11 / 22
第2章 世界の蔓延
06 胡蝶の夢
しおりを挟む
「お前達があれをやったのか!? 何故? 何故関係のない人まで巻き込む?」
金髪の少年は首を横に振った。
「この世に関係のない人なんていない」
「お前らのせいで大勢の人が死んだんだぞ。私の家族も……大切な人も……お前達はそれを奪ったんだ」
「所詮、お前達は運命を都合よくでしか解釈していない。死人を発生させたのは僕達で間違いないが、魔法の消失は僕達とは関係のないことだ」
「なんだって?」
「魔法が失われなければ、死人に怯えもしなかった筈だ? お前のようにこの事態をどうにかしようとする筈だ。魔法はその手助けをするだろう。死人の脅威は抑えられ、ここまでは至らず鎮火した筈だ。そして、いつも通りの平和がやってくる。お前達が考えなければならないことは、何故魔法の消失が起こったのか。それを考えさせる為にも死人の発生は必要不可欠だった」
「どういうこと?」
「魔法が使えない日々が続けば、いずれは魔法を忘れ人の力で、科学で乗り越えようとするだろう。そして、お前達は魔法の消失の究明も諦めただろう。所詮、都合で生きるお前達だ。そんなお前は都合よく自分の幸せを祈ろうとするだろう。神はそんなお前達を見ているし、火宅無常の世界でお前達はどう生きるかと思えば、ただの欲の塊の鬼でしかない。そんなお前達だ、どうせどう騒ぎ立てようがお前達は真実を得ることも出来ないだろう。死人を発生させてから今日、現に何も突き止められなかったじゃないか。それは都合でしか運命を見ていないから真実も遠ざかり、お前達の目の前には真実のない世だけが残される。だが、都合を捨て曇りなき眼でもし見れば、例え火宅無常の世界であっても真実を見つけることが出来ただろう。火宅無常の世界という真実がないとされた世とは今の人では真実をそもそも見つけることは出来ないからだ」
「私には何の話しかさっぱり分からない。でも、これだけは分かる。あんた達は偉そうにそう言うけど、自分達はどうなのさ?」
「僕達は知っている。だから僕達は魔法を使えるようになったんだ。アリス、君もそうだ。だから君も魔法を使えるんだ。だが、君はその記憶を失っている」
「私が原因を知っている?」
でも、それは全く思い出せない。
「だが、それは決して誰かに教えてはならない」
「どうして?」
「魔法の力を本当に失うことになるからだ」
「!?」
「正直、君が記憶を失っていて本当に良かったと思っているよ。君だったら良かれと思って喋ってしまうからな。だが、記憶を取り戻せたらそれが現実になるかもしれない」
「だから私を殺そうとした……」
「でも、考えを変えた。君はそれを知ってどう今の世界を見るか? 君は魔法を取り戻す方法を知っている。思い出せないだけだ。だが、君はそれを思い出せたとしても話すことは出来ない。それは君自身、魔法を捨てる行為となるからだ。君はそれを知って何も出来ないと分かる。何もしてやれない。死人は君を襲わせないようにしよう」
「もし、全員が魔法を取り戻せなかったら……」
「全員死人になってもらう」
「そんな! そんな」
「そんな酷いこと、か? これは大事な事なんだ。記憶を失った君には分かるまい」
すると、視界がぼやけ始めた。
「目眩?」
「これは夢だ。だが、現実でもある。君はこの会話の記憶を忘れることはない。さようなら、アリス」
「待って!」
だが、視界は遠ざかり、暗闇に落ちた。
金髪の少年は首を横に振った。
「この世に関係のない人なんていない」
「お前らのせいで大勢の人が死んだんだぞ。私の家族も……大切な人も……お前達はそれを奪ったんだ」
「所詮、お前達は運命を都合よくでしか解釈していない。死人を発生させたのは僕達で間違いないが、魔法の消失は僕達とは関係のないことだ」
「なんだって?」
「魔法が失われなければ、死人に怯えもしなかった筈だ? お前のようにこの事態をどうにかしようとする筈だ。魔法はその手助けをするだろう。死人の脅威は抑えられ、ここまでは至らず鎮火した筈だ。そして、いつも通りの平和がやってくる。お前達が考えなければならないことは、何故魔法の消失が起こったのか。それを考えさせる為にも死人の発生は必要不可欠だった」
「どういうこと?」
「魔法が使えない日々が続けば、いずれは魔法を忘れ人の力で、科学で乗り越えようとするだろう。そして、お前達は魔法の消失の究明も諦めただろう。所詮、都合で生きるお前達だ。そんなお前は都合よく自分の幸せを祈ろうとするだろう。神はそんなお前達を見ているし、火宅無常の世界でお前達はどう生きるかと思えば、ただの欲の塊の鬼でしかない。そんなお前達だ、どうせどう騒ぎ立てようがお前達は真実を得ることも出来ないだろう。死人を発生させてから今日、現に何も突き止められなかったじゃないか。それは都合でしか運命を見ていないから真実も遠ざかり、お前達の目の前には真実のない世だけが残される。だが、都合を捨て曇りなき眼でもし見れば、例え火宅無常の世界であっても真実を見つけることが出来ただろう。火宅無常の世界という真実がないとされた世とは今の人では真実をそもそも見つけることは出来ないからだ」
「私には何の話しかさっぱり分からない。でも、これだけは分かる。あんた達は偉そうにそう言うけど、自分達はどうなのさ?」
「僕達は知っている。だから僕達は魔法を使えるようになったんだ。アリス、君もそうだ。だから君も魔法を使えるんだ。だが、君はその記憶を失っている」
「私が原因を知っている?」
でも、それは全く思い出せない。
「だが、それは決して誰かに教えてはならない」
「どうして?」
「魔法の力を本当に失うことになるからだ」
「!?」
「正直、君が記憶を失っていて本当に良かったと思っているよ。君だったら良かれと思って喋ってしまうからな。だが、記憶を取り戻せたらそれが現実になるかもしれない」
「だから私を殺そうとした……」
「でも、考えを変えた。君はそれを知ってどう今の世界を見るか? 君は魔法を取り戻す方法を知っている。思い出せないだけだ。だが、君はそれを思い出せたとしても話すことは出来ない。それは君自身、魔法を捨てる行為となるからだ。君はそれを知って何も出来ないと分かる。何もしてやれない。死人は君を襲わせないようにしよう」
「もし、全員が魔法を取り戻せなかったら……」
「全員死人になってもらう」
「そんな! そんな」
「そんな酷いこと、か? これは大事な事なんだ。記憶を失った君には分かるまい」
すると、視界がぼやけ始めた。
「目眩?」
「これは夢だ。だが、現実でもある。君はこの会話の記憶を忘れることはない。さようなら、アリス」
「待って!」
だが、視界は遠ざかり、暗闇に落ちた。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる