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04 沈黙 〈後編〉
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嵐が過ぎてからというもの、気温が一気に上昇して特に都会の場合ほとんどがアスファルトに覆われている為、余計熱がこもり暑く感じた。小さな子どもなど背の低い子は特に熱中症に気をつけなければならない。外のスピーカーからは水分補給を促すアナウンスが流れている。あの放送は役所が流しており、徘徊で帰宅出来なくなった高齢者のアナウンスなどそれは様々だ。
そんな暑い外では新しい防犯カメラの設置に取り掛かる業者が汗だくになって作業していた。
都会以外の地域では外灯の設置とカメラの設置がセットで国の予算で行われる為、ほとんどが歓迎している。
システムを嫌がるのは犯罪者だけだ、そういった極論もあるぐらいだ。
ジョンはその中で事件現場へと近くに車をとめて徒歩で向かっていた。
近くには電波塔やスタジアムが見え、その間には公園がある。ジョンが向かっているのはその反対方向にある鐘塔だ。これも歴史的建造物で年代は闘技場と同じだ。遺体はその近くにある木陰で発見された。遺体は仰向けの状態で背中には大量の出血。凶器は現場付近にはなかった為、警察は犯人が凶器を持ち去ったとみて、凶器の行方も捜索することになった。
鐘塔近くには防犯カメラがなく、一番近い防犯カメラだと通り沿いに向けられた都庁の防犯カメラになる。警察は当然そのカメラ映像を確認するわけだが、そこで死亡推定時刻の直前にアリスがその通りを鐘塔へ向かって歩いているのが確認された。そこから警察はアリスを重要参考人として捜索、任意でアリスを呼び出している間に警察はアリスの部屋を家宅捜索すると、部屋の押入れから血のついた刃物を発見。その刃物は刺し傷と一致し、血液反応も被害者のものと分かったことから犯行に使われたもので間違いないとし、アリスをそのまま逮捕した。
その後の取り調べでアリスは容疑を否認。部屋から凶器が見つかったことに関しても知らないと一貫している。無論、自分の部屋の押入れから刃物が見つかって知らないは警察相手には通用しない。このままでは彼女がどんなに無実を訴えたところで勝ち目は難しいだろう。
ウォルターも無茶を言いやがる。
問題は凶器が何故彼女の押入れにあったのか? 普通に考えれば凶器の処分に困り部屋の押入れに隠したという警察の読みになるのだろうが、彼女はそもそも殺人を否認している。誰かを庇っているのでないとしたら、凶器はどうして彼女のところへ渡ったのか、その方法も不明だ。
ジョンはウォルターにメールでアリスの部屋に事件後に業者が入ったかどうか確認するよう依頼した。返事は直ぐに返ってきて了解の内容だった。警察は当然アリスを疑っているから業者の出入りまでは確認していないのは想像がつく。そもそも凶器には指紋がついているのだからその必要がない。だが、凶器の移動方法が分かれば、あとは指紋の問題だけになり、それが解明さえできればアリスの無実の可能性は一気に高まる。
アリスには猶予はあまり残されていない。送検されれば、検察は彼女を間違いなく起訴するだろう。そして裁判が始まり有罪が確定すれば、その後に無実を訴えても望みは少ない。それはイアンも同じだ。
この国の法律上検察には抗告が認められている。これが再審を難しくさせている要因だ。判決が確定する前になんとしても無実を証明しなければ真実は闇のままになってしまうだろう。
ジョンは鐘塔周辺を見て回ったが、たいして得るもないので車の方へ戻った。
あとは加害者と被害者の両者の関係性だ。
まずアリスについてだが、ウォルターが教えてくれた情報によると彼女は仕事を転々としており、最初は知人が経営するモーテルの清掃員、それから都内に移りレストランのウエイトレス、それから無職の期間があり、それでお金に困るとキャバクラで働き始める。だが、金回りはあまりいい方ではなく普段着は安い服とサンダルという格好で出歩くほど。宝石類を身に着けたことすらない。そもそも、父が事件を起こし逮捕されてからあの家の金回りは悪くなる一方だった。罪を犯したのは父親なのに、その影響は家族を巻き込んでいた。アリスは人間関係もそのせいなのか長続きはしなかった。まず、父親については触れもしなかっただろう。
対して被害者は独身のサラリーマンだが、マルチ商法に引っ掛かり友人と信用を2年前に失っている。その前にはネットビジネスにも失敗している為、現在は投資から身を完全に退いている。彼はいつも間違った人間を信用してしまうところがあって、人間不信になり塞ぎ気味になって、そのせいか社内でも口数少なく被害者周辺がどうだったかを知る者はいなかった。
一見して二人には接点がないように見える。だが、二人を繋ぐものが一つだけ存在した。
被害者は投資の失敗からかお金に困り闇金に手を出してしまった。最初は闇金とすら気づかなかっただろう。金融機関で他より審査の敷居が低かった。彼はまた間違ったものを信じてしまったのだ。もう少し彼は警戒というものを知った方が良かったが、既に遅いと言えよう。その金融機関の顔をした組織とアリスが働いていたキャバクラの上がりの行き先は同じ組織になる。
もし、今回の殺人事件でその組織が関与しているのなら、被害者は金を返せず組織に命を狙われ、その犯人の身代わりにアリスがつかわれた可能性がある。それなら、指紋は彼女が務めている店から手に入れ、それを凶器に使い、業者に扮した一員が凶器をアリスの部屋に仕込む。住所は店からアリスの履歴書で簡単に知れるだろう。
読みが当たればアリスを救える。
ジョンはスピードをあげアリスが働いていた店へ急いだ。
その日の月は綺麗だった。だが、夜の闇を照らす派手な看板のライトがせっかくの夜空を台無しにしていた。都会の夜景が綺麗だと言う者もいるが、ジョンは好きではなかった。都会の夜景には夜にだけ潜む魔物がいる。それは恐ろしく、簡単に命を奪われてしまう。あの光に誘われた人々の数人がその魔物の餌食になってしまうのだ。
派手なピンク色の看板の横にある窓のない戸からジョンが出てくると、そこへウォルターが現れた。
「こんなところに俺を呼び出すとは」
「話しがある。場所を移そう」
「なら、俺の車の中にしろ。公務員とは言え、お前のように派手な暮らしは出来ん」
「いいだろ」
二人はそれから有料駐車場にとめてあった白の車に乗り込んだ。
「まず、勘違いしているようだが俺は遊びに店に寄っていたわけじゃない」
「じゃあ何しに?」
ジョンはウォルターに全てを説明した。
「凄いな……どうやってそんな情報を短時間で集められたんだ」
「闘技場のチャンピオンとなると、色んなファンが俺についてくれる。闘技場には色んな客がいるからな」
「お前の協力者が凄いのはよく分かったよ。まるで探偵だな」
「で、どうなんだ? これならアリスが犯人でない証明になる筈だ」
「確かに、アリスの店主が組織に従いアリスを人手不足を理由に一時的に調理場に立たせ刃物を握らせ、その店の刃物を凶器として組織に提供。お前が俺に依頼した調査でも、お前の読み通りあの事件後に業者のような格好をした二人組が入っていくのを管理人が証言している。その二人組もおそらくは組織の人間か、組織が用意した連中だろう。動機もお前の言う通りならこの事件の説明もつく。だが、なら何故アリスは現場近くにいた?」
「それも店主が自供した。店主がアリスを呼び出した。場所は鐘塔。だが、そこに店主は行かなかった。組織に脅されて従っただけだと言っている」
「成る程な。実はその組織は警察も睨んでいたよ。ただ、それは別件で今回の〈パノプティコン〉システムを裏で反対票を集めようという動きがあって連中を警戒していたんだ。連中にとっては邪魔なシステムだからな」
「出来すぎてるな」
「何?」
「反対している組織が今回の殺人事件を皮切りに組織解体へ警察が踏み込めたとしよう。それによって得するのは誰だ?」
「まさか……」
「これは俺の想像だ。だが、もしそうだとしたら俺達は単なる駒として動いていたに過ぎないってわけだ」
「クソッ!」
ウォルターは怒りのあまり拳でハンドルを殴った。
「ウォルター、俺達の目的はあくまでもアリスの無実を証明することだ。それ以外のことを考えても仕方がない。例え駒として動いていたとしても、俺達の狙いはディーンを殺した真犯人を見つけることだ」
「あぁ、分かっている。直ぐに動くよ」
「任せた」
ジョンはそう言ってウォルターの車から出ようとドアに手をかけると、ウォルターは「なぁ、ジョン」と声をかけてきた。
「もし、お前の読み通りなら俺がジョンを通じて真相を知ることも想定していたというのか?」
「ディーン殺人事件で俺があちこちで聞き回っていたのを知っていた人物は多い。記者にもそれは知られたし、事件解決には闘技場の英雄が弟子の仇をとったという記事まで勝手に出された」
「あぁ、読んだよ」
「だから、もう一度俺が事件捜査に協力させるなら都合の良い釣り文句があるだろ」
「そうか。アリスが突然ディーンの事件の真犯人を見たと言ったのはそれが理由か」
「逮捕されたアリスにそんな入知恵を与えられるのは」
「弁護士しかいない」
「そうだ」
「アリスについた弁護士を調べておこう。しかし、よく店主から証言をとれたな。あれは組織の裏切り行為。仕返しが怖くて誰もが口を閉ざすというのにどうやったんだ?」
「簡単だ。沈黙を破らせるには安心を与えればいい。俺達があんたらを守ると言ったんだ」
「成る程な。あんたが言うんじゃ効果覿面だろ」
その後、アリスは釈放され警察は組織が事件に関わったとして家宅捜索、後に真犯人が逮捕され組織は解体へと向かった。
そして、ジョンの読み通り今回の一件で更に〈パノプティコン〉システムを支持する世論調査の結果となり、まるで政治の思い通りに事が進んだ。
因みに〈パノプティコン〉システムの反対票を集めようとしていた裏社会の組織解体という記事の横に、組織の闇を暴いた闘技場の英雄というまた勝手な記事が記載されてあった。
ジョンはその記事を読むとため息がついた。また、取材しようと記者が殺到するからだ。
ジョンは今回の一件でウォルターに話さなかったことが一つある。それは、組織解体がスムーズにいった裏には組織内で政治と繋がりがあり、組織を裏切った奴がいるということだ。
裏で随分と回りくどいことをする奴がいるが、相当厄介であることに違いない。そいつが牙をこちらに向けてこない限りは無害だろうが、それまではウォルターには黙っておこう。ウォルターにこれ以上心配事を増やしてもストレスで彼の胃袋に穴をあけるだけだ。
そんな暑い外では新しい防犯カメラの設置に取り掛かる業者が汗だくになって作業していた。
都会以外の地域では外灯の設置とカメラの設置がセットで国の予算で行われる為、ほとんどが歓迎している。
システムを嫌がるのは犯罪者だけだ、そういった極論もあるぐらいだ。
ジョンはその中で事件現場へと近くに車をとめて徒歩で向かっていた。
近くには電波塔やスタジアムが見え、その間には公園がある。ジョンが向かっているのはその反対方向にある鐘塔だ。これも歴史的建造物で年代は闘技場と同じだ。遺体はその近くにある木陰で発見された。遺体は仰向けの状態で背中には大量の出血。凶器は現場付近にはなかった為、警察は犯人が凶器を持ち去ったとみて、凶器の行方も捜索することになった。
鐘塔近くには防犯カメラがなく、一番近い防犯カメラだと通り沿いに向けられた都庁の防犯カメラになる。警察は当然そのカメラ映像を確認するわけだが、そこで死亡推定時刻の直前にアリスがその通りを鐘塔へ向かって歩いているのが確認された。そこから警察はアリスを重要参考人として捜索、任意でアリスを呼び出している間に警察はアリスの部屋を家宅捜索すると、部屋の押入れから血のついた刃物を発見。その刃物は刺し傷と一致し、血液反応も被害者のものと分かったことから犯行に使われたもので間違いないとし、アリスをそのまま逮捕した。
その後の取り調べでアリスは容疑を否認。部屋から凶器が見つかったことに関しても知らないと一貫している。無論、自分の部屋の押入れから刃物が見つかって知らないは警察相手には通用しない。このままでは彼女がどんなに無実を訴えたところで勝ち目は難しいだろう。
ウォルターも無茶を言いやがる。
問題は凶器が何故彼女の押入れにあったのか? 普通に考えれば凶器の処分に困り部屋の押入れに隠したという警察の読みになるのだろうが、彼女はそもそも殺人を否認している。誰かを庇っているのでないとしたら、凶器はどうして彼女のところへ渡ったのか、その方法も不明だ。
ジョンはウォルターにメールでアリスの部屋に事件後に業者が入ったかどうか確認するよう依頼した。返事は直ぐに返ってきて了解の内容だった。警察は当然アリスを疑っているから業者の出入りまでは確認していないのは想像がつく。そもそも凶器には指紋がついているのだからその必要がない。だが、凶器の移動方法が分かれば、あとは指紋の問題だけになり、それが解明さえできればアリスの無実の可能性は一気に高まる。
アリスには猶予はあまり残されていない。送検されれば、検察は彼女を間違いなく起訴するだろう。そして裁判が始まり有罪が確定すれば、その後に無実を訴えても望みは少ない。それはイアンも同じだ。
この国の法律上検察には抗告が認められている。これが再審を難しくさせている要因だ。判決が確定する前になんとしても無実を証明しなければ真実は闇のままになってしまうだろう。
ジョンは鐘塔周辺を見て回ったが、たいして得るもないので車の方へ戻った。
あとは加害者と被害者の両者の関係性だ。
まずアリスについてだが、ウォルターが教えてくれた情報によると彼女は仕事を転々としており、最初は知人が経営するモーテルの清掃員、それから都内に移りレストランのウエイトレス、それから無職の期間があり、それでお金に困るとキャバクラで働き始める。だが、金回りはあまりいい方ではなく普段着は安い服とサンダルという格好で出歩くほど。宝石類を身に着けたことすらない。そもそも、父が事件を起こし逮捕されてからあの家の金回りは悪くなる一方だった。罪を犯したのは父親なのに、その影響は家族を巻き込んでいた。アリスは人間関係もそのせいなのか長続きはしなかった。まず、父親については触れもしなかっただろう。
対して被害者は独身のサラリーマンだが、マルチ商法に引っ掛かり友人と信用を2年前に失っている。その前にはネットビジネスにも失敗している為、現在は投資から身を完全に退いている。彼はいつも間違った人間を信用してしまうところがあって、人間不信になり塞ぎ気味になって、そのせいか社内でも口数少なく被害者周辺がどうだったかを知る者はいなかった。
一見して二人には接点がないように見える。だが、二人を繋ぐものが一つだけ存在した。
被害者は投資の失敗からかお金に困り闇金に手を出してしまった。最初は闇金とすら気づかなかっただろう。金融機関で他より審査の敷居が低かった。彼はまた間違ったものを信じてしまったのだ。もう少し彼は警戒というものを知った方が良かったが、既に遅いと言えよう。その金融機関の顔をした組織とアリスが働いていたキャバクラの上がりの行き先は同じ組織になる。
もし、今回の殺人事件でその組織が関与しているのなら、被害者は金を返せず組織に命を狙われ、その犯人の身代わりにアリスがつかわれた可能性がある。それなら、指紋は彼女が務めている店から手に入れ、それを凶器に使い、業者に扮した一員が凶器をアリスの部屋に仕込む。住所は店からアリスの履歴書で簡単に知れるだろう。
読みが当たればアリスを救える。
ジョンはスピードをあげアリスが働いていた店へ急いだ。
その日の月は綺麗だった。だが、夜の闇を照らす派手な看板のライトがせっかくの夜空を台無しにしていた。都会の夜景が綺麗だと言う者もいるが、ジョンは好きではなかった。都会の夜景には夜にだけ潜む魔物がいる。それは恐ろしく、簡単に命を奪われてしまう。あの光に誘われた人々の数人がその魔物の餌食になってしまうのだ。
派手なピンク色の看板の横にある窓のない戸からジョンが出てくると、そこへウォルターが現れた。
「こんなところに俺を呼び出すとは」
「話しがある。場所を移そう」
「なら、俺の車の中にしろ。公務員とは言え、お前のように派手な暮らしは出来ん」
「いいだろ」
二人はそれから有料駐車場にとめてあった白の車に乗り込んだ。
「まず、勘違いしているようだが俺は遊びに店に寄っていたわけじゃない」
「じゃあ何しに?」
ジョンはウォルターに全てを説明した。
「凄いな……どうやってそんな情報を短時間で集められたんだ」
「闘技場のチャンピオンとなると、色んなファンが俺についてくれる。闘技場には色んな客がいるからな」
「お前の協力者が凄いのはよく分かったよ。まるで探偵だな」
「で、どうなんだ? これならアリスが犯人でない証明になる筈だ」
「確かに、アリスの店主が組織に従いアリスを人手不足を理由に一時的に調理場に立たせ刃物を握らせ、その店の刃物を凶器として組織に提供。お前が俺に依頼した調査でも、お前の読み通りあの事件後に業者のような格好をした二人組が入っていくのを管理人が証言している。その二人組もおそらくは組織の人間か、組織が用意した連中だろう。動機もお前の言う通りならこの事件の説明もつく。だが、なら何故アリスは現場近くにいた?」
「それも店主が自供した。店主がアリスを呼び出した。場所は鐘塔。だが、そこに店主は行かなかった。組織に脅されて従っただけだと言っている」
「成る程な。実はその組織は警察も睨んでいたよ。ただ、それは別件で今回の〈パノプティコン〉システムを裏で反対票を集めようという動きがあって連中を警戒していたんだ。連中にとっては邪魔なシステムだからな」
「出来すぎてるな」
「何?」
「反対している組織が今回の殺人事件を皮切りに組織解体へ警察が踏み込めたとしよう。それによって得するのは誰だ?」
「まさか……」
「これは俺の想像だ。だが、もしそうだとしたら俺達は単なる駒として動いていたに過ぎないってわけだ」
「クソッ!」
ウォルターは怒りのあまり拳でハンドルを殴った。
「ウォルター、俺達の目的はあくまでもアリスの無実を証明することだ。それ以外のことを考えても仕方がない。例え駒として動いていたとしても、俺達の狙いはディーンを殺した真犯人を見つけることだ」
「あぁ、分かっている。直ぐに動くよ」
「任せた」
ジョンはそう言ってウォルターの車から出ようとドアに手をかけると、ウォルターは「なぁ、ジョン」と声をかけてきた。
「もし、お前の読み通りなら俺がジョンを通じて真相を知ることも想定していたというのか?」
「ディーン殺人事件で俺があちこちで聞き回っていたのを知っていた人物は多い。記者にもそれは知られたし、事件解決には闘技場の英雄が弟子の仇をとったという記事まで勝手に出された」
「あぁ、読んだよ」
「だから、もう一度俺が事件捜査に協力させるなら都合の良い釣り文句があるだろ」
「そうか。アリスが突然ディーンの事件の真犯人を見たと言ったのはそれが理由か」
「逮捕されたアリスにそんな入知恵を与えられるのは」
「弁護士しかいない」
「そうだ」
「アリスについた弁護士を調べておこう。しかし、よく店主から証言をとれたな。あれは組織の裏切り行為。仕返しが怖くて誰もが口を閉ざすというのにどうやったんだ?」
「簡単だ。沈黙を破らせるには安心を与えればいい。俺達があんたらを守ると言ったんだ」
「成る程な。あんたが言うんじゃ効果覿面だろ」
その後、アリスは釈放され警察は組織が事件に関わったとして家宅捜索、後に真犯人が逮捕され組織は解体へと向かった。
そして、ジョンの読み通り今回の一件で更に〈パノプティコン〉システムを支持する世論調査の結果となり、まるで政治の思い通りに事が進んだ。
因みに〈パノプティコン〉システムの反対票を集めようとしていた裏社会の組織解体という記事の横に、組織の闇を暴いた闘技場の英雄というまた勝手な記事が記載されてあった。
ジョンはその記事を読むとため息がついた。また、取材しようと記者が殺到するからだ。
ジョンは今回の一件でウォルターに話さなかったことが一つある。それは、組織解体がスムーズにいった裏には組織内で政治と繋がりがあり、組織を裏切った奴がいるということだ。
裏で随分と回りくどいことをする奴がいるが、相当厄介であることに違いない。そいつが牙をこちらに向けてこない限りは無害だろうが、それまではウォルターには黙っておこう。ウォルターにこれ以上心配事を増やしてもストレスで彼の胃袋に穴をあけるだけだ。
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