芸術で稼ぐ異世界

アズ

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 ステイシー家の豪邸は朝が早い。使用人は主人が起きるよりも早く起床し、準備にとりかかる。厨房では朝食の準備や、使用人達は各部屋のカーテンを開けたり、冬の時は暖炉を温めたりと忙しい。掃除も先に済ませてしまう。
 朝食前には新聞以外にも手紙が届くことがある。今日は珍しく大きな物まで届いた。
「あら、随分大きな荷物ね。誰か来て頂戴」
 3人がヘルプで来ると、板のような長方形の包を配達員から受け取り、狭いドアの隅にぶつけないよう慎重に中に運び入れる。
「誰かしら、こんな大きな物を送ってきた方は」
 荷物には手紙も一緒についており、その封筒の裏にはエマという名前があった。
 随分懐かしい名だが、クレアが昔その子の名前を口にしていたのを記憶力がいい使用人は思い出した。
 使用人は小走りで階段を登っていき、クレアの部屋まで向かった。
 そして、ドアの前に立つと息を整えてからそのドアをノックした。
「クレア様、アリスです」
「どうぞ」
「失礼します」
 中に入ると、クレアは着替えの最中だった。
「クレア様宛にお手紙が来ています。エマ様からです」
「エマから?」
 着替えが終わると、クレアに手紙をアリスは渡した。
「ここ最近はあの子から手紙なんてなかったのに」
 封を専用のナイフで開けてから中身を取り出すと、それを広げた。
 アリスはクレアが手紙を読み終わるのを待ってから、大きな物も一緒に届けられたことを伝えた。
「多分、絵画ね」
「絵画ですか?」
「手紙にそう書いてあるわ。彼女が描いた絵を私にプレゼントするって」
「あら、ではこの部屋に飾りましょうか?」
「ええ、そうしてくれる?」
「畏まりました。手紙には他になんてあったんですか?」
「カロンを出て旅に出るそうよ。色んな国を行って色んなものを見てきたいそうよ」
「一人旅は大変じゃありませんか?」
「そうね。でも、あの子がこの国に来た時だってそうなるでしょ?」
「ああ、確かにそうでしたね」
「私は彼女を応援するわ。でも、少し寂しくなるかしら」
「きっと、その分旅の思い出話しが沢山聞けますよ」
「そうね」
 楽しみはデザートのように最後にとっておいた方が楽しみが増える。そう思うとクレアは早くもエマの話しが聞きたくなってしまった。おかしな話しだ。まだ、旅に出る前だと言うのに。
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