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1週目 巨樹ユグドラシルと炎の剣
20 失われた時
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「大丈夫なのか?」とスニルはジョンの容態を心配した。ジョンのそばで見守るメアリーは「まだ目覚めないわ」と答えた。
「強くやり過ぎなんだよ馬鹿」とグレンはギリングを叱った。
頭に手当てをされたジョンはまだ深い眠りについたままだった。
◇◆◇◆◇
シリンダー型宇宙コロニーが目の前に見える。暗闇の空には遠い星々が無数に見える。夜空というわけではない。自分のたっている殺風景でなにもない地平線が続くこの場所が地球でないことは直ぐに察せた。ここは宇宙だ。それだというのに自分は宇宙服を身に着けていない。この矛盾から現実が夢だと分かった。夢の中でこれは夢だという意識体験は多分恐らく初めてだろう。なにせ久しぶりに見る夢だから、ほぼ覚えていない。僕が恐竜の夢を見て追われ小便を漏らしたあの頃ぐらいか。恐竜に逃げながらトイレを探し、ようやく見つけトイレで気持ちよくやったら布団の中の自分は本当に出していたのは苦い記憶だ。
自分はもう一度周囲を見渡した。すると、先程まで殺風景で何もなかった場所に突如パラボラアンテナが沢山並んでいた。白い建物が他にあり、そこは研究所みたいだった。ジョンはとりあえず歩いてみた。導かれるかのように進むと、巨大なパラボラアンテナの近くに白いアンドロイドが倒れていた。壊れて動かないようだ。それは3つ程見つかった。
夢だというのに不思議な経験だ。これ程リアルで不気味で宇宙の夢を見るなんて、不吉な予感がした。ジョンはもう一度宇宙にあるコロニーを見た。コロニーは夢から消えたりしなかった。あれは資料で見たことがある。確か、失われた時代の技術だ。人類は宇宙へ行き、月にも施設を造った。だとすれば、自分が見た記憶からこの夢を見ているのかもしれない。ただ、一つだけ資料では見たことがないものがここにある。白い建物の横に一本の木が育っていた。木は裸の状態で落ち葉も見当たらない。まるでつくりものかのように白っぽいその木を触れるとまるでプラスチックみたいな肌触りをしていた。しかし、木はしっかりと地面に根を張っていた。寒いも暑いも無く、風も他の生物も見当たらないまるで死んだ世界かのようで、まるでここにいると時が止まったかのようだ。いや、本当に時間がないのかもしれない。ただ、そこにあるのは失われた文明が転がっているだけだ。失われた時……その世界で僕だけがいる。
ふと、いきなり頭痛に襲われた。後頭部を擦るとべっとりとした感触が伝わった。見ると手には自分の血液がついていた。その痛みから記憶が蘇る。そうだ、確か僕はUFOに入ろうとしたところをいきなり後ろから殴られたんだ。多分、現実の自分はその後倒れたままだ。だが、蘇る記憶はそれだけではなかった。頭を打たれたことで自分の知らない自分が蘇っていく。
◇◆◇◆◇
20※※※年、スーツを着た一人の冴えない男は髭を生やしたまま長い通路に立っていた。目の前には白衣を着たスキンヘッドの中年男性。中肉中背の男は丸いサングラスをかけていた。髭はなく、その男の口からは銀歯が見えた。
「分かっていると思うが『やり直し』には必ずそれに反発する力が現れる。それがどんなかたちで現れるかは私達も予測が出来ない。もしかすると、『ツリー』に接触した時点で君は目的を忘れてしまうかもしれない。そうなれば『ツリー』が見せる仮想世界に永遠に囚われてしまうだろう。いくら君の頭にチップを入れ、巨人というワードに導かれるように設定したところで、君は『ツリー』の見せる仮想世界で敗北するかもしれない」
「それでもやります」
「君にはお助けアイテムとして君が希望した能力を持っている。君はそれを使って仲間と共に勝利して欲しい。最終戦争に勝利出来れば……君の家族……娘も妻も取り戻せるだろう。だが、決して忘れるな。『ツリー』は君達を勝利させないよう孤立させるだろう。君達がもし、勝利目前になれば『ツリー』は全力で阻止にかかってくる。分かっているな、仮想世界とはいえ、そこで命を落とせば君自身も死ぬのだ」
「分かっています」
◇◆◇◆◇
「……なんだ、この記憶は?? あれは、僕なのか?」
俺は顔を上げ、そこにある木を見た。
木は不気味で歪な姿に変貌していた。
「!?」
『ツリー』は気づいた。俺が記憶を取り戻したことに。
「強くやり過ぎなんだよ馬鹿」とグレンはギリングを叱った。
頭に手当てをされたジョンはまだ深い眠りについたままだった。
◇◆◇◆◇
シリンダー型宇宙コロニーが目の前に見える。暗闇の空には遠い星々が無数に見える。夜空というわけではない。自分のたっている殺風景でなにもない地平線が続くこの場所が地球でないことは直ぐに察せた。ここは宇宙だ。それだというのに自分は宇宙服を身に着けていない。この矛盾から現実が夢だと分かった。夢の中でこれは夢だという意識体験は多分恐らく初めてだろう。なにせ久しぶりに見る夢だから、ほぼ覚えていない。僕が恐竜の夢を見て追われ小便を漏らしたあの頃ぐらいか。恐竜に逃げながらトイレを探し、ようやく見つけトイレで気持ちよくやったら布団の中の自分は本当に出していたのは苦い記憶だ。
自分はもう一度周囲を見渡した。すると、先程まで殺風景で何もなかった場所に突如パラボラアンテナが沢山並んでいた。白い建物が他にあり、そこは研究所みたいだった。ジョンはとりあえず歩いてみた。導かれるかのように進むと、巨大なパラボラアンテナの近くに白いアンドロイドが倒れていた。壊れて動かないようだ。それは3つ程見つかった。
夢だというのに不思議な経験だ。これ程リアルで不気味で宇宙の夢を見るなんて、不吉な予感がした。ジョンはもう一度宇宙にあるコロニーを見た。コロニーは夢から消えたりしなかった。あれは資料で見たことがある。確か、失われた時代の技術だ。人類は宇宙へ行き、月にも施設を造った。だとすれば、自分が見た記憶からこの夢を見ているのかもしれない。ただ、一つだけ資料では見たことがないものがここにある。白い建物の横に一本の木が育っていた。木は裸の状態で落ち葉も見当たらない。まるでつくりものかのように白っぽいその木を触れるとまるでプラスチックみたいな肌触りをしていた。しかし、木はしっかりと地面に根を張っていた。寒いも暑いも無く、風も他の生物も見当たらないまるで死んだ世界かのようで、まるでここにいると時が止まったかのようだ。いや、本当に時間がないのかもしれない。ただ、そこにあるのは失われた文明が転がっているだけだ。失われた時……その世界で僕だけがいる。
ふと、いきなり頭痛に襲われた。後頭部を擦るとべっとりとした感触が伝わった。見ると手には自分の血液がついていた。その痛みから記憶が蘇る。そうだ、確か僕はUFOに入ろうとしたところをいきなり後ろから殴られたんだ。多分、現実の自分はその後倒れたままだ。だが、蘇る記憶はそれだけではなかった。頭を打たれたことで自分の知らない自分が蘇っていく。
◇◆◇◆◇
20※※※年、スーツを着た一人の冴えない男は髭を生やしたまま長い通路に立っていた。目の前には白衣を着たスキンヘッドの中年男性。中肉中背の男は丸いサングラスをかけていた。髭はなく、その男の口からは銀歯が見えた。
「分かっていると思うが『やり直し』には必ずそれに反発する力が現れる。それがどんなかたちで現れるかは私達も予測が出来ない。もしかすると、『ツリー』に接触した時点で君は目的を忘れてしまうかもしれない。そうなれば『ツリー』が見せる仮想世界に永遠に囚われてしまうだろう。いくら君の頭にチップを入れ、巨人というワードに導かれるように設定したところで、君は『ツリー』の見せる仮想世界で敗北するかもしれない」
「それでもやります」
「君にはお助けアイテムとして君が希望した能力を持っている。君はそれを使って仲間と共に勝利して欲しい。最終戦争に勝利出来れば……君の家族……娘も妻も取り戻せるだろう。だが、決して忘れるな。『ツリー』は君達を勝利させないよう孤立させるだろう。君達がもし、勝利目前になれば『ツリー』は全力で阻止にかかってくる。分かっているな、仮想世界とはいえ、そこで命を落とせば君自身も死ぬのだ」
「分かっています」
◇◆◇◆◇
「……なんだ、この記憶は?? あれは、僕なのか?」
俺は顔を上げ、そこにある木を見た。
木は不気味で歪な姿に変貌していた。
「!?」
『ツリー』は気づいた。俺が記憶を取り戻したことに。
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