おかしな学校

アズ

文字の大きさ
上 下
16 / 18

16

しおりを挟む
 学年主任の後落合が呼び出したのは当然教頭だった。
「教頭先生、もう学年主任が白状しました。あなたが、小林先生が子ども達になにをしたのか。それを警察に言わないよう事実を知った他の先生達に指示したんじゃありませんか」
 教頭はそこまで言われてから観念したかのように深いため息をついた。
「はい。仰る通りです」
「何故ですか?」
「最初、小林先生が首吊り自殺をしたと聞かされた時はまさかと思いました。先生は孤立していました。それが意図的にそうなっていたとなれば当然警察は気づいたでしょう」
「学校としてはそんな事実は隠しておきたかった」
「もう、当人の小林先生はいませんでした」
「隠し通せると思ったわけですか」
 教頭は黙って深々と頭を下げた。



◇◆◇◆◇



 教頭との話を終え、落合は車へと向かった。いきなり「外へ行くぞ」と言われた岡田はとりあえずついていったが、疑問は残ったままだった。
「結局、小林先生のことは先生達も知っていたようですが、それが原因で殺人なんかしないですよね?」
「宮脇の家に向かう。お前、運転しろ」
「え? あ、はい。あ、でも何で宮脇の家にまた行くんですか?」
「宮脇少年は知っているかもしれない」
 そう言いながら助席に乗り込んだ。
 車内で二人の会話は続く。
「小林が女子児童に手をどこまで出したのか、まだ詳しくは訊いていない。女子の答えでは確かに宮脇少年のほぼ言っていた通りの答えだったが、その中にまだ本当のことが言えない子がいた筈だ」
「え? それって……」
「早くしろ」
「あ、はい」



 言われるがままに岡田はハンドルを握り、宮脇の家まで向かった。



「何度も申し訳ありません」
「いえ。中へどうぞ」
 リビングで前回と同様に同じ席で宮脇少年と向かい合った。
「君に言われた通り、女子から話を訊いた」
「俺の言ってた通りだったでしょ?」
「ああ、そうだ。感謝する。だが、中には言い出せなかった子もいるんじゃないかと思ってな」
「……」
「顔に図星と書いてあるぞ」
「え!?」
「警察はな、なんでもお見通しなんだ。君がその子を匿うのはその子を守っているからだろ? 君のしていることは立派だ。だがね、世の中には知らない方がいいことがあると蓋をして隠したがるが、その真実が時に重要になるんだ」
「誰かを傷つけることでも?」
「そうだ。もしや、君はその子のことが好きなのか?」
 急に宮脇少年は顔を赤めた。
「分かりやすい少年だな。確かに辛いかもな、君にとっては」
「どうしても言わなきゃダメなの?」
 すると、お母さんの方から息子へ「何か他に知ってるの? なんで警察の方に言わないの!」と叱った。
「いや、お母さんいいんです。難しいか」
 その質問に少年は黙ってしまった。
「では、君は犯人が野放しのままでもいいのか」
 少年はハッとして顔を上げた。落合は答えが少年の口から出るのを待っていた。
「分かった、教える」
「よく言った」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

処理中です...