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鬼
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鎌田はかつての同級生であり悪目立ちするような感じではなかったが、卒業してからは車に夢中になったり、酒を飲んだり、パチンコに行くようになったりと私生活が段々と荒れていった。そう、段々とだ。それまでは窮屈な学校の規則というものが自由を縛っていたのだが、それが卒業と同時に解放され自由な身になると、周りの何人かは鎌田のようになっていった。俺は鎌田に一度だけパチンコに付き合ったが、あのうるさい音に俺は慣れなくてそれからはやめた。鎌田がパチンコで勝ったの負けたの話をしていたけれど、聞いていた感覚的に鎌田は掃除機に札が吸われていくようにパチンコに負けていた。正直、パチンコ以外にすればいいのにとも思う。そんな鎌田は友達付き合いもよく、根は極悪人とは違うとは分かっていたが、あの事故の知らせで鎌田は助手席の女を巻き込んだ。その女が不倫相手であるかは誰も知らない。
俺は鎌田を信じたいが、地獄に落ちたと聞いて助けるべきか悩んだ。鎌田は急かすように助けを求めたが、その割に俺は電話を待ち続けていた。
鎌田から電話があったのはやはり三日後の事だった。
「もしもし、飯塚か?」
「ああ、そっちはどうだ?」
「こっちの用意は出来た。それじゃ俺が今から言う通りにしてくれ」
「ああ、分かった。それでどうすればいい?」
「まずは古い井戸を探してくれ」
「古い井戸? そんなもんそう簡単に見つかるものか」
「そこはインターネットとかで探してくれよ」
「……分かったよ。それで?」
「古い井戸を見つけたら夜中の12時に俺の写真をマッチで火をつけ井戸へ投げて欲しい」
「お前の写真?」
「卒業アルバムとか、なんでもあるだろ。とにかくやってくれるか?」
夜中の12時というのが儀式らしいと言えばらしいが、正直それで本当に地獄から鎌田を救い出せるものなのか?
「それだけなのか」
「ああ、簡単だろ? 古い井戸ならなんだっていい」
「そんな適当なものなのか?」
「まぁな。それじゃ頼んだぜ。あ! ライターじゃなくてマッチだからな」
「は? マッチなんてないぞ」
「ライターの燃料だと儀式が上手くいかない場合があるんだ」
「そう? 分かったよ」
「それじゃ、お前を信じてるからな」
そう言って電話は切れた。
俺は早速インターネットで近場の井戸を探してみる。すると、車で一時間程した場所に井戸があることが分かった。時計を見て、夜の八時を過ぎている。充分に時間は間に合う。その間にコンビニに寄ってマッチを買わないと。あとは写真か。
俺は棚の一番下にしまってあるアルバムから一枚、彼の写真を切り取り持ち出すと、外へ出て車へと乗り込んだ。
自宅から道中までにコンビニが一件あり、そこの駐車場に入ってコンビニに寄りマッチを購入する。それから店を出たところで同級生の遠藤と遭遇した。
「あ、遠藤じゃん」
「おお、何してるの?」
「いや……それがさ」
俺は遠藤に妙な体験を遠藤に話した。
「それさ、お前騙されてるんじゃない?」
「そうかな……正直、地獄から電話かかってくるとかそもそも変だよな」
遠藤は笑って「なんかの悪戯でしょ?」と言った。
「だけどさ、声は鎌田なんだよ。それに、鎌田のことを知っていて俺の連絡先知ってるのって妙じゃん」
「止めなよ。絶対に関わらない方がいいよ」
「うーん……やっぱりそうかな」
「そうしな」
「それでまた電話があったら警察にでも相談すればいいじゃん」
「分かった。それじゃそうするよ」
「ああ」
俺は馬鹿らしくなって車に乗り込むと、来た道を引き返した。
◇◆◇◆◇
それから6日後の夜8時のこと。
三日後に電話がなかったことですっかり油断していた俺は鎌田からの電話で驚いた。
「なんで言われた通りにやってくれなかったの……」
「なんでって……何の悪戯か知らないが死んだ人間の名前を使って人をからかうのもいい加減にしろよ!」
「だから俺は鎌田だって……信じてくれたんじゃなかったのかよ……ブツブツ……」
「はい?」
「……呪ってやる」
「え!?」
「殺してやる。お前を殺してやる」
その時、突然大きな地震が襲ってきた。
ガタガタと音が鳴って、物が次々と落下しだす。
「おい……やめろよ……やめてくれぇー!!!」
その時、地震は止んだ。
「……か、鎌田?」
だが、鎌田は返事をせず無言のまま暫く続いたかと思うと、電話が突然切れた。
俺は鎌田を信じたいが、地獄に落ちたと聞いて助けるべきか悩んだ。鎌田は急かすように助けを求めたが、その割に俺は電話を待ち続けていた。
鎌田から電話があったのはやはり三日後の事だった。
「もしもし、飯塚か?」
「ああ、そっちはどうだ?」
「こっちの用意は出来た。それじゃ俺が今から言う通りにしてくれ」
「ああ、分かった。それでどうすればいい?」
「まずは古い井戸を探してくれ」
「古い井戸? そんなもんそう簡単に見つかるものか」
「そこはインターネットとかで探してくれよ」
「……分かったよ。それで?」
「古い井戸を見つけたら夜中の12時に俺の写真をマッチで火をつけ井戸へ投げて欲しい」
「お前の写真?」
「卒業アルバムとか、なんでもあるだろ。とにかくやってくれるか?」
夜中の12時というのが儀式らしいと言えばらしいが、正直それで本当に地獄から鎌田を救い出せるものなのか?
「それだけなのか」
「ああ、簡単だろ? 古い井戸ならなんだっていい」
「そんな適当なものなのか?」
「まぁな。それじゃ頼んだぜ。あ! ライターじゃなくてマッチだからな」
「は? マッチなんてないぞ」
「ライターの燃料だと儀式が上手くいかない場合があるんだ」
「そう? 分かったよ」
「それじゃ、お前を信じてるからな」
そう言って電話は切れた。
俺は早速インターネットで近場の井戸を探してみる。すると、車で一時間程した場所に井戸があることが分かった。時計を見て、夜の八時を過ぎている。充分に時間は間に合う。その間にコンビニに寄ってマッチを買わないと。あとは写真か。
俺は棚の一番下にしまってあるアルバムから一枚、彼の写真を切り取り持ち出すと、外へ出て車へと乗り込んだ。
自宅から道中までにコンビニが一件あり、そこの駐車場に入ってコンビニに寄りマッチを購入する。それから店を出たところで同級生の遠藤と遭遇した。
「あ、遠藤じゃん」
「おお、何してるの?」
「いや……それがさ」
俺は遠藤に妙な体験を遠藤に話した。
「それさ、お前騙されてるんじゃない?」
「そうかな……正直、地獄から電話かかってくるとかそもそも変だよな」
遠藤は笑って「なんかの悪戯でしょ?」と言った。
「だけどさ、声は鎌田なんだよ。それに、鎌田のことを知っていて俺の連絡先知ってるのって妙じゃん」
「止めなよ。絶対に関わらない方がいいよ」
「うーん……やっぱりそうかな」
「そうしな」
「それでまた電話があったら警察にでも相談すればいいじゃん」
「分かった。それじゃそうするよ」
「ああ」
俺は馬鹿らしくなって車に乗り込むと、来た道を引き返した。
◇◆◇◆◇
それから6日後の夜8時のこと。
三日後に電話がなかったことですっかり油断していた俺は鎌田からの電話で驚いた。
「なんで言われた通りにやってくれなかったの……」
「なんでって……何の悪戯か知らないが死んだ人間の名前を使って人をからかうのもいい加減にしろよ!」
「だから俺は鎌田だって……信じてくれたんじゃなかったのかよ……ブツブツ……」
「はい?」
「……呪ってやる」
「え!?」
「殺してやる。お前を殺してやる」
その時、突然大きな地震が襲ってきた。
ガタガタと音が鳴って、物が次々と落下しだす。
「おい……やめろよ……やめてくれぇー!!!」
その時、地震は止んだ。
「……か、鎌田?」
だが、鎌田は返事をせず無言のまま暫く続いたかと思うと、電話が突然切れた。
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