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第1章 死人の始まり
01 偽りの幸福
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俺はヤマト。日本生まれ日本育ちの日本人だ。令和になった地球はゆで卵のように茹で上がったかのような猛暑日が続き、皆この暑さにうんざりしていた。このスピードでこのままいけば、地球にいる俺達人間はどうなってしまうんだろうか。
世界が環境問題で揺れ動く中、俺の日常は相変わらず変わらなかった。
ノロノロ台風のせいでホテル泊まりとなった俺は明日の交通状態をパソコンで調べていた。大学生の俺は夏休み期間で一人旅をしていた。友達と呼べる人はいない。知り合いはそれなりにいても、俺の人生は本当に平坦で何かに必死になったり夢中になったり、血反吐を吐くまで何か努力したこともない。勉強だって必死じゃない。それなのに他の連中は大学受験の為に必死になれて。特に受験大国のような韓国や中国のようにその後の一生が変わるかもしれないような国では毒親は勉強しかやらせないんだろう。テレビのバラエティーでたまたま観た光景はまるで洗脳のように感じてしまった。だが、戦いは受験だけではない。入学後も大学生内で成績の新たな戦いが始まり、それを得てようやく卒業できても、社会の競争でまた戦い続けなければならない。これだけ長い戦いを我慢して耐えれば確かにそれだけの対価をその後の一生を得るかもしれないけど、俺はそんな戦いに時期早々に自ら離脱した。諦めと言われようが構わない。俺はそれなりに生き、楽する堕落した人生だが、やや放任主義の家庭に育ったおかげで教育虐待の被害者にならずにそれなりの幸せをつかんでいた。
その一方で歳の近い二十代達は次々と結婚の知らせを耳にし、そのほとんどが職場恋愛だった。マッチング系のアプリはほとんど周囲にはいなかった。俺も結婚願望が強い方ではないし、親も孫はなんだか諦めた感じだった。いくら孫がみたいからと結婚を迫る親ではなかった。その親も離婚を経験し、俺は母子家庭の中で育った。男の方は東京に行くんだとか言って家族を置いて行ってしまった。全く自分勝手な男で、養育費すらまともに支払ったことがなかった。
養育費の問題は社会問題にもなっていて、まさにそれは身近な問題だと思った。
社会問題になる程、この国の男はそれだけ無責任なクソ野郎ばかりだってことなんだろう。そういう俺も男なんだけど。
結婚は幸せではない。夫婦で乗り切る覚悟の誓いなんだと思う。でも、だからこそ結婚願望がなく楽に一人で生きる道を選択してしまうのかもしれない。無論、それだけではないが。自分が一生をパートナーとして選ぶという一生がとても重い。責任もそうだ。それを考えたら俺は情けなくひ弱で臆病な男なんだろう。一生を捧げたいと思えるパートナーに出会えればそんな自分を変えてくれるかもしれないが…… 。
パソコンを閉じた俺は目の疲れを感じた。それはもう日課みたいなもので、デジタル社会が進む世の中で現代人が抱える代償だと思っている。
目の疲れは頭も疲れている可能性がある。俺はそういう時は音楽を聴く。リラックスできる曲だ。昔の頃はよくロックを聴いていたが、今はクラシックも聴くようになって、なんか年寄りみたいだなと自虐する。
窓の外は大雨が打ちつけている。この雨じゃ傘をさしても服がびしゃびしゃに濡れてしまうだろう。俺はベッドで横たわり、コードレスイヤホンを両耳につけ音楽を聴いて過ごした。
ベッドのそばにあるデジタル時計が14時を示した。
ヤマトはまだベッドに横たわりイヤホンから音楽を聴いていた。その部屋でゴソッとトイレの方から音がした。だが、ヤマトは気づいていない。そのヤマトは目を閉じていて、一見したら起きているのか寝ているのか分からない。また、トイレの方から「痛ぁ~」と少女の声がした。
「何ここ?」そう言ってトイレから出てきたのは黒髪のショートボブに丸顔、国の紋章をあらわすエンブレムブローチでとめた赤いマント。革製の茶色いベルトにポケットのある黒の半ズボンに軽装備の軽い鎧の胸当て。つま先無し靴下につま先が出る靴(サンダルと違い靴底の厚みがあってしっかりしており、動きやすい)を履いている。それに武器の小さな剣(子供用の剣で大人用と比べ軽いが頑丈さも威力も劣ってしまうが、小さな剣と侮ってはいけなく本物の剣であることには変わらず斬れ味はある)と肩掛けの鞄を持っていた。
少女は木でできた腕時計を見た。
「残り24時間……」
腕時計の針は問題なく秒針は動いていた。
それから少女はホテルの部屋を見渡す。小さな部屋で奥にベッドがあって窓も見える。外は大雨が降っていた。
ベッドには男が横になっている。大人だ……この部屋はこの男のものか? 男からはいびきのような寝息は聞こえてこない。随分静かだ。男の頭はちょうど後頭部が此方を向いていてまだこちらに気づいていないようだ。
少女は声を出してしまったことに後悔したが、男は微動だにしない様子の為、やはり男は寝ていると踏んで、少女は出口を探した。すぐ隣にもう一つドアがあってそれをゆっくり開けると、そこはお風呂だった。国や世界によってどうやら風呂とか内装が変わってしまうことは何度か世界を跨いできたこともあり、なんだかこの状況にも見慣れてきた。
少女にとってこの世界に留まっていられるのは24時間だけ。時間がくれば自分の元いた世界に戻ってしまう。少女のいる世界では二年前死人が世界を襲った。少女は命の恩人の男の言葉通りその二年間必死に生きた。孤独がまず彼女を襲い、次に空腹が襲った。それから不安も。だが、なんてことはない。そんなことはその前にも経験している。両親を、家族を失った時だ。少女はその時一度一人になった。誰も救いの手を差し伸べてはくれない。そう塞ぎ込んでいたところに、あの明るい手が差し出された。黒人の手だったが、少女には光って見えた。その手を取り、命を繋いだのだった。
あれから時が流れるのも早く、気づけばアリスは10歳となっていた。
その二年でだいぶ変わった。まず、死人が突如としてあの世界から姿を消したのだ。どこへ消えたのか分かっていない。それとその原因もだった。
次に世界に魔法が使えなくなった理由だ。これも解明出来ていない。ただ、何故だかアリスにだけはまだ魔法が使えていた。この魔法のおかげで生き延びられたといってもいい。ただ、その魔法もずっと使えるのか不安に感じ、それが悪夢になることも何度かあった。だから、できるだけ魔法に頼らずとも出来るように火の起こし方や身を守る為に剣術も学んだ。それもこれもあの人との約束を守る為。生きること。アリスは生かされた。その分生きなきゃいけない。そう思うからこそ身につけるべきものを身につけてきた。
アリスはもう一つのドアノブに手をかけゆっくりと音を立てないようにドアを開けた。目の前は廊下だった。明るい照明に通路には幾つものドアが決まった間隔にあった。一瞬、豪邸か城か? と迷ったが、狭い寝室にトイレと風呂までついているとなると集合住宅か、宿泊施設を想像した。
アリスのいた世界とはだいぶ違う。文明は此方の世界が進んでいるようで、まるで未来に来たかのようだ。
「おい、お前誰だ」
アリスはハッとなり剣を抜きながら背後へ振り向いた。
「うわっ!?」
さっきまで寝ていた男だ。いや、寝ていたフリをして油断を誘って様子を見ていたのか? その割には男は身を守るものも身につけていないどころか武器すら持っていない。奴の両手はがら空きだった。
「それ、本物か? なわけないよな……それ、何の冗談? コスプレ?」
男は聞いたことない単語を次々と発する。言語は理解出来るのに、知らない単語があるということは自分の世界にない言葉か名称か…… 。
「動くな」
「動くなって言われてもな……」
男からは剣先を向けられているのに動揺する様子もなく、顔色すら変えていない。男にどんな理由で余裕を構えているのか……もしや、増援を呼んだのか?
アリスの頭の中でいち早くこの場から脱出を試みるか、その男を人質にするか考えた。それは3秒で結論に至った。
アリスは剣先を前に突きだすと男はそれを避けようと自然と後退りする。アリスは前へ進みドアはゆっくりと閉まる。
「君さ、誰だか知らないけど、ここ俺の部屋だよ。いきなり勝手に入ってきて何なんだよ」
俺はホテルの客室にあった雑誌を拾って直ぐ様それを丸めるとそれを横へ振るいアリスの剣をどけた。
「何?」
その場にあるものでこいつは武器にして戦おうというのか? こっちは本物の剣。対してあっちはただの本だというのに。
男は剣を持つアリスの手首を掴むと、力強くでアリスを押し倒した。床に倒れ込む少女。その上を男は体重をかけ床に抑えつけた。
「何の真似だ? いくら子供でもその歳ならしていいことと悪いことぐらい分かるだろ?」
「クッ……離せ」
「おい、まだ抵抗するのか?」
突如、少女の黒色の瞳が緑色に変色した。
「え?」
ヤマトは60キロ以上ある自分の体が宙に浮き、気づいたら天井にぶつかって床に落下した。
「うへっ……」
少女は寸前で男から避け立ち上がると剣を再び男へ向けた。
「なんだ今の」
「動くな」
「やめろ」
男は少女の剣を手で振り払った。その際、手の甲に浅い傷が出来た。
「やっぱりそれ本物かよ!?」
男はようやく驚いた。まさか、本物の剣と偽物の区別も出来ないのか? そっちの方が驚きだった。
「なんなんだよ……コスプレじゃないのかよ」
「コスプレって何?」
「は? コスプレって」
ヤマトは説明に少し困惑した。コスプレを知らない人に遭遇したことがないのもそうだが、当然コスプレの意味を説明するなんてしないもんだから逆に何て言ったらいいのか困った。
普段当たり前のように聞き慣れ使ってきた言葉なのに何でパッと出てこないんだろう。
「ああ……コスプレってのはだな、つまり……キャラになりきるって感じかな」
何で武器突きつけられながらコスプレについてコスプレみたいな格好をしている謎の少女に説明してるんだろうか。
「キャラって何だ?」
「ちょっと待て。そっちの質問に答えたんだからこっちの質問にも答えてくれよ」
すると、少女は不思議なことを言われたみたいな顔の反応をした。
「なんで意味分からない顔してるの?」
「状況は私の方が有利。どうしてあなたが質問出来る立場になるわけ?」
「うっ……確かに仰る通りです……ぐうの音も出ません」
「お前の仲間は?」
「仲間? 友達のこと? いないいない」
「いない? 友達いないの? ゼロ?」
「ゼロ、ゼロ。 ……なんだか言葉にしてみると悲しくなってきた」
「嘘をつくな」
「嘘じゃねぇよ。友達は小中高校限定なんだよ」
「本当に一人?」
「そう」
「一人で住んでるの?」
「いや、住んではいない。ここはホテルで俺は宿泊している。大丈夫かお前?」
「宿泊……そう。家族は一緒じゃないのか?」
「ああ。俺は一人旅していて途中台風で足止めされてたまたま空いていたこの部屋に宿泊できたってところだ」
「台風?」
「なぁ……何の冗談だ、さっきから。何かの演技か悪ふざけか? その割にはたちが悪いな」
「演技なんかじゃない」
「演技じゃないって……だったら何だよ。あまりからかうなら警察に電話するぞ」
「私は別世界から来た」
「べ、別世界?」
「こことは違う世界」
「いや、意味を聞いてるんじゃなくてさ。そんなことぐらいは分かるよ。そうじゃなくて、ガチで言ってるの?」
「ガチって?」
ヤマトは面倒そうに「だからマジかってことだよ」と言い直したが少女は更に「マジって何?」と言われ、思わずため息が漏れそうになった。
「いや、だからさ……本気で言ってるのかってことだよ」
「なんだ、最初からそう言ってよ。変な言葉使わないで。分からないから」
「分からないって……日本人だろ? 分からないのか?」
「私は日本人じゃないし、さっきも言ったけどこの世界の人じゃないから」
「ガチなんだ……」
「またガチって言った!」
「もう意味教えたんだからいいだろ」
「ダメ」
遂にヤマトはため息をついた。
「それよりこの世界について教えて」
「本当に言ってるんだな?」
「そう」
「ここは地球。星が青い。そして、ここは日本。島国」
「普通に説明して」
「いちいち注文の多い女だなぁ!」
「なんでそんなことで怒るの?」
「お前、周りからウザがられたりしないのか?」
「ウザがられるって?」
「ああ……言い直す。いや、今のは忘れてくれ」
「それじゃちゃんと説明して」
「その前に俺もあんたのことについて確証しておきたいことがある。あんたが日本人じゃない別世界の住人だとしてだ、何故日本語が喋れる?」
「それは魔法を使ってるから」
「魔法?」
「さっきあなたを浮かしてみせたでしょ?」
「あれがか」
呪文も杖も使っていなかったが……それに見た目は魔法使いって感じじゃない。
「それじゃあれか、魔法でこっちに来たと?」
アリスは頷いた。
「それじゃ魔法でとっととお帰り下さい。是非お願いします。道案内は俺じゃなく誰かに頼って下さい」
「それは無理」
「なんで!!」
「あと23時間経過しないと元の世界には戻れないから」
「まるでお伽噺みたいな設定だな。いや、あれは時計の針が12時だったか……」
「それに、この世界に来た目的を果たさなきゃ」
「目的? 何だそれは」
「何で教えなきゃいけないわけ?」
「理由は分からないがそのタイムリミットのある中で目的を果たさなきゃならないんだろ? 地球も知らないあんた一人で果たせそうなのか?」
「協力してくれるの?」
随分と純粋だな。そんな簡単に信じるなんて。
「だったら状況を説明してくれ。そしたら、こっちもあんたの知りたいことを教えるよ」
「分かった。それと、あんたじゃない。私はアリス」
「アリス?」
「なに?」
「いや……見た目アジア……日本人なのに名前がさ、意外だったから。俺はヤマトだ」
「ヤマト、宜しく」
「あ、ああ……」
信じ込むの早すぎだろ。
話しを聞き終えたヤマトは腕を組んだ。
「だいたいは分かった。多分だけどな。つまり、アリスの世界は今大変なことになって皆困っているってことだな」
「ざっくりし過ぎ。でも、まぁ間違ってはいないよ」
「だろ? それでアリスは魔法のコンパスで世界をあちこち旅しながらその原因を一人で調べていると。その手掛かりがこの世界にあるかもしれないんだな」
「そう」
アリスはそう言いながら鞄からその魔法のコンパスを見せた。
「確かに普通のコンパスじゃないな」
「針で行きたい世界へ絵文字を合わせる。でも、今はダメ」
「残り23時間しないと使えないわけだな。コンパスを見るに世界は12あるんだな。うち、一つは地球で、もう一つはアリスの世界か」
コンパスを時計として考えると、12時のところに地球があり、6時のところにアリスの世界がある。
「人界はその二つしかない」
「人界ってのは人がいる世界ってことだな?」
「うん。あとの世界は生き物はいたりいなかったり」
「なる程。でも、なんで地球なんだ?」
「私の世界の方の南極の空で別世界が映ったことがあって、そのおかしな現象が起きた直後に魔法が各地で使えなくなったの。何の関係があるかは分からないけど、その空に映ったのは他所の人界だった」
「それで地球というわけか」
少女は頷いた。
「ヤマトが見せてくれた地球の南極は私達の南極はほぼ同じだった。二つの人界は似通っている部分が多いのかもしれない」
「それが原因の一つかもしれないと?」
「そこまでは……」
「それで、他に何か手掛かりはありそうなのか? いくらなんでも南極へ一人で行くのは無理だぞ」
「それは分かってる。一番いいのは、そちらの世界で何かきっかけになるような世界規模の変化が起きていれば、手掛かりになりそうなんだけど」
「世界の変化はさっき教えた通りさ。戦争とか地球温暖化による異常気象とか。だが、人間の歴史を振り返れば地球温暖化もここ最近の問題じゃない。ずっと前から言われていたことだし、内戦や紛争を含めればその前からになる」
「地球も色々あるだ……」
「そっちもな」
「でも、驚いた。こっちの世界では魔法がないのが当たり前なんだね」
「魔法なんてフィクションだけの世界だと思っていたからな。現実は魔法に頼らず頭と腕でなんとかするしかない。そりゃうまくいかないことの方が多いし、皆それぞれ色んな問題を抱えている」
「私の世界も魔法を失ってからは似たような感じかな。でも、この世界程の技術は全然ない」
「もし、このまま魔法を取り戻せなかったらどうするつもりだ?」
「……分からない。なんとかしたいと思っているけど、その可能性の方が高いんじゃないかってここ最近は思ってる」
「そっか……ならさ、まぁ一つの考え方だと思って聞いて欲しいんだけどさ、もし、魔法が取り戻せないと分かったらこの地球にある技術をそっちの世界に取り込んだらどうだ? それでアリスが発明したことにして特許とってバンバン稼いで大富豪になる。そんで色んな権力を持って社会の裏側で支配するの」
「なんだかイヤ……」
「まぁ……半分冗談だけどさ」
「冗談に聞こえなかったよ」
「忘れてくれ」
「私は別に沢山お金が欲しいわけじゃないの。私の幸せはお金じゃないから」
「へぇ……それじゃアリスの幸せって何?」
「魔法に触れること。だから既に私は幸せ。でも、それがいつ無くなるかが不安」
「魔法って結局何?」
「神を感じ、神に触れることで力を借りる行為」
ヤマトは思わず苦笑した。
「難しいこと言うね。つまり、神はいるってこと? その神の力を借りたのが魔法?」
「そう。どの世界にも神はいる」
ヤマトは天を指差した。女子は首を横に振った。
「神は私達のそばにいる。火や水や風や……それから悪い神も」
「悪い神?」
「この世界にだって見えないだけでいる」
「証明出来る?」
「それは無理。感じようと思わなきゃ感じられないし、そこにいると思わなきゃ気づけない」
「思い込みによる錯覚とかじゃなくて?」
「私も説明が難しい。正直、最初は無意識に触れて魔法を使っていたから」
「神がいなくなっていないなら、君以外魔法が使えなくなるのはおかしいんじゃないか」
「そう。その筈……でも、皆神を感じるすべを忘れてしまった。理由は分からない。私もそうはなりたくない」
「それじゃ、今も魔法を使えるんだよね?」
アリスは頷いた。
「なら、ちょっとやって見せてよ」
「イヤ。この力は見せびらかすものじゃない」
それは神の力を借りているからなのだろうか。
「それより」
「分かってる。地球のことについて色々知りたいんだろ? それならとっておきな物があるぞ」
「?」
「地球の科学を見せよう」
そう言ってタブレットを出し画面をつけた。
あれから何時間が経過したんだろうか……あの子はずっとタブレットを離さずアニメやドラマにすっかり夢中になっていた。これでゲームまで教えたらアリスはすっかりこの世界の子供とたいして変わらなくなるだろう。
しかし、未だ信じられない。異世界から突如現れ、その子は魔法が使えるときた。その話しはまるでファンタジー小説に出てくるような設定で、どこか出来過ぎている気もしなくはない。とはいえ、アリスがどこの子かも分からない。俺を吹き飛ばしたアレも魔法だと言われたらそうかもしれない。俺もアリスに教われば魔法は使えたりするのだろうか? 俺とアリスに違いがあるようには見えないが…… 。
にしてもこの子、タブレットに夢中で目的を忘れていないか?
「おい、いいのかこんなことしてて。もう6時間は過ぎたぞ」
「もうそんなに!?」
「ご飯も食べといてよく言う……それで、何か分かったのか?」
アリスは首を横に振った。
「ただ楽しんでただけじゃないか。どうするんだこれから」
その時だった。部屋のチャイムが鳴ったのだ。
マズい! と思った。俺は一人で部屋をとっている。それに自分の子でない女の子とホテルに二人だけでいたら完全に疑われてしまう。どんなに説明しようとしても誰も信じてもらえるわけない。想像出来るのは通報を受け駆けつけた警察達に囲まれ署へ連行される光景だ。
「おい、アリス。音を消せ。あと、隠れていろ。絶対出てくるな」
「分かった」
またチャイムが鳴った。ヤマトは「はーい」と言ってドアののぞき窓で外を見た。ドアの前に立っていたのはホテルマンだった。俺は念のためにチェーンをかけドアを開けた。その時だった。ホテルマンは変貌し大きな口を開けるとドアを更に開けようとしてチェーンが引っ張られ、一発でチェーンが引き千切られた。
「な、なんだよいったい!?」
俺は思わず腰を抜かし尻もちをついた。その頭上をアリスが飛んだ。剣を抜いたアリスはホテルマンの首を突き刺した。ホテルマンの首からは大量の赤い血が噴水のように吹き出た。
「お、おい……」
「ネクロマンサーだ。これは死人だ」
「死人……ってことは!?」
「この世界にネクロマンサーがいる」
「で、でも……それまで普通だったんだぞ!?」
「私に気づいたんだ。だからこの部屋へ真っ直ぐ現れたんだ」
「どうするんだよ!? いや、早くここから逃げよう」
「いや、無理だ」
ドアノブを離さないまま部屋を出て通路を見ると、右も左も死人が数体此方へ猛ダッシュしていた。アリスはホテルマンを蹴飛ばしドアを閉めた。直後、オートロックのドアをこじ開けようとドアノブをガチャガチャする音が部屋中に響き渡る。
まるでゾンビ映画だ。
「他に出口は?」
「そこだけだ」
アリスは少し考え込んだ。それを見てヤマトは「魔法でなんとかならないのか」と訊いた。
「連中を倒すなら魔法より剣の方が倒せる。連中を倒しきるには火力が必死なんだ」
「そんなことをしたらホテルが火事になる」
直後、二人の後ろでドン! と音がした。振り返ると窓にカラスが激突し、窓にヒビが入っていた。
「カラスが窓に激突するなんてそうないぞ……」
「ネクロマンサーだ……生きたまま死人へと変えられたんだ」
「普通、死んで蘇ったのがゾンビじゃないのか!?」
すると今度は、トイレの方から水が流る音がした。風呂場から突然シャワーが。洗面台からは蛇口をひねってもいないのに水は勝手に全開に流れ、部屋のテレビが勝手に電源が入り音量マックスでバラエティー番組が流れ出した。
「なんなんだ!? これもネクロマンサーとかなのか?」
「いや……こんなのは知らない」
ヤマトはリモコンを拾い電源を消そうとするもテレビは全く反応しない。
「どうなってるんだ……」
ドアの方では数人がかりでドアを破ろうとドン、ドンと音がし、今にも破られそうだ。
「おい、どうにかしてくれ」
アリスは剣を構える。
「おい、まさかそれで戦うって言うんじゃないだろうな?」
「でなきゃやられるだけ」
「冗談だろ!?」
部屋の照明がカチカチと点滅しだす。床が急にぐらっと揺れ、右へ左へと横揺れを起こし、部屋にある物が崩れ、壁に掛けてあった絵画が落ちる。それは大きな地震だ。壁や天井のあらゆる箇所から亀裂が走り、どんどん状況はエスカレートしていく。
「これ、単なる死人ってわけでもなさそうだぞ」
まるで、呪いだ。呪いに襲われているみたいだ。
パリン!
部屋の窓ガラスが割れ、カラスが部屋に入ってきた。アリスは瞬時に反応し体の向きをねじりながら半回転しつつ剣を振り上げ綺麗にそのカラスの首を胴体と切り離した。頭は壁に激突し、その音が暫くヤマトの耳に残った。
「まるで悪夢だ」
「これは現実だ」
こんな魔法とかゾンビとか呪いだとか超常現象とか信じず生きてきたというのに、突然遭遇し体験してしまうと、まるで自分は別世界に本当に踏み入れてしまったかのようだ。それは半分巻き込まれた事故のようなもの。悲運。何故俺なのか? この運命をヤマトは呪った。
すると、今度はバーン! と大きな音を立てて部屋を守っていたドアは部屋の中へ倒れた。
「俺の知るゾンビはそんな怪力使わないぞ」
「ゾンビじゃない。死人だ」
「何が違うって言うんだ!」
「ゾンビは助からない。でも、死人なら術者を倒せばまだ救える」
「それじゃ……殺しちゃまずいんじゃないのか?」
「殺さなきゃ私達が殺られる」
殺らなきゃ殺られる……でも、その為には人を殺すんだろ?
「自分の命と目の前の命とどっちが大事なの?」
「そんなの……」
そんなの自分の命に決まってるだろ。だからって……殺すのかよ…… 。
「ヤマト、あなたはどうする? 殺せるの? 目の前の敵を」
死人になったホテルマンは大きな口を開いてアリスに襲いかかっている。アリスは掌を突きだすとそこから突風が吹き出てホテルマンとその後ろにいた2体の死人を巻き込んで通路へと飛ばした。
あのホテルマンだって今日ロビーで見掛けていた。あの時は普通だった。それが今では豹変し見た目はゾンビだ。ゾンビ映画やゲームなら倒して問題はないから、抵抗もなかったのに、まだ人間に戻れる可能性があると言われると、全く意味合いが違ってしまう。それはゾンビというより、悪魔に憑依された人だ。
「魔法でそのネクロマンサーの呪いは解けないのかよ。エクソシストみたいによ」
「それができたらとっくにやってる」
吹き飛ばされた3体の死人は起き上がると再びアリス達に襲いかかった。
アリスは剣を構える。
「やめろ!」
ヤマトは叫んだ。
どうしてだろう。アリスのしようとすることは間違いではないのに何故自分は咄嗟に止めようとしたんだろう…… 。
アリスはヤマトの忠告を無視して目の前の死人を突き刺した。剣はホテルマンの体を貫いて、そこから赤い血が流れ出る。
「ヤマト……私は生きる為にすべきことをしている。ヤマトもそうしろ」
生きる為に戦う。それはとても血生臭く、自分の知っている世界ではなかった。だが、世界は本当は広く、そういった出来事は地球のどこかでも起こっていたことで、自分はそれに目も向けず他人事のようにすませ、知らないふりをし続けた。知らぬが仏。知らないことが幸せである、そう思い込むことで自分は幸福であろうとした。
偽りの幸福だと知らずに。
結局、真実は隠し通せない。悪いことをすればいずれバレるように、目をそらした不幸もやがでかたちを変えて自分に降りかかる。例えば、世界の全員が他人を助け合えれば助けを貰えない人がいなくなるように、その逆もまた存在する。
相対の幸福、他人と比べ自分が幸せと感じても、虚しいものだと気づいてしまったらそれは幸福にはならない。
生きるとは、昔から血生臭いものだった。自分達はその歴史の上に立っている。生きるとは、血生臭いものだった。自分はそれを忘れ、また忘れたいと思っていた。
過去、歴史的偉人がこの血生臭い世界を終わらせ平和を求めた。だが、この現代でも誰かが傷を負い、そして死んでいる。ただ、昔より複雑に世の中が変化したことでそれに気づきにくくなった。世間が、人が、それを遠ざけたからだ。だからこそ、社会の闇は深くなり、より深刻になっていった。
自分が直視している光景、これは現実だ。今、起きていることは夢ではない。
アリスによって斬られた死人の血が飛び散り、それがヤマトの顔に当たる。ヤマトはそれを手で拭った。その手からは血の臭いがした。
世界が環境問題で揺れ動く中、俺の日常は相変わらず変わらなかった。
ノロノロ台風のせいでホテル泊まりとなった俺は明日の交通状態をパソコンで調べていた。大学生の俺は夏休み期間で一人旅をしていた。友達と呼べる人はいない。知り合いはそれなりにいても、俺の人生は本当に平坦で何かに必死になったり夢中になったり、血反吐を吐くまで何か努力したこともない。勉強だって必死じゃない。それなのに他の連中は大学受験の為に必死になれて。特に受験大国のような韓国や中国のようにその後の一生が変わるかもしれないような国では毒親は勉強しかやらせないんだろう。テレビのバラエティーでたまたま観た光景はまるで洗脳のように感じてしまった。だが、戦いは受験だけではない。入学後も大学生内で成績の新たな戦いが始まり、それを得てようやく卒業できても、社会の競争でまた戦い続けなければならない。これだけ長い戦いを我慢して耐えれば確かにそれだけの対価をその後の一生を得るかもしれないけど、俺はそんな戦いに時期早々に自ら離脱した。諦めと言われようが構わない。俺はそれなりに生き、楽する堕落した人生だが、やや放任主義の家庭に育ったおかげで教育虐待の被害者にならずにそれなりの幸せをつかんでいた。
その一方で歳の近い二十代達は次々と結婚の知らせを耳にし、そのほとんどが職場恋愛だった。マッチング系のアプリはほとんど周囲にはいなかった。俺も結婚願望が強い方ではないし、親も孫はなんだか諦めた感じだった。いくら孫がみたいからと結婚を迫る親ではなかった。その親も離婚を経験し、俺は母子家庭の中で育った。男の方は東京に行くんだとか言って家族を置いて行ってしまった。全く自分勝手な男で、養育費すらまともに支払ったことがなかった。
養育費の問題は社会問題にもなっていて、まさにそれは身近な問題だと思った。
社会問題になる程、この国の男はそれだけ無責任なクソ野郎ばかりだってことなんだろう。そういう俺も男なんだけど。
結婚は幸せではない。夫婦で乗り切る覚悟の誓いなんだと思う。でも、だからこそ結婚願望がなく楽に一人で生きる道を選択してしまうのかもしれない。無論、それだけではないが。自分が一生をパートナーとして選ぶという一生がとても重い。責任もそうだ。それを考えたら俺は情けなくひ弱で臆病な男なんだろう。一生を捧げたいと思えるパートナーに出会えればそんな自分を変えてくれるかもしれないが…… 。
パソコンを閉じた俺は目の疲れを感じた。それはもう日課みたいなもので、デジタル社会が進む世の中で現代人が抱える代償だと思っている。
目の疲れは頭も疲れている可能性がある。俺はそういう時は音楽を聴く。リラックスできる曲だ。昔の頃はよくロックを聴いていたが、今はクラシックも聴くようになって、なんか年寄りみたいだなと自虐する。
窓の外は大雨が打ちつけている。この雨じゃ傘をさしても服がびしゃびしゃに濡れてしまうだろう。俺はベッドで横たわり、コードレスイヤホンを両耳につけ音楽を聴いて過ごした。
ベッドのそばにあるデジタル時計が14時を示した。
ヤマトはまだベッドに横たわりイヤホンから音楽を聴いていた。その部屋でゴソッとトイレの方から音がした。だが、ヤマトは気づいていない。そのヤマトは目を閉じていて、一見したら起きているのか寝ているのか分からない。また、トイレの方から「痛ぁ~」と少女の声がした。
「何ここ?」そう言ってトイレから出てきたのは黒髪のショートボブに丸顔、国の紋章をあらわすエンブレムブローチでとめた赤いマント。革製の茶色いベルトにポケットのある黒の半ズボンに軽装備の軽い鎧の胸当て。つま先無し靴下につま先が出る靴(サンダルと違い靴底の厚みがあってしっかりしており、動きやすい)を履いている。それに武器の小さな剣(子供用の剣で大人用と比べ軽いが頑丈さも威力も劣ってしまうが、小さな剣と侮ってはいけなく本物の剣であることには変わらず斬れ味はある)と肩掛けの鞄を持っていた。
少女は木でできた腕時計を見た。
「残り24時間……」
腕時計の針は問題なく秒針は動いていた。
それから少女はホテルの部屋を見渡す。小さな部屋で奥にベッドがあって窓も見える。外は大雨が降っていた。
ベッドには男が横になっている。大人だ……この部屋はこの男のものか? 男からはいびきのような寝息は聞こえてこない。随分静かだ。男の頭はちょうど後頭部が此方を向いていてまだこちらに気づいていないようだ。
少女は声を出してしまったことに後悔したが、男は微動だにしない様子の為、やはり男は寝ていると踏んで、少女は出口を探した。すぐ隣にもう一つドアがあってそれをゆっくり開けると、そこはお風呂だった。国や世界によってどうやら風呂とか内装が変わってしまうことは何度か世界を跨いできたこともあり、なんだかこの状況にも見慣れてきた。
少女にとってこの世界に留まっていられるのは24時間だけ。時間がくれば自分の元いた世界に戻ってしまう。少女のいる世界では二年前死人が世界を襲った。少女は命の恩人の男の言葉通りその二年間必死に生きた。孤独がまず彼女を襲い、次に空腹が襲った。それから不安も。だが、なんてことはない。そんなことはその前にも経験している。両親を、家族を失った時だ。少女はその時一度一人になった。誰も救いの手を差し伸べてはくれない。そう塞ぎ込んでいたところに、あの明るい手が差し出された。黒人の手だったが、少女には光って見えた。その手を取り、命を繋いだのだった。
あれから時が流れるのも早く、気づけばアリスは10歳となっていた。
その二年でだいぶ変わった。まず、死人が突如としてあの世界から姿を消したのだ。どこへ消えたのか分かっていない。それとその原因もだった。
次に世界に魔法が使えなくなった理由だ。これも解明出来ていない。ただ、何故だかアリスにだけはまだ魔法が使えていた。この魔法のおかげで生き延びられたといってもいい。ただ、その魔法もずっと使えるのか不安に感じ、それが悪夢になることも何度かあった。だから、できるだけ魔法に頼らずとも出来るように火の起こし方や身を守る為に剣術も学んだ。それもこれもあの人との約束を守る為。生きること。アリスは生かされた。その分生きなきゃいけない。そう思うからこそ身につけるべきものを身につけてきた。
アリスはもう一つのドアノブに手をかけゆっくりと音を立てないようにドアを開けた。目の前は廊下だった。明るい照明に通路には幾つものドアが決まった間隔にあった。一瞬、豪邸か城か? と迷ったが、狭い寝室にトイレと風呂までついているとなると集合住宅か、宿泊施設を想像した。
アリスのいた世界とはだいぶ違う。文明は此方の世界が進んでいるようで、まるで未来に来たかのようだ。
「おい、お前誰だ」
アリスはハッとなり剣を抜きながら背後へ振り向いた。
「うわっ!?」
さっきまで寝ていた男だ。いや、寝ていたフリをして油断を誘って様子を見ていたのか? その割には男は身を守るものも身につけていないどころか武器すら持っていない。奴の両手はがら空きだった。
「それ、本物か? なわけないよな……それ、何の冗談? コスプレ?」
男は聞いたことない単語を次々と発する。言語は理解出来るのに、知らない単語があるということは自分の世界にない言葉か名称か…… 。
「動くな」
「動くなって言われてもな……」
男からは剣先を向けられているのに動揺する様子もなく、顔色すら変えていない。男にどんな理由で余裕を構えているのか……もしや、増援を呼んだのか?
アリスの頭の中でいち早くこの場から脱出を試みるか、その男を人質にするか考えた。それは3秒で結論に至った。
アリスは剣先を前に突きだすと男はそれを避けようと自然と後退りする。アリスは前へ進みドアはゆっくりと閉まる。
「君さ、誰だか知らないけど、ここ俺の部屋だよ。いきなり勝手に入ってきて何なんだよ」
俺はホテルの客室にあった雑誌を拾って直ぐ様それを丸めるとそれを横へ振るいアリスの剣をどけた。
「何?」
その場にあるものでこいつは武器にして戦おうというのか? こっちは本物の剣。対してあっちはただの本だというのに。
男は剣を持つアリスの手首を掴むと、力強くでアリスを押し倒した。床に倒れ込む少女。その上を男は体重をかけ床に抑えつけた。
「何の真似だ? いくら子供でもその歳ならしていいことと悪いことぐらい分かるだろ?」
「クッ……離せ」
「おい、まだ抵抗するのか?」
突如、少女の黒色の瞳が緑色に変色した。
「え?」
ヤマトは60キロ以上ある自分の体が宙に浮き、気づいたら天井にぶつかって床に落下した。
「うへっ……」
少女は寸前で男から避け立ち上がると剣を再び男へ向けた。
「なんだ今の」
「動くな」
「やめろ」
男は少女の剣を手で振り払った。その際、手の甲に浅い傷が出来た。
「やっぱりそれ本物かよ!?」
男はようやく驚いた。まさか、本物の剣と偽物の区別も出来ないのか? そっちの方が驚きだった。
「なんなんだよ……コスプレじゃないのかよ」
「コスプレって何?」
「は? コスプレって」
ヤマトは説明に少し困惑した。コスプレを知らない人に遭遇したことがないのもそうだが、当然コスプレの意味を説明するなんてしないもんだから逆に何て言ったらいいのか困った。
普段当たり前のように聞き慣れ使ってきた言葉なのに何でパッと出てこないんだろう。
「ああ……コスプレってのはだな、つまり……キャラになりきるって感じかな」
何で武器突きつけられながらコスプレについてコスプレみたいな格好をしている謎の少女に説明してるんだろうか。
「キャラって何だ?」
「ちょっと待て。そっちの質問に答えたんだからこっちの質問にも答えてくれよ」
すると、少女は不思議なことを言われたみたいな顔の反応をした。
「なんで意味分からない顔してるの?」
「状況は私の方が有利。どうしてあなたが質問出来る立場になるわけ?」
「うっ……確かに仰る通りです……ぐうの音も出ません」
「お前の仲間は?」
「仲間? 友達のこと? いないいない」
「いない? 友達いないの? ゼロ?」
「ゼロ、ゼロ。 ……なんだか言葉にしてみると悲しくなってきた」
「嘘をつくな」
「嘘じゃねぇよ。友達は小中高校限定なんだよ」
「本当に一人?」
「そう」
「一人で住んでるの?」
「いや、住んではいない。ここはホテルで俺は宿泊している。大丈夫かお前?」
「宿泊……そう。家族は一緒じゃないのか?」
「ああ。俺は一人旅していて途中台風で足止めされてたまたま空いていたこの部屋に宿泊できたってところだ」
「台風?」
「なぁ……何の冗談だ、さっきから。何かの演技か悪ふざけか? その割にはたちが悪いな」
「演技なんかじゃない」
「演技じゃないって……だったら何だよ。あまりからかうなら警察に電話するぞ」
「私は別世界から来た」
「べ、別世界?」
「こことは違う世界」
「いや、意味を聞いてるんじゃなくてさ。そんなことぐらいは分かるよ。そうじゃなくて、ガチで言ってるの?」
「ガチって?」
ヤマトは面倒そうに「だからマジかってことだよ」と言い直したが少女は更に「マジって何?」と言われ、思わずため息が漏れそうになった。
「いや、だからさ……本気で言ってるのかってことだよ」
「なんだ、最初からそう言ってよ。変な言葉使わないで。分からないから」
「分からないって……日本人だろ? 分からないのか?」
「私は日本人じゃないし、さっきも言ったけどこの世界の人じゃないから」
「ガチなんだ……」
「またガチって言った!」
「もう意味教えたんだからいいだろ」
「ダメ」
遂にヤマトはため息をついた。
「それよりこの世界について教えて」
「本当に言ってるんだな?」
「そう」
「ここは地球。星が青い。そして、ここは日本。島国」
「普通に説明して」
「いちいち注文の多い女だなぁ!」
「なんでそんなことで怒るの?」
「お前、周りからウザがられたりしないのか?」
「ウザがられるって?」
「ああ……言い直す。いや、今のは忘れてくれ」
「それじゃちゃんと説明して」
「その前に俺もあんたのことについて確証しておきたいことがある。あんたが日本人じゃない別世界の住人だとしてだ、何故日本語が喋れる?」
「それは魔法を使ってるから」
「魔法?」
「さっきあなたを浮かしてみせたでしょ?」
「あれがか」
呪文も杖も使っていなかったが……それに見た目は魔法使いって感じじゃない。
「それじゃあれか、魔法でこっちに来たと?」
アリスは頷いた。
「それじゃ魔法でとっととお帰り下さい。是非お願いします。道案内は俺じゃなく誰かに頼って下さい」
「それは無理」
「なんで!!」
「あと23時間経過しないと元の世界には戻れないから」
「まるでお伽噺みたいな設定だな。いや、あれは時計の針が12時だったか……」
「それに、この世界に来た目的を果たさなきゃ」
「目的? 何だそれは」
「何で教えなきゃいけないわけ?」
「理由は分からないがそのタイムリミットのある中で目的を果たさなきゃならないんだろ? 地球も知らないあんた一人で果たせそうなのか?」
「協力してくれるの?」
随分と純粋だな。そんな簡単に信じるなんて。
「だったら状況を説明してくれ。そしたら、こっちもあんたの知りたいことを教えるよ」
「分かった。それと、あんたじゃない。私はアリス」
「アリス?」
「なに?」
「いや……見た目アジア……日本人なのに名前がさ、意外だったから。俺はヤマトだ」
「ヤマト、宜しく」
「あ、ああ……」
信じ込むの早すぎだろ。
話しを聞き終えたヤマトは腕を組んだ。
「だいたいは分かった。多分だけどな。つまり、アリスの世界は今大変なことになって皆困っているってことだな」
「ざっくりし過ぎ。でも、まぁ間違ってはいないよ」
「だろ? それでアリスは魔法のコンパスで世界をあちこち旅しながらその原因を一人で調べていると。その手掛かりがこの世界にあるかもしれないんだな」
「そう」
アリスはそう言いながら鞄からその魔法のコンパスを見せた。
「確かに普通のコンパスじゃないな」
「針で行きたい世界へ絵文字を合わせる。でも、今はダメ」
「残り23時間しないと使えないわけだな。コンパスを見るに世界は12あるんだな。うち、一つは地球で、もう一つはアリスの世界か」
コンパスを時計として考えると、12時のところに地球があり、6時のところにアリスの世界がある。
「人界はその二つしかない」
「人界ってのは人がいる世界ってことだな?」
「うん。あとの世界は生き物はいたりいなかったり」
「なる程。でも、なんで地球なんだ?」
「私の世界の方の南極の空で別世界が映ったことがあって、そのおかしな現象が起きた直後に魔法が各地で使えなくなったの。何の関係があるかは分からないけど、その空に映ったのは他所の人界だった」
「それで地球というわけか」
少女は頷いた。
「ヤマトが見せてくれた地球の南極は私達の南極はほぼ同じだった。二つの人界は似通っている部分が多いのかもしれない」
「それが原因の一つかもしれないと?」
「そこまでは……」
「それで、他に何か手掛かりはありそうなのか? いくらなんでも南極へ一人で行くのは無理だぞ」
「それは分かってる。一番いいのは、そちらの世界で何かきっかけになるような世界規模の変化が起きていれば、手掛かりになりそうなんだけど」
「世界の変化はさっき教えた通りさ。戦争とか地球温暖化による異常気象とか。だが、人間の歴史を振り返れば地球温暖化もここ最近の問題じゃない。ずっと前から言われていたことだし、内戦や紛争を含めればその前からになる」
「地球も色々あるだ……」
「そっちもな」
「でも、驚いた。こっちの世界では魔法がないのが当たり前なんだね」
「魔法なんてフィクションだけの世界だと思っていたからな。現実は魔法に頼らず頭と腕でなんとかするしかない。そりゃうまくいかないことの方が多いし、皆それぞれ色んな問題を抱えている」
「私の世界も魔法を失ってからは似たような感じかな。でも、この世界程の技術は全然ない」
「もし、このまま魔法を取り戻せなかったらどうするつもりだ?」
「……分からない。なんとかしたいと思っているけど、その可能性の方が高いんじゃないかってここ最近は思ってる」
「そっか……ならさ、まぁ一つの考え方だと思って聞いて欲しいんだけどさ、もし、魔法が取り戻せないと分かったらこの地球にある技術をそっちの世界に取り込んだらどうだ? それでアリスが発明したことにして特許とってバンバン稼いで大富豪になる。そんで色んな権力を持って社会の裏側で支配するの」
「なんだかイヤ……」
「まぁ……半分冗談だけどさ」
「冗談に聞こえなかったよ」
「忘れてくれ」
「私は別に沢山お金が欲しいわけじゃないの。私の幸せはお金じゃないから」
「へぇ……それじゃアリスの幸せって何?」
「魔法に触れること。だから既に私は幸せ。でも、それがいつ無くなるかが不安」
「魔法って結局何?」
「神を感じ、神に触れることで力を借りる行為」
ヤマトは思わず苦笑した。
「難しいこと言うね。つまり、神はいるってこと? その神の力を借りたのが魔法?」
「そう。どの世界にも神はいる」
ヤマトは天を指差した。女子は首を横に振った。
「神は私達のそばにいる。火や水や風や……それから悪い神も」
「悪い神?」
「この世界にだって見えないだけでいる」
「証明出来る?」
「それは無理。感じようと思わなきゃ感じられないし、そこにいると思わなきゃ気づけない」
「思い込みによる錯覚とかじゃなくて?」
「私も説明が難しい。正直、最初は無意識に触れて魔法を使っていたから」
「神がいなくなっていないなら、君以外魔法が使えなくなるのはおかしいんじゃないか」
「そう。その筈……でも、皆神を感じるすべを忘れてしまった。理由は分からない。私もそうはなりたくない」
「それじゃ、今も魔法を使えるんだよね?」
アリスは頷いた。
「なら、ちょっとやって見せてよ」
「イヤ。この力は見せびらかすものじゃない」
それは神の力を借りているからなのだろうか。
「それより」
「分かってる。地球のことについて色々知りたいんだろ? それならとっておきな物があるぞ」
「?」
「地球の科学を見せよう」
そう言ってタブレットを出し画面をつけた。
あれから何時間が経過したんだろうか……あの子はずっとタブレットを離さずアニメやドラマにすっかり夢中になっていた。これでゲームまで教えたらアリスはすっかりこの世界の子供とたいして変わらなくなるだろう。
しかし、未だ信じられない。異世界から突如現れ、その子は魔法が使えるときた。その話しはまるでファンタジー小説に出てくるような設定で、どこか出来過ぎている気もしなくはない。とはいえ、アリスがどこの子かも分からない。俺を吹き飛ばしたアレも魔法だと言われたらそうかもしれない。俺もアリスに教われば魔法は使えたりするのだろうか? 俺とアリスに違いがあるようには見えないが…… 。
にしてもこの子、タブレットに夢中で目的を忘れていないか?
「おい、いいのかこんなことしてて。もう6時間は過ぎたぞ」
「もうそんなに!?」
「ご飯も食べといてよく言う……それで、何か分かったのか?」
アリスは首を横に振った。
「ただ楽しんでただけじゃないか。どうするんだこれから」
その時だった。部屋のチャイムが鳴ったのだ。
マズい! と思った。俺は一人で部屋をとっている。それに自分の子でない女の子とホテルに二人だけでいたら完全に疑われてしまう。どんなに説明しようとしても誰も信じてもらえるわけない。想像出来るのは通報を受け駆けつけた警察達に囲まれ署へ連行される光景だ。
「おい、アリス。音を消せ。あと、隠れていろ。絶対出てくるな」
「分かった」
またチャイムが鳴った。ヤマトは「はーい」と言ってドアののぞき窓で外を見た。ドアの前に立っていたのはホテルマンだった。俺は念のためにチェーンをかけドアを開けた。その時だった。ホテルマンは変貌し大きな口を開けるとドアを更に開けようとしてチェーンが引っ張られ、一発でチェーンが引き千切られた。
「な、なんだよいったい!?」
俺は思わず腰を抜かし尻もちをついた。その頭上をアリスが飛んだ。剣を抜いたアリスはホテルマンの首を突き刺した。ホテルマンの首からは大量の赤い血が噴水のように吹き出た。
「お、おい……」
「ネクロマンサーだ。これは死人だ」
「死人……ってことは!?」
「この世界にネクロマンサーがいる」
「で、でも……それまで普通だったんだぞ!?」
「私に気づいたんだ。だからこの部屋へ真っ直ぐ現れたんだ」
「どうするんだよ!? いや、早くここから逃げよう」
「いや、無理だ」
ドアノブを離さないまま部屋を出て通路を見ると、右も左も死人が数体此方へ猛ダッシュしていた。アリスはホテルマンを蹴飛ばしドアを閉めた。直後、オートロックのドアをこじ開けようとドアノブをガチャガチャする音が部屋中に響き渡る。
まるでゾンビ映画だ。
「他に出口は?」
「そこだけだ」
アリスは少し考え込んだ。それを見てヤマトは「魔法でなんとかならないのか」と訊いた。
「連中を倒すなら魔法より剣の方が倒せる。連中を倒しきるには火力が必死なんだ」
「そんなことをしたらホテルが火事になる」
直後、二人の後ろでドン! と音がした。振り返ると窓にカラスが激突し、窓にヒビが入っていた。
「カラスが窓に激突するなんてそうないぞ……」
「ネクロマンサーだ……生きたまま死人へと変えられたんだ」
「普通、死んで蘇ったのがゾンビじゃないのか!?」
すると今度は、トイレの方から水が流る音がした。風呂場から突然シャワーが。洗面台からは蛇口をひねってもいないのに水は勝手に全開に流れ、部屋のテレビが勝手に電源が入り音量マックスでバラエティー番組が流れ出した。
「なんなんだ!? これもネクロマンサーとかなのか?」
「いや……こんなのは知らない」
ヤマトはリモコンを拾い電源を消そうとするもテレビは全く反応しない。
「どうなってるんだ……」
ドアの方では数人がかりでドアを破ろうとドン、ドンと音がし、今にも破られそうだ。
「おい、どうにかしてくれ」
アリスは剣を構える。
「おい、まさかそれで戦うって言うんじゃないだろうな?」
「でなきゃやられるだけ」
「冗談だろ!?」
部屋の照明がカチカチと点滅しだす。床が急にぐらっと揺れ、右へ左へと横揺れを起こし、部屋にある物が崩れ、壁に掛けてあった絵画が落ちる。それは大きな地震だ。壁や天井のあらゆる箇所から亀裂が走り、どんどん状況はエスカレートしていく。
「これ、単なる死人ってわけでもなさそうだぞ」
まるで、呪いだ。呪いに襲われているみたいだ。
パリン!
部屋の窓ガラスが割れ、カラスが部屋に入ってきた。アリスは瞬時に反応し体の向きをねじりながら半回転しつつ剣を振り上げ綺麗にそのカラスの首を胴体と切り離した。頭は壁に激突し、その音が暫くヤマトの耳に残った。
「まるで悪夢だ」
「これは現実だ」
こんな魔法とかゾンビとか呪いだとか超常現象とか信じず生きてきたというのに、突然遭遇し体験してしまうと、まるで自分は別世界に本当に踏み入れてしまったかのようだ。それは半分巻き込まれた事故のようなもの。悲運。何故俺なのか? この運命をヤマトは呪った。
すると、今度はバーン! と大きな音を立てて部屋を守っていたドアは部屋の中へ倒れた。
「俺の知るゾンビはそんな怪力使わないぞ」
「ゾンビじゃない。死人だ」
「何が違うって言うんだ!」
「ゾンビは助からない。でも、死人なら術者を倒せばまだ救える」
「それじゃ……殺しちゃまずいんじゃないのか?」
「殺さなきゃ私達が殺られる」
殺らなきゃ殺られる……でも、その為には人を殺すんだろ?
「自分の命と目の前の命とどっちが大事なの?」
「そんなの……」
そんなの自分の命に決まってるだろ。だからって……殺すのかよ…… 。
「ヤマト、あなたはどうする? 殺せるの? 目の前の敵を」
死人になったホテルマンは大きな口を開いてアリスに襲いかかっている。アリスは掌を突きだすとそこから突風が吹き出てホテルマンとその後ろにいた2体の死人を巻き込んで通路へと飛ばした。
あのホテルマンだって今日ロビーで見掛けていた。あの時は普通だった。それが今では豹変し見た目はゾンビだ。ゾンビ映画やゲームなら倒して問題はないから、抵抗もなかったのに、まだ人間に戻れる可能性があると言われると、全く意味合いが違ってしまう。それはゾンビというより、悪魔に憑依された人だ。
「魔法でそのネクロマンサーの呪いは解けないのかよ。エクソシストみたいによ」
「それができたらとっくにやってる」
吹き飛ばされた3体の死人は起き上がると再びアリス達に襲いかかった。
アリスは剣を構える。
「やめろ!」
ヤマトは叫んだ。
どうしてだろう。アリスのしようとすることは間違いではないのに何故自分は咄嗟に止めようとしたんだろう…… 。
アリスはヤマトの忠告を無視して目の前の死人を突き刺した。剣はホテルマンの体を貫いて、そこから赤い血が流れ出る。
「ヤマト……私は生きる為にすべきことをしている。ヤマトもそうしろ」
生きる為に戦う。それはとても血生臭く、自分の知っている世界ではなかった。だが、世界は本当は広く、そういった出来事は地球のどこかでも起こっていたことで、自分はそれに目も向けず他人事のようにすませ、知らないふりをし続けた。知らぬが仏。知らないことが幸せである、そう思い込むことで自分は幸福であろうとした。
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結局、真実は隠し通せない。悪いことをすればいずれバレるように、目をそらした不幸もやがでかたちを変えて自分に降りかかる。例えば、世界の全員が他人を助け合えれば助けを貰えない人がいなくなるように、その逆もまた存在する。
相対の幸福、他人と比べ自分が幸せと感じても、虚しいものだと気づいてしまったらそれは幸福にはならない。
生きるとは、昔から血生臭いものだった。自分達はその歴史の上に立っている。生きるとは、血生臭いものだった。自分はそれを忘れ、また忘れたいと思っていた。
過去、歴史的偉人がこの血生臭い世界を終わらせ平和を求めた。だが、この現代でも誰かが傷を負い、そして死んでいる。ただ、昔より複雑に世の中が変化したことでそれに気づきにくくなった。世間が、人が、それを遠ざけたからだ。だからこそ、社会の闇は深くなり、より深刻になっていった。
自分が直視している光景、これは現実だ。今、起きていることは夢ではない。
アリスによって斬られた死人の血が飛び散り、それがヤマトの顔に当たる。ヤマトはそれを手で拭った。その手からは血の臭いがした。
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