ジョンの歴史探求の旅

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2週目 影の亡霊と『死』を宣告する殺人者

11 海戦! 三人の賢者VS『円卓』

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 人の歴史を振り返ってみれば、人間のしてきたことというのは悪ばかりだ。そして、人間はより残酷な生き物であり、暴君や残忍な殺人鬼など、同じ人間とは思えない人物の登場は歴史に名を残してきた。人間は悪なのか? しかし、人間が悪であろうと、そのまま悪に染まるか、むしろそこから善に向かう努力をするのかで、その人の運命は変わっていくであろう。善の行いをする必要があるのは、悪に染まるべきではないからだろう。それが例えあの世が無かろうとも。



 ジョン達が『円卓』の食料大臣と接触した頃、仮想世界の事態を聞きつけフルダイブした三人の賢者はローズから聞いた合流地点へ向かう為に船で移動中だった。そこに巨大な鳥がその上空を飛んだ。その影が海にうつると、三人は一斉に空を見上げた。それは翼があるものの、正確には鳥ではなかった。戦闘機。ミサイルと機関銃を積んだ戦闘機は旋回し、三人が乗船する帆船に向かって警告無しの狙撃を開始した。シギンが悲鳴をあげる中、水の賢者は海水による水柱を立ち上げ、戦闘機を襲う。戦闘機は上昇を始め帆船から距離を取り出した。戦闘機のエンジン音が上空を通過する。
「被害は?」と水の賢者が問うと緑の賢者スニルは被害状況を声を大にして答える。
「幾つか船に命中し帆に穴があいたが、特に問題はない。怪我人は幸いゼロだ。それよりいきなりなんだ?」
「さぁな。敵なのは間違いないだろうが」
 それにしては対応が早いと水の賢者は感じた。
「次が来るぞ!」とスニルが言う。
「勿論やらせないさ」
 次々と極太の水柱を発生させるが、戦闘機はうまくそれら全てを回避していく。
(まるで人間技じゃないな……まさか、聞いていた『円卓』自ら現れたのか?)
 戦闘機は再び上昇し空へ逃げる。流石に空まで届く水柱を発生させるのは賢者でも無理だった。相手はそれを分かって空から攻められる戦闘機で現れたと考えられる。
「まるでハエみたいね。なんとか撃ち落とせないわけ?」とシギンは言った。
 スニルは「この船には大砲しかないぞ」と答える。
「大砲じゃ戦闘機は撃ち落とせない」
「それはそうだが、どうする? 申し訳ないがここでは私の能力とシギンの能力じゃあの戦闘機相手には敵わない」
 スニルの能力は森、シギンは毒使いだ。確かに、空相手に船上での戦闘ではどうみても不利だ。そもそも、それを狙っての奇襲だろう。だとすると、あちらには此方の動きが把握されていると見るべきだ。
 水の賢者は空を見上げた。
「まさか……」
「どうした?」
「敵は宇宙から我々の動きを追っているんじゃないのか?」
「まるで聞いたことある映画みたいな話しだな。でも、そうか……奴らにはそれが可能かもしれない」
「それって逃げられないじゃない」
「いや……一つだけある」
「え、それってまさか……」
「悪いがそれしかない」
 すると、スニルは顔を青ざめて二人に向ける。
「二人とも話し合いはそれぐらいにして! 奴はミサイルを船に撃つつもりだ!」
「海に飛び込め!」
 水の賢者はそう叫び先に海へ飛び込んだ。続いてスニルも海へ飛び込む。
「冗談でしょ!?」
 だが、そうしないと自分がやられるだけだった。意を決したシギンは「もう関わるんじゃなかった」と文句を言いながら海へ飛び込んだ。
 船が炎上するのはその後だった。



 三人は海の中でブクブク泡を出しながら沈んでいく。その海面を弾丸の雨が降り注ぐ。
 シギンは既に息が苦しそうだ。スニルはまだ耐えられそうだが、これでは相手の思うつぼだ。敵が海面を狙う時は降下している筈だ。そこを狙って今度こそ水柱でぶつける! チャンスはそう残されていない。
 その頃、旋回した戦闘機は再び降下し、攻撃を始めた。
(そこだ!)
 水の賢者は水柱を複数同時発生させた。戦闘機は回避を始めるが左翼が水柱に接触、バランスを崩しコントロール不能になると海面へと叩きつけられ、そのまま戦闘機は海の中へ沈没していった。三人は一気に上昇、海面へ上がると酸素を大量に吸い込んだ。
「死ぬかと思った……」とシギンは言った。
「戦闘機に乗っていた敵は?」
 水の賢者とスニルは辺りを見回す。空にはパラシュートが見えないことから脱出は間に合わなかったと思われた。であれば戦闘機と共に沈んだか……そう思われた時、シギンが突然引っ張られるかのように海の中へ沈んでいった。二人は顔を見合わせ一緒に潜る。
 すると、シギンの足を掴んでいる『円卓』の船長がいた。
「私は擬人。人間のように振る舞うように基本設定されているが、それを忘れることで人間に必要な『食べる』『呼吸をする』その他を無視出来る。この女はそのまま溺れてもらう」
(なるほど……だが、海で戦いを挑むのが間違いだったな『円卓』よ)
 突然、海流が発生し船長は思わずシギンの足を手放す。そのまま光の届かない底へ押し込まれた。
(そのまま水圧でやられろ)
「流石に水の賢者には有利な場所過ぎたか……しかし、無意味だ。私は人間のように脆くはない。故に水圧でやられることもない」
(何っ!?)
「そもそも、私には火も水も毒も雷も通用しない。怪我をしたとして、人間のように血を流したとして、それは人間に似てつくられただけのこと。直ぐに再生できる。考えたことはあるか、人間。我々仮想世界の住人にとっての死の意味を。いや、考えたことはあるまい。我々にそもそも死は存在しないのだから。いくら擬人とはいえ、完璧な人である必要はない。それを求められていない。故に君達は我々からして脆いのだ。ただ、スルトの炎の剣を例外にして」
(だからスルトを攻撃したのか……くっ、酸素が)
「いくら君にとって有利なステージだとしても、不死である私を倒すことはそもそも無理な話しだ。故に私に敗北はあり得ない。私が見えるのはお前達の敗北である」
 突然、海面が凍り始めた。
(しまった……)
「これは想定外だったか? いや、驚くことではない。結果がお前達の敗北なら、その過程に意味は無い。どうせのだから」




【現在の監獄は


 光の賢者
 炎の賢者デント
 雷の賢者マグニ
 水の賢者
 毒の賢者シギン
 森の賢者スニル
 

の6名】
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