自分のことは自分で出来ます

アズ

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「皆私を邪魔者扱いして! いいですよ、死んでやりますよ」
 最近の私の口癖は自殺だった。人をボケた老人扱いをして、まるでなんにも出来ないみたい子供みたいに人のことを見下してくるのだ。
 私には夫と娘がいる。夫は今も現役で私と違い働いていた。私も数年前までは一緒に働いていたけど、物忘れが酷くなりお客さんに言われたことまでも忘れるようになり、私は仕事を辞める決意をした。娘も夫もそれでいいじゃないかと言ってくれたから、私もそれに不満はない。
 ただ、仕事を辞めると本当にやることもなくて自分の部屋とリビングを行き来するだけの生活になってしまい、最近のテレビもなんだかよく分からなくてつまらなかった。いや、テレビは元々そんなに見る方ではなかった。仕事をしていた時は忙しくて合間にニュースを観て、あとは夫の野球観戦でテレビが占領されるので、私は自室にある小さなテレビでベッドに横になりながらレンタルしたDVDを観てるぐらいだった。昔は韓ドラをよく観て、娘の孫にもすすめて見せたりしたが、その孫も大きくなって最近は遊びに来ることもなくなってしまっていた。本当は遊びに来て欲しいし、一緒にお酒でも飲みたいのに。
 私は日本酒が好きで夫はビールと焼酎だった。焼酎は芋がダメで米か麦がだいたいだった。そんな夫も病院から酒はやめなくていいから量を減らすようにと言われるようになり、昔のように飲みに行くことはまるっきり減った。家にいても料理するのが面倒だから外で食べてきて欲しいんだけど。
 私も夫も80を過ぎて、夫は私より一つ上だった。その夫には兄弟でお兄さんがいたが、数年前に亡くなっていた。そのお兄さんも認知症で話しを聞いた限りでは最後の方は家族のことさえ忘れてしまっていた。あゝはなりたくはないと思っても、私の頭はどんどんおかしくなってきている。先生にそのことを話しても、認知症を治す薬はないと言われるだけ。認知症の症状を遅くする薬らしいけど、私は多分手遅れなんだと思う。
 最近は料理もしなくなり、娘が弁当を買ってきてそれを食べるのが毎日だ。昔なら弁当くらい買いに行けたのに、娘が私の免許証と車をどこかへ持ち出してしまって、車が運転出来ない状況にある。私が外に出掛けたいから返してと言っても、娘は「どこに行きたいの」と面倒そうに言うのだ。娘は心配性で私に運転させたくないらしい。医者も同じことを言っていた。でも、昔は勉強も出来て成績はそれなりにとっていた。なのに、今では馬鹿な婆さん扱いだ。
 そんな扱いをされると私もプライドがあるから当然腹が立ってくる。娘は私のことを思ってくれてるんだろうけど、過保護もいいところだ。娘はいつもピリピリしていて、いつも私達に怒っている。
 だから、外に出掛けたくても出れないから、私は家にいるしかなかった。毎日が本当につまらない。時々死にたくなる。



 11月、夫が救急搬送された。そのまま入院することになり、私も病院に行こうとしたのにまたしても娘に止められてしまった。
「なんで?」
 自分の夫が病院に運ばれたら病院に駆けつけるものでしょ!? だが、病院は面会には制限があって今は出来ないと娘が言うのだ。でも、何かあった時に病院が家族に合わせないなんてことがあるだろうか? そんな筈はない! 人を馬鹿にして娘は私に嘘をついている。私が認知症だからって。
 私がタクシーで病院に行こうとすると、娘はそれすらも阻止しようとしてきた。私は腹が立って大声をあげた。
 もう、こんなのは嫌!!



 数日して、夫は退院した。病院からは酒を控えるようにと言われたらしいが、夫は家に戻ってからまた酒を飲み始めた。私は心配したが、夫から酒は奪えないので酒を飲むことには反対はしなかった。
 その同じ月、今度は私が自宅玄関前のちょっとした外階段から落ちて、頭から血を流し救急搬送された。怪我はたいしたことはなかった。何針か縫ったけど、私はおかげでピンピンしていた。夫を一人にもしておけないので、帰りますと看護師に言うと、その看護師と娘は困った顔をした。今日は入院になると告られ、私はパニックになった。
「夫が一人家にいるんです。夫は家のことはなーんにも出来ないんです。だから私が家に帰らないと夫が困るんです」
 すると娘が私の言ったことに言い返してきた。
「何言ってるの。洗濯だって料理だってもうしてないじゃん」
「いいえ、してます! 洗濯は毎日私がしてます」
「違うでしょ。いつも爺さんがしてるじゃない」
「いや! してません。するわけない!」
 娘は私がまるで何もしていないみたいな言い方をしてきたが、娘が私達の家のことを知っている筈がない。なのになんで娘はまるで知ってるみたいな決めつけ方をするのか。それも私が認知症で何も出来ないと思われてるからに違いなかった。
 私は病院で発狂し大声をあげた。
「もう自殺してやる」
 しかし、娘は聞き慣れたように「はいはい」と言うだけで気にする素振りすらない。看護師も娘に任せる感じだ。どうして皆私の意思をこうも無視してくるのか。誰も私に味方はいないの?



 数日の入院予定であったが、私は早期退院が出来て一日だけの入院で済んだ。
 家に帰ると変わらず夫が出迎え心配してくれた。私は大丈夫だと答え、暫くは医者に言われた通り安静にすることにした。
 それから1月の半ば、私に会いたいという知らない人が家にやって来た。その人は役所から来た人で、まるで尋問するかのようにあれこれと私を質問攻めしてきた。私は素直に答えながら私は状況が上手くのみ込めなかった。
 言われるがままに座ったり立ったり歩いたりした。別に介護が必要な程に何も出来ないわけじゃない。でも、なんだか娘は私をどこかに入れたいんじゃないかという不安が過ぎった。
「私は介護は必要ありませんから。自分のことは自分で出来ますので」
 しかし、そういったところで結局この人達は私の言葉を信じようとはしないんだ。



 気づけば私はデイサービスに通わされていた。そこでは確かに話し相手も出来たし、なによりご飯が美味しかった。勿論不満がないわけじゃない。どうして私がここへ連れて来られるのか分からないし、そこは今も納得していない。だが、娘が行け行けとにかくうるさいのだ。夫は別に行きたくなきゃ行かなくてもいいって言ってくれるし、だったらそうして欲しいとこっちは思っていても、何故か娘は断固として聞き入れてはくれなかった。今じゃ娘の言いなり。娘は私を完全にコントロールしたがっているが、私はロボットなんかじゃないし娘の言う事なんて聞きたくなんかない!
 やはり少し理解してくれるのは孫だ。今は社会人として立派に働いているが、社会人になった今でも本を読み続ける程の読書家だった。私は昔は本を読んだりはしていたけれど、今は文字も読めなくなって本なんてずっと前から読まなくなっていた。だから、孫がたまに来ては本の話しをしてくれるのがありがたかった。
 最近はカフカとか安部公房とか読んでいるらしく、不条理がどうのこうのとか私には分からないけど、大人になっても本を読んでるなんていいことだと思う。
 私が読んでた頃は井上靖とかそのあたりの本だった。でも、ほとんど昔読んだ本のことは忘れてしまい思い出せない。ただ、井上靖の『しろばんば』の主人公が孫と似ていた記憶がなんとなくあった。それを孫に言うと苦笑しながら「違うよ」と即答した。
「『しろばんば』の続きの『夏草冬濤』なんかあたりからは俺なんかじゃないだろ?」
「そう? あんまり覚えてない」
 私も苦笑する。
「どんな話しだったっけ?」
 孫はあらすじを簡単に説明し、私がもう本を読まないと知っているから『夏草冬濤』の更に続編の結末までを教えてくれた。全く話の内容を覚えてなくて本当に最後まで読んだか曖昧になった。もしかすると私は『しろばんば』だけ読んでいたのかもしれない。しかし、孫はよく話を覚えているもんだと感心した。



 その数時間後、孫が話してくれた内容のほとんどを思い出せなくなっていた。



 娘も夫も孫は度々私に会いに来ているらしいが、私はそれすらも覚えてなくて、会っていないと思うのだけど娘はともかく夫までそんなことを言うもんだから、私は本当に覚えていないんだと自覚するようになった。頭がダメになっているのは自覚してるんです。でも、ここまでダメになってるとは自分でも思ってもみなかった。
 最近、夫が泊まりで出掛けることがあって、娘は私を一人にしておけないと施設に入れようと躍起になっている。孫にそれを相談したら「要介護が3以上ないからそれはないよ」と、よく分からないことを言ってたけど、私は絶対に施設なんかには入りません! と娘にも夫にも言って夫は「そうしな。好きにしな」と言ってくれたが、娘は相変わらずピリピリして「あっそ」と素っ気ない返事をしてきた。
 でも、結局今度もまた私の意思を無視して私を騙し施設に入れたのだ。私は職員に対して「帰ります」と言っても、職員は困った顔をするだけで、私の言うことを全く聞いてくれない。タクシーで帰りますと言っても、夜は施設の出入り口が閉まっていで出られないと言うのだ。
「私を閉じ込める気!」
 職員は電話で娘と話しをしているようだけど、全部全ては娘の仕業だってことは分かっているんです! だから夫に電話をしなきゃいけないけど、私の携帯が見当たらなくて結局電話が出来なかった。私を送ったのは娘だからきっと私の携帯をどこかにやったのも娘に違いない。
 本当になにもかも嫌になる。つまらないし何もすることがないし、何かしようとすると「いいから! 何もしないで」と娘に叱られるんだから。



 翌日、私は家に帰ることになった。どうやらショート利用とやらで一泊だけだった。だったら最初からそう言って欲しいのに、全く説明もせずにどんどん私の知らないところで決められるんだから。夫に聞いてみても夫も知らないと答えるんだから、本当に娘には困る。



◇◆◇◆◇



 4月、またその月も夫が一日出掛けて帰らない日があり、その日も娘はショートへ泊まりに行かせようとしたが、私は断固として拒否した。いつもなら娘が施設まで送っていたのだが、私があまりにも行こうとしないので施設に電話を入れキャンセルをした。でも、娘と私は同居していない。娘は別の家で暮らしていて、私が家でたった一人になるのが心配だって言うが、ただ家にいるだけなのに心配になることなんてない。娘は単に過保護なだけで、全く人を信用しようとしないだけだ。
 私は娘に「自分のことは自分で出来ますから」と言い放つと、娘は「あっそ」と私を一人にして行ってしまった。
 家は本当に一人になった。昔は猫と犬を飼っていたが、犬はとうの昔に亡くなり、猫の方は黒猫で捨て猫だった。玄関前にダンボールの中に小猫を入れたまま捨てられていたのだ。全く、どうしてそんなことが出来るのか。仕方なく猫を飼い続け、その猫も歳で亡くなった。猫は二匹いて初代と二代目がいて、初代はメスで二代目はオスだった。二匹とも捨て猫で初代が亡くなって一年したら同じように玄関前に捨てられれていたのだ。もうペットを飼うのは嫌だった。嫌いになったとかじゃなく、ペットが亡くなって見送るのが辛いからだ。でも仕方なく飼っていた。猫は本当に家の中を走り回ったりして襖を爪で破ったり、障子が滅茶苦茶になったりして本当に困ったちゃんだったが、それでも可愛いものは可愛いかった。その猫もいなくなり、この家は本当に年寄り二人になった。
 だから、娘には感謝しているところもある。ただ、自分のことは少しでもやらないと自分が気が済まないし、なによりどんどん出来なくなっていくのが怖かった。
 本当に認知症はたちの悪い病気だ。何度死を考えたか。
 テレビをつけて、あまりいいのがやっていないと消して、自分の部屋に戻る。その部屋でベッドに横になって一休みする。
 ふと、庭にある花に水をやっていないことに気づいた。私はベッドから起き上がりジョウロに水を入れ玄関を出た。すると、外はなんだか暗くなっていて夜になっていた。
 あれ、いつの間に…… 。
 私はとりあえず花に水をやった。それが終わると家に戻ろうとした。その時、私は鍵を持たずに家に出てしまったことに気がついた。夫は家にいないので困った私はとりあえず一晩だけ隣近所にお世話になることにした。



 翌朝。隣近所に世話になっていた私のもとに娘が迎えに来た。
「なにやってるの!」娘はそう言う。
「鍵を持たずに家を出たから入れなくて朝までご近所さんにお世話になってたの」
「はぁ? 家からどうやって出たの? 鍵を開けて出たんでしょ? なんで鍵が閉まってるの。家に行ったら裏のドアまで鍵があいてたよ」
「いいや、鍵は閉まってました」
「どうやって閉まるの! オートロックじゃあるまいし」
 娘はプンプンしていた。でも、本当に鍵は閉まって私は家から追い出されてしまったのだ。それは間違いない。なのに娘は私が近所にお世話になっていたことが気に入らないのだ。別にそれくらいいいのに。でも、それを言ったら娘はもっと怒るだろうから口をつむぐことにした。



◇◆◇◆◇



 時々、考えることがある。どうして私は認知症なんかになってしまったんだろうって。勉強は出来ていたし、仕事も長く働いていた。認知症が原因で働けなくなっただけで、本当ならもっと働けた筈だった。それが一気に出来なくなって、どんどんおかしくなって、最近では夜も眠れなくなっていた。認知症は治せないと言われ、私はこのままどんどんおかしくなっていく一方なのか? 最近出来たことも出来なくなっているのも自覚はある。味噌汁を作ろうとコンロに火をかけてたところに娘が現れ「何してるの?」と聞かれたから「味噌汁作ってるの」と答えたら、娘が鍋の中を覗いて「味噌は?」と言われ、ハッと見ると具材だけ入った味噌のない味噌汁が出来ていた。それから娘はコンロにセンサーをつけ、台所は夫が立つようになって私は台所に立つことがほとんどしなくなっていた。
 それでも出来ることを見つけやろうとする努力はしていた。孫もそうしないとどんどん出来なくなるからねと賛同してくれたし、私はそうするつもりだった。
 でも、直ぐに物をなくすようになって、昔なら直ぐに思い出せたのが思い出せなくなって、中々見つからず泣きたくなって本当に泣き出すようになった。夫も最近私を無視するようになってるし、明らかに私は皆から嫌われていると感じることが常だった。
 デイサービスでは唯一あまりそういうことを感じることがないので、最近はそれが楽しみになっていた。デイサービスでは脳トレをして少しでも認知症にいいものはやるようにしている。
 でも、正直言うともう生きるのは嫌。死にたい。そんな気持ちだった。
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