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第2章 世界の蔓延
06 胡蝶の夢
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「お前達があれをやったのか!? 何故? 何故関係のない人まで巻き込む?」
金髪の少年は首を横に振った。
「この世に関係のない人なんていない」
「お前らのせいで大勢の人が死んだんだぞ。私の家族も……大切な人も……お前達はそれを奪ったんだ」
「所詮、お前達は運命を都合よくでしか解釈していない。死人を発生させたのは僕達で間違いないが、魔法の消失は僕達とは関係のないことだ」
「なんだって?」
「魔法が失われなければ、死人に怯えもしなかった筈だ? お前のようにこの事態をどうにかしようとする筈だ。魔法はその手助けをするだろう。死人の脅威は抑えられ、ここまでは至らず鎮火した筈だ。そして、いつも通りの平和がやってくる。お前達が考えなければならないことは、何故魔法の消失が起こったのか。それを考えさせる為にも死人の発生は必要不可欠だった」
「どういうこと?」
「魔法が使えない日々が続けば、いずれは魔法を忘れ人の力で、科学で乗り越えようとするだろう。そして、お前達は魔法の消失の究明も諦めただろう。所詮、都合で生きるお前達だ。そんなお前は都合よく自分の幸せを祈ろうとするだろう。神はそんなお前達を見ているし、火宅無常の世界でお前達はどう生きるかと思えば、ただの欲の塊の鬼でしかない。そんなお前達だ、どうせどう騒ぎ立てようがお前達は真実を得ることも出来ないだろう。死人を発生させてから今日、現に何も突き止められなかったじゃないか。それは都合でしか運命を見ていないから真実も遠ざかり、お前達の目の前には真実のない世だけが残される。だが、都合を捨て曇りなき眼でもし見れば、例え火宅無常の世界であっても真実を見つけることが出来ただろう。火宅無常の世界という真実がないとされた世とは今の人では真実をそもそも見つけることは出来ないからだ」
「私には何の話しかさっぱり分からない。でも、これだけは分かる。あんた達は偉そうにそう言うけど、自分達はどうなのさ?」
「僕達は知っている。だから僕達は魔法を使えるようになったんだ。アリス、君もそうだ。だから君も魔法を使えるんだ。だが、君はその記憶を失っている」
「私が原因を知っている?」
でも、それは全く思い出せない。
「だが、それは決して誰かに教えてはならない」
「どうして?」
「魔法の力を本当に失うことになるからだ」
「!?」
「正直、君が記憶を失っていて本当に良かったと思っているよ。君だったら良かれと思って喋ってしまうからな。だが、記憶を取り戻せたらそれが現実になるかもしれない」
「だから私を殺そうとした……」
「でも、考えを変えた。君はそれを知ってどう今の世界を見るか? 君は魔法を取り戻す方法を知っている。思い出せないだけだ。だが、君はそれを思い出せたとしても話すことは出来ない。それは君自身、魔法を捨てる行為となるからだ。君はそれを知って何も出来ないと分かる。何もしてやれない。死人は君を襲わせないようにしよう」
「もし、全員が魔法を取り戻せなかったら……」
「全員死人になってもらう」
「そんな! そんな」
「そんな酷いこと、か? これは大事な事なんだ。記憶を失った君には分かるまい」
すると、視界がぼやけ始めた。
「目眩?」
「これは夢だ。だが、現実でもある。君はこの会話の記憶を忘れることはない。さようなら、アリス」
「待って!」
だが、視界は遠ざかり、暗闇に落ちた。
金髪の少年は首を横に振った。
「この世に関係のない人なんていない」
「お前らのせいで大勢の人が死んだんだぞ。私の家族も……大切な人も……お前達はそれを奪ったんだ」
「所詮、お前達は運命を都合よくでしか解釈していない。死人を発生させたのは僕達で間違いないが、魔法の消失は僕達とは関係のないことだ」
「なんだって?」
「魔法が失われなければ、死人に怯えもしなかった筈だ? お前のようにこの事態をどうにかしようとする筈だ。魔法はその手助けをするだろう。死人の脅威は抑えられ、ここまでは至らず鎮火した筈だ。そして、いつも通りの平和がやってくる。お前達が考えなければならないことは、何故魔法の消失が起こったのか。それを考えさせる為にも死人の発生は必要不可欠だった」
「どういうこと?」
「魔法が使えない日々が続けば、いずれは魔法を忘れ人の力で、科学で乗り越えようとするだろう。そして、お前達は魔法の消失の究明も諦めただろう。所詮、都合で生きるお前達だ。そんなお前は都合よく自分の幸せを祈ろうとするだろう。神はそんなお前達を見ているし、火宅無常の世界でお前達はどう生きるかと思えば、ただの欲の塊の鬼でしかない。そんなお前達だ、どうせどう騒ぎ立てようがお前達は真実を得ることも出来ないだろう。死人を発生させてから今日、現に何も突き止められなかったじゃないか。それは都合でしか運命を見ていないから真実も遠ざかり、お前達の目の前には真実のない世だけが残される。だが、都合を捨て曇りなき眼でもし見れば、例え火宅無常の世界であっても真実を見つけることが出来ただろう。火宅無常の世界という真実がないとされた世とは今の人では真実をそもそも見つけることは出来ないからだ」
「私には何の話しかさっぱり分からない。でも、これだけは分かる。あんた達は偉そうにそう言うけど、自分達はどうなのさ?」
「僕達は知っている。だから僕達は魔法を使えるようになったんだ。アリス、君もそうだ。だから君も魔法を使えるんだ。だが、君はその記憶を失っている」
「私が原因を知っている?」
でも、それは全く思い出せない。
「だが、それは決して誰かに教えてはならない」
「どうして?」
「魔法の力を本当に失うことになるからだ」
「!?」
「正直、君が記憶を失っていて本当に良かったと思っているよ。君だったら良かれと思って喋ってしまうからな。だが、記憶を取り戻せたらそれが現実になるかもしれない」
「だから私を殺そうとした……」
「でも、考えを変えた。君はそれを知ってどう今の世界を見るか? 君は魔法を取り戻す方法を知っている。思い出せないだけだ。だが、君はそれを思い出せたとしても話すことは出来ない。それは君自身、魔法を捨てる行為となるからだ。君はそれを知って何も出来ないと分かる。何もしてやれない。死人は君を襲わせないようにしよう」
「もし、全員が魔法を取り戻せなかったら……」
「全員死人になってもらう」
「そんな! そんな」
「そんな酷いこと、か? これは大事な事なんだ。記憶を失った君には分かるまい」
すると、視界がぼやけ始めた。
「目眩?」
「これは夢だ。だが、現実でもある。君はこの会話の記憶を忘れることはない。さようなら、アリス」
「待って!」
だが、視界は遠ざかり、暗闇に落ちた。
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