夏の夜に見た夢

春廼舎 明

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20.秘め事

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 旦那様が息を荒げ、ぼたぼたと汗を垂らしたまま、じっと自分を見つめてくる。自分も、息を整えながらじっと旦那様を見つめ返した。


「はっ……はっ…んふっ……」

 ぼたぼたと俺の汗が滴り落ちるのを気にもとめず、蒼月はじっと俺を見上げている。気がついたら唇を重ね頬を撫で、体をピッタリ合わせぎゅっと抱き寄せていた。唇を離し、顔を覗き込もうと少し体が離れると、突き入れたままだった楔が力をなくし膣圧に押し出されそうになる。ゆっくりずるりと引き抜くと、蒼月が甘い甲高い声をあげる。

「あんっ、旦那様、あ、やぁん……」

 引き抜いた楔からぼたぼたと白く泡立ったものが垂れ、彼女の蜜口からもとろりと同じものが溢れた。

「なんつう声出してんだよ。さっきまで散々突きまくってもあげなかったのに、今更そんな声」
「だ、だって、今、蒼月の中、すごく敏感になってて……」

 恥ずかしそうに、顔を赤らめて視線をそらす。今更そんな可愛らしい表情を見せるのはずるい。俺の下で、突き上げられてささやかな胸が揺れ、切なそうに顔を左右に振っていた表情が浮かぶ。あれも可愛いかった。俺に貫かれてあの表情を見せるというのが、堪らなく良い。声をかけてやればひくひくと秘所を震わせ、蜜の出が多くなるのに気がついた。グチュグチュとわざと音を立て突き込んでやると、さらに蜜が溢れ吸いつきが良くなるのがいい。
 要は、すごく良い、だ。
 彼女の尻の下ですっかりシワになっている寝間着はぐっしょり濡れ大きなシミができている。濡れやすい体質なのか、それにしても汗もだいぶかいている、水分を取ったほうがいい。
 寝台を降り、水差しを取りに行こうとしたら蒼月が泣きそうな声で止める。

「旦那様!」
「大丈夫、水を取りに行くだけだ。」

 いつから自分はこんな甘ったるい男になったのだろう。
 蒼月の泣きそうな顔に、口付けを落とし、水差しと数枚の大判の手ぬぐいを持って戻る。
 蒼月に水を飲ませ、横にさせる。尻の下にあったぐずぐずに濡れた寝間着をどかし、手ぬぐいで秘所を優しくふき取る。

「あ……くぅ…、旦那様、ダメです。まだ、そこは……」
「ん?」

 言われてみれば、まだ真っ赤に充血し、ふっくらと柔らかなままだ。拭き取ったそばから、とろりと溢れてくる。
 ぞくぞくっと湧き上がってくる。

「旦那様、もっと……」
「え」
「もっと、蒼月と、さっきみたいに、…して」
「……」

 カーッと体が熱くなる。
 涙で潤んだ瞳で、切実に訴えられる。

「旦那様、もっとして、ください。」

 最近覚えたらしい丁寧語にぐらっとくる。

「蒼月、今日はもう、初めてだったんだからこれくらいにしよう」
「旦那様、蒼月とじゃだめ? 蒼月、初めてでうまくできなかったから、もういや?」
「……」

 グラグラと頭が沸騰してくる。血が沸き立ち呼吸が熱い。

「蒼月、嫌なわけない。けど、言っただろう、痛いこと、辛いことはもうさせたくない。」
「もう、痛くない。旦那様が、蒼月嫌になったなら、辛い、とても。」
「蒼月、……参ったな。」
「少しずつして時間かけてそうなるのと、今、たくさんして早くそうなるの、同じこと。でも、蒼月は早く旦那様喜ばせたい。そうできるようになりたい」
「……ほんと、参ったな。焦らなくて良いって言いたいけど。……蒼月、もう一回だけしようか。」
「ううん、一回だけじゃヤ。旦那様、もっと、いっぱい。いっぱいして……」

 首に腕を絡められ、鼻先をこすり合わせるように目を覗き込まれ、唇が触れそうになりながらそんなことを言われ、硬くなった男根に腰を押し付けられて観念した。
 さっきより、抵抗なく呑み込んだそこに俺の形を覚えさせるようじっくり腰を合わせる。ナカがうねり、吸い付いてくる。
 精通を迎えて以来、こんなに夢中になったのは初めてだ。初めて女を抱いた時ですら、まあ、こんなもんか、と思った。
 蒼月は違う。肌が触れた瞬間、全身の血が沸騰する。唇を合わせると、下半身からぞくぞくと熱が湧き上がる。切っ尖が蜜口に触れた瞬間、全身の皮膚が粟立ち熱い血が駆け巡り己を突き込ませた。ただ彼女を愛したくて、彼女が俺を感じてくれているのを見て取っては、さらに思いが強くなって、彼女から求められたくて。

 蒼月が、房事の心得はあると言ったのは、本当かもしれない。ただの心構えではなく、いわゆる房中術。徒らに気をやり快楽に耽ってはならない。しかし、何度となく彼女に求められ昂ぶりこらえ、懇願され放ち、繰り返すうち、すっかり、蒼月の虜となっていた。
 今まではただの添い寝、抱き枕でしかなかったのが、毎晩のように高め合い交じり合う。ただ体を委ねるのではなく人生を委ねる、これから俺のそばで生きて行くという覚悟を持って俺に抱かれたというのを知り、嬉しく苦しい。別に遊びのつもりでも、肉欲の発散のためだけに抱いたわけではないが、初めからそんな覚悟を持っていたということに、俺はいかに気楽で浅はかだったかを思い知らされた気がした。
 2度目の月のものが蒼月に来た時に、彼女のルーツを探ろうと決意した。




「あら、今日はアンネマリー休みの日だっけ?」
「やあ、リーダーも屋台で朝食って珍しいね。」
「まあな。……~~、失礼。」
「あくびかみ殺しちゃって、寝不足?」
「蒼月ちゃんも、顔色悪いし、大丈夫かい? 張り切りすぎた新婚夫婦みたいだよ。」
「阿呆、逆だ逆。カルロ、蒼月に粥を買って来てやってくれないか? お前のサンドイッチの分も出す。」
「お、悪いね。いや、リーダーは自分で行けよ。」

 カルロと玄が屋台に向かう。
 戻って来て、食事が始まるが、粥をすする蒼月が頼りない。なかなか食が進まない。

「蒼月、大丈夫? だいぶ顔色悪いけど。」
「平気。今日はご飯食べたら、お家でじっとしてる。」
「そんな日に限ってアンネマリーは休みなのかい?」
「午後から来てくれるよう頼んだ。」
「無理しないで、リーダーに朝食買いに行かせればよかったのに。」
「旦那様、寝不足。」
「自業自得でしょ?」
「違う。蒼月、月のもので、このところ、旦那様と寝てない。だから、旦那様、寝不足」

 一瞬空気が凍ったようにピタリと固まった。

「ぐほっ……ぐっ、うぐ」
「はぁ? って、あんた蒼月、紛らわしい言い方しないでよ。……それって単に添い寝ってだけじゃないんだ」
「マジか」
「蒼月が玄さんのこと慕ってるのは気がついていたけど、あんたがそれに応えるとはね。」
「いや、むしろリーダーが襲っても、蒼月ちゃんが応えるのが想像できない。」
「お前ら、俺をなんだと思ってる。野獣でも聖人君子でもないぞ。」
「ってことは、相思相愛? 結構前から? 昼は淑女で夜は娼婦、みたいな? 想像できねえ~」
「蒼月が可愛らしく甘えて、この人がデレデレしてるのなんて、むしろ目に浮かぶけどね。」
「ほっとけよ」
「閨の事は、二人の秘め事」

 し、っと人差し指を唇の前で立てて、緩やかに微笑む蒼月は今までに見せたことのない、艶やかで色っぽい表情だった。
 こんな表情を見せられたら、そりゃ、そんな関係に発展するのもおかしくはない、そう思えた。




「旦那様」
「ん、蒼月、もう体はいいのか?」

 いつものごとく寝台に横たわった瞬間、スポッと腕の中に潜り込んでくる。だいぶ伸びた髪を指で梳き、撫でる。気持ち良さそうに、蒼月は目を細め、胸に擦り寄る。

「蒼月、旦那様とぎゅっとしたい。旦那様は?」
「そうだな、蒼月のことをたっぷり愛でたい。」

 腰を引き寄せ押し付け合い、頬を撫でては唇を重ね、舌を絡ませ、見つめ合う。カーッと体が熱くなり、寝間着をはだけ、胸に蒼月をかきいだく。蒼月の体も熱い。呼吸を荒げ、口づけを交わしながら互いに脱がせ合い、脱がせた服を寝台の横にどけようとして、そこに水差しと手ぬぐいが幾枚も用意されていることに気がつく。
 いつのまにか、夜、俺の寝室には水差しと、大量のリネンや手ぬぐいが準備されるのが習慣になった。




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