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1章 始まりの街ロンドン
06 ウォーカーとディークスの話
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中年のスーツ姿の二人組を見て「つけてきたのか?」とホルトは訊いた。
「それは悪かった。だが、俺達は怪しいもんじゃない。実は俺達は税務署の職員なんだ」
「税務署?」
「そうだ。例のドーソン家の秘密の金庫の噂、もしそれが本当だとすれば申告漏れになる。だが、噂だけでは正式には調査は行えない。結局ドーソン家が没落したのを見て、最初は秘密の金庫は噂でしかなかったと我々は思った。しかし、ヒーリー家がこの建物を購入した時、違和感があった。ドーソン家は悪評が高く、それに対してヒーリー家は慈善家で沢山の貧富の差について問題視し、貧しい子ども達の家庭に支援を行ってきた。ドーソンはな、貧しい家庭ならその子どもも労働者として雇った。貧しいなら働くしかない。仕事を与えることが本当の救済だ、金をばら撒くことではないと言いきっていたんだ。つまり、ドーソンは特にヒーリーのような貴族を嫌っていたんだ。しかし、現実は綺麗事で安い労働を手に入れる為だったんだ。厳しい労働環境で亡くなる子どももいてな、ついにそれを規制する法律をヒーリーは政府に要求したんだ。だが、その前に事業の悪化や株を損し、ドーソン家は没落していったんだ。金に困ったドーソンは別荘を売ることにしたんだが、それをヒーリーは購入した。何故なのか、謎だったんだ。いくらホテル経営をする為だとはいえ、元々ホテル事業なんて手を出してこなかった一族だ。不思議だったが、そこに秘密の金庫がもし存在したらと考えると、それも納得がいくんだ。別荘はかなり値切られた額で購入され、秘密の金庫に入っているお金はそれ以上とされている」
「何故、ドーソンはその金を使わなかったんだ?」
「噂によれば汚い金だからという話だ。それに、もし大金が動けば俺達が見逃さない。大金が金庫の中にあっても使えないと分かったから、金庫ごとこの別荘をドーソンは手放すしかなかった、と俺は見ている」
「では、あなた達もその秘密の金庫を探しているわけですね」とジークは訊いた。
「そうだ。もし、金庫ごと授受があればヒーリーは収入を得たことになる。だが、そんな申告はない。知らぬ存ぜぬを貫くつもりなのか、それとも本当に知らなかったのかは分からないが、どっちにしろ大金がそこにあるのなら見逃すわけにはいかない。ということでだ、もし金庫を探すというなら一緒に探させてもらいたい。頼む!」
「どうするよ」
ホルトはジークに訊いた。
「分かりました」
「感謝する」
「因みにですがお二人は食後の時間、何をされていましたか?」
「ホテル内を回っていた。疑わしいだろうが、俺達はやっていない。秘密の金庫を探していただけだ」
「もう一つだけ。サム・ラーソンさんとは面識は」
「いや、ない」
「ありがとうございます」
「それは悪かった。だが、俺達は怪しいもんじゃない。実は俺達は税務署の職員なんだ」
「税務署?」
「そうだ。例のドーソン家の秘密の金庫の噂、もしそれが本当だとすれば申告漏れになる。だが、噂だけでは正式には調査は行えない。結局ドーソン家が没落したのを見て、最初は秘密の金庫は噂でしかなかったと我々は思った。しかし、ヒーリー家がこの建物を購入した時、違和感があった。ドーソン家は悪評が高く、それに対してヒーリー家は慈善家で沢山の貧富の差について問題視し、貧しい子ども達の家庭に支援を行ってきた。ドーソンはな、貧しい家庭ならその子どもも労働者として雇った。貧しいなら働くしかない。仕事を与えることが本当の救済だ、金をばら撒くことではないと言いきっていたんだ。つまり、ドーソンは特にヒーリーのような貴族を嫌っていたんだ。しかし、現実は綺麗事で安い労働を手に入れる為だったんだ。厳しい労働環境で亡くなる子どももいてな、ついにそれを規制する法律をヒーリーは政府に要求したんだ。だが、その前に事業の悪化や株を損し、ドーソン家は没落していったんだ。金に困ったドーソンは別荘を売ることにしたんだが、それをヒーリーは購入した。何故なのか、謎だったんだ。いくらホテル経営をする為だとはいえ、元々ホテル事業なんて手を出してこなかった一族だ。不思議だったが、そこに秘密の金庫がもし存在したらと考えると、それも納得がいくんだ。別荘はかなり値切られた額で購入され、秘密の金庫に入っているお金はそれ以上とされている」
「何故、ドーソンはその金を使わなかったんだ?」
「噂によれば汚い金だからという話だ。それに、もし大金が動けば俺達が見逃さない。大金が金庫の中にあっても使えないと分かったから、金庫ごとこの別荘をドーソンは手放すしかなかった、と俺は見ている」
「では、あなた達もその秘密の金庫を探しているわけですね」とジークは訊いた。
「そうだ。もし、金庫ごと授受があればヒーリーは収入を得たことになる。だが、そんな申告はない。知らぬ存ぜぬを貫くつもりなのか、それとも本当に知らなかったのかは分からないが、どっちにしろ大金がそこにあるのなら見逃すわけにはいかない。ということでだ、もし金庫を探すというなら一緒に探させてもらいたい。頼む!」
「どうするよ」
ホルトはジークに訊いた。
「分かりました」
「感謝する」
「因みにですがお二人は食後の時間、何をされていましたか?」
「ホテル内を回っていた。疑わしいだろうが、俺達はやっていない。秘密の金庫を探していただけだ」
「もう一つだけ。サム・ラーソンさんとは面識は」
「いや、ない」
「ありがとうございます」
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