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第5章 アカシア
02 白黒
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空に突然現れた巨大な顔、その開いた口からなんとか逃れたルルーは白黒の世界から脱出出来ないでいた。
何故? という疑問より先にこの後どうするかを考えた。
岩の上で座りながら考えていると、近くで顔のある人間を見つけた。
赤いスカートの女の子だ。
ルルーは急いでその子を追いかけた。
「おーい、ちょっと待って」
呼び止められた女の子は立ち止まった。年齢的にカミュと同い年ぐらいか。
女の子は振り返った。髪は黒く、瞳の色も同じ色。だが、どうもその顔には違和感があった。
「ロボット?」
ルルーはがっかりした。そして、踵を返す。
「え、ちょっと待ってよ」
ロボットが何か言ったがルルーは無視した。
「なんで無視するの? 酷いよ」
そんなこと言われたルルーは振り返る。
「酷い? だってあんたロボットじゃん」
「そうだけど、あなたは人間だよね? この島に人間なんて久しぶり。ねぇ、お友達にならない?」
「意味分かんない」
ロボットと友達になんてなるつもりはない。だが、そのロボットは今大事なことを言った。人間なんて久しぶり……つまり、この島には自分しかいないということだ。
ルルーはさっきの岩の上へと戻り体育座りをした。
すると、その横に同じようにロボットが座った。
ルルーは深いため息をついた。
「今度はへんなのが付いてきたよ」
「へんなの!?」
「あんたロボットなんでしょ? なら、教えなさいよ。あの顔のない人達はいったいどうしたの」
「ああ、あれは顔を奪われたんだよ。人は皆ペルソナを被って生きている。そして、それを長く被っていると、それを突然奪われたらどうしたらいいのか人は困ってしまう。だから、ペルソナを探し回るんだ。ゾンビみたいに。体は死んだわけじゃないけど、意識はない。無意識な状態で体が勝手に動いてるんだ。ペルソナを奪われた衝撃で、人は無意識に入る」
「つまり、無意識のまま仮面を探してる……」
「そう。でも、彼らには他人のペルソナは奪えない。無理やりに引き剥がそうとするんだ。文字通りにね」
「なるほど」
つまり、あれに捕まったら死ぬのか。でも、なら何故私の声が連中に届いたのか…… 。
ふと、ルルーは空を見上げた。
あれは現れない。ロボットも同じように空を見た。
「空にいるあれを見たんだね」
「ねぇ、あれは何? あれが皆の仮面を奪ったんでしょ?」
「仮面を沢山集めれば、色んな人間を演じることが出来る、色んな人間になれる」
「何それ」
「あれは魔人が現れるよりももっと前から現れた。でも、仮面を奪うようになったのは魔人が出現した後。海は黒く、島に孤立した人達の仮面をあれは奪うようになった。それでも全員じゃなかった」
「生き残りがいたの?」
ロボットは頷いた。
「こうなることを予言していた男は船をずっと前からつくっていて、それで仲間と一緒に島を脱出した」
「待って、その話しっていつの話しをしてる? それに、黒い海じゃ船は」
「男と脱出した仲間は船大工だった。彼らは後に海賊旗を掲げた。唯一、黒い海を航海する海賊船として。初代船長が、その予言した男だった。それから代々と船長は船を受け継いだ」
海賊船は知っていたが、そんな話しがあったとは。
ルルーは立ち上がった。
「あれ、どこへ消えたか分かる?」
ルルーは空を指さした。
「どこかへ行ったんだと思う」
「あれ、移動するの?」
「人に化けてるのかも」
「化ける……それって大変!?」
「無理だよ。島からは脱出出来ない。絶対に。それに、あれが人に化けていたら見つけるのは無理だよ」
「無理とか絶対とかあなたは言うけどそれって本当じゃないよね。だって、海賊船は現に島を脱出したんじゃない。なら、ある筈よ。脱出する方法が」
何故? という疑問より先にこの後どうするかを考えた。
岩の上で座りながら考えていると、近くで顔のある人間を見つけた。
赤いスカートの女の子だ。
ルルーは急いでその子を追いかけた。
「おーい、ちょっと待って」
呼び止められた女の子は立ち止まった。年齢的にカミュと同い年ぐらいか。
女の子は振り返った。髪は黒く、瞳の色も同じ色。だが、どうもその顔には違和感があった。
「ロボット?」
ルルーはがっかりした。そして、踵を返す。
「え、ちょっと待ってよ」
ロボットが何か言ったがルルーは無視した。
「なんで無視するの? 酷いよ」
そんなこと言われたルルーは振り返る。
「酷い? だってあんたロボットじゃん」
「そうだけど、あなたは人間だよね? この島に人間なんて久しぶり。ねぇ、お友達にならない?」
「意味分かんない」
ロボットと友達になんてなるつもりはない。だが、そのロボットは今大事なことを言った。人間なんて久しぶり……つまり、この島には自分しかいないということだ。
ルルーはさっきの岩の上へと戻り体育座りをした。
すると、その横に同じようにロボットが座った。
ルルーは深いため息をついた。
「今度はへんなのが付いてきたよ」
「へんなの!?」
「あんたロボットなんでしょ? なら、教えなさいよ。あの顔のない人達はいったいどうしたの」
「ああ、あれは顔を奪われたんだよ。人は皆ペルソナを被って生きている。そして、それを長く被っていると、それを突然奪われたらどうしたらいいのか人は困ってしまう。だから、ペルソナを探し回るんだ。ゾンビみたいに。体は死んだわけじゃないけど、意識はない。無意識な状態で体が勝手に動いてるんだ。ペルソナを奪われた衝撃で、人は無意識に入る」
「つまり、無意識のまま仮面を探してる……」
「そう。でも、彼らには他人のペルソナは奪えない。無理やりに引き剥がそうとするんだ。文字通りにね」
「なるほど」
つまり、あれに捕まったら死ぬのか。でも、なら何故私の声が連中に届いたのか…… 。
ふと、ルルーは空を見上げた。
あれは現れない。ロボットも同じように空を見た。
「空にいるあれを見たんだね」
「ねぇ、あれは何? あれが皆の仮面を奪ったんでしょ?」
「仮面を沢山集めれば、色んな人間を演じることが出来る、色んな人間になれる」
「何それ」
「あれは魔人が現れるよりももっと前から現れた。でも、仮面を奪うようになったのは魔人が出現した後。海は黒く、島に孤立した人達の仮面をあれは奪うようになった。それでも全員じゃなかった」
「生き残りがいたの?」
ロボットは頷いた。
「こうなることを予言していた男は船をずっと前からつくっていて、それで仲間と一緒に島を脱出した」
「待って、その話しっていつの話しをしてる? それに、黒い海じゃ船は」
「男と脱出した仲間は船大工だった。彼らは後に海賊旗を掲げた。唯一、黒い海を航海する海賊船として。初代船長が、その予言した男だった。それから代々と船長は船を受け継いだ」
海賊船は知っていたが、そんな話しがあったとは。
ルルーは立ち上がった。
「あれ、どこへ消えたか分かる?」
ルルーは空を指さした。
「どこかへ行ったんだと思う」
「あれ、移動するの?」
「人に化けてるのかも」
「化ける……それって大変!?」
「無理だよ。島からは脱出出来ない。絶対に。それに、あれが人に化けていたら見つけるのは無理だよ」
「無理とか絶対とかあなたは言うけどそれって本当じゃないよね。だって、海賊船は現に島を脱出したんじゃない。なら、ある筈よ。脱出する方法が」
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