお楽しみください」
凪晴学園231期1学年、320名。クラス:アメシストからクラス:クォーツまで、8つに分けられる。スミレと例の青い瞳の子は、クラス:アメシスト。
「同じクラスみたいね。これから1年間、よろしくね」
「あ、ああ」
差し伸べられた手を、梨は慌てて掴んだ。
青い瞳が一瞬色が変わったのを、スミレは気のせいだと思うことにした。
「なぜですか?」
腕輪とはいえ、スミレにとっては物心がついた時から、ずっとつけているお守りのような物なのだ。今更外せと言われて、疑問に感じるのもしょうがないだろう。
「大丈夫だ。入学式が終わったらまた返すから。ほら、もうすぐ入場だぞ」
「まあ、いいですけど…」
急かされたスミレは、腕輪を外して、速めに歩いて式場に向かう。
ゴーン.......。ゴーン.......。
学園特有の大きな鐘の音が鳴り響く。
入学式が始まる合図だ。
スミレは新入生の座席に座っていた。
「我が校の生徒会長でもある、在校生代表、緑葉夕丞、挨拶をお願いします」
「はい。......皆様、ようこそ凪晴学園へ。我が校の悠長な歴史の中、こうして皆様と出会えた事を....」
…始まったわね。
そう思いながらスミレはあたりに座っている同級生を見回す。いくら貴族とはいえ、子供は子供だ。みんなキョロキョロとせわがしなく頭を動かしていた。
ここは全国の貴族が集まる学校なので当然大きく、生徒の数も多い。新入生をざっと見渡しただけでも、300人ぐらいいるようだ。
ふとスミレは自分の右斜め後ろに座る男の子が目に入った。
…なんて青くて綺麗な瞳なんだろう。かすみ姉さまにそっくりだわ。
その時、目があった。
その子は澄んだ笑顔で笑ってくれた。スミレも笑い返したが、その子はすぐに顔を伏せてしまった…。いや、よく見ると耳が少しだけ赤みがかっていた。
なんだか、“いけないもの”を見てしまったようで、バッと頭ごと目線をそらした。
…どうしたんだろう。とりあえず、そろそろちゃんとスピーチを聞かないと…。
案の定、後ろの方で何人かの新入生が、教授に注意された。
「以上をもちまして、第231期入学式を閉会します。1年生はこれより生徒手帳の配布と、学校案内及び入学測定が予定されていますの、終了時まで、保護者の皆様はしばしの茶会をお楽しみください」
凪晴学園231期1学年、320名。クラス:アメシストからクラス:クォーツまで、8つに分けられる。スミレと例の青い瞳の子は、クラス:アメシスト。
「同じクラスみたいね。これから1年間、よろしくね」
「あ、ああ」
差し伸べられた手を、梨は慌てて掴んだ。
青い瞳が一瞬色が変わったのを、スミレは気のせいだと思うことにした。
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