魔法の剣とエド

アズ

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第一章 魔法の剣

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「魔女よ、我々に残されたこの世界の行き方は何だか分かるか」
 突然そう言われた魔女は答えに困惑した。何故なら、今さっきこの男は躊躇なく一人殺したばかりだからだ。
「酒も煙草も珈琲すらないこの世界で、人間の娯楽は音楽と絵画ぐらいだ。女は俺を恐れるから全くダメだ。戦争では多くを失ったよ、人類は。それでも生きたいと思ってしまうんだから、全く人間の生命力は計り知れないな。知っているか、錬金術師が唱えた人類滅亡説を」
 魔女はその説を聞いたことはあったが、あれが本当の話しだとは知らなかった。
「私は生き延びるぞ。その為には剣が必要だ。今まで、試練を達成できた人間は少ない。いったいどれだけの人間がチャレンジをして散っていったのか。世界で達成者は7人しかいない。たった7人だ。私を含めれば8人しかいない」
 ローレンスは魔法の剣を既に二本手に入れていた。つまり、彼は2度この試練を達成していることになる。それなのにまだ、魔法の剣が必要だと言うのだ。
「もうあなたは十分でしょ」
 すると、ローレンスは不気味な笑みを魔女に見せた。
「魔法の剣を手にすると、何故か転移魔法が自動的に発動する仕組みが構築されているようで、いちいち試練に挑まなければならない。全く面倒ではあったが、3本の剣を必要とするのは、3本分の魔力が必要だからだよ。君より前に我が一族が捕らえた魔女から自然と会話できた魔女の話しを聞き出そうとしたが、うまくいかなかった。だが、自然を再び回復させる魔法が実在することを知ったのだ。それは、錬金術師の知識と魔女の魔法を組み合わせた画期的な魔法だ。しかし、その魔法は使われることはなかった。それは何故か。人類はまだ戦争を続けていたからだ。錬金術師が人間の選別をしようとしたのは、多くの人間を生かす必要性がないと判断したからだ。それは正しい。だが、錬金術師とその魔女の行方が分からず、人類滅亡説も怪しい点がある。最大の謎はいつ、人類滅亡の時が訪れるかだ。これは誰も分かっていない。それ故に、その説に対する信憑性は失われた。錬金術師の説はもう古い話しだ。その間まで、人類は生き延びてしまった。いつ訪れるか分からないなら、私が錬金術師の代わりに実行するまでだ。その為には、人類を滅ぼす魔法の剣が一つ必要だ。そして、その後で、自然を回復させる魔力にもう一つが使われる」
「もう一つは?」
「決まっているだろ。その後の世界を支配する為の力だよ」
「あなたは分かっていない。魔法で自然を回復させても、魔力の宿る土地は生まれないし、神は既にこの世界から消えてしまった。消えたものが戻ってくることはない。あなたは、この場所まで奪うつもりなの」
「馬鹿だな。もう、あの鳥は死んだんだ。お前が殺したんだ。この土地の空を守るものがいなくなれば、いずれこの大地の上空を鉄の鳥が飛ぶことになるだろう」
「……あなたが私にそうさせたんじゃない」
「ああ、そうだったな。だが、抗うこともできた筈だ。他の魔女がしたように自害すれば、少なくともあの化け物の鳥がやられることはなかった」
 魔女は言い返す言葉を失った。全くその通りだったからだ。魔女の役割はこの残された自然の大地を守ることにある。それを脅かしてしまった時点で、魔女として自分は失格だった。
「この土地を失うのは残念だが、私には必要ない。重要なのは、人間が再び生きられる環境だ。見ろ、外の世界を! もう、人間は生きてはいけない。徐々に寿命の短い子どもが生まれていくだけだ。これを早く打開すべく、私は世界の救世主となる」
「馬鹿馬鹿しい。あなたが救世主? 破壊者の間違いじゃない? その為に多くの人間を殺すのでしょ。あなたの身勝手な考えで多くが犠牲になる」
「なにかを成し遂げるには犠牲はつきものだというセリフは言いたくはなかったが、それは事実で正しい。それに、ただ死を待つだけの人類なら、その時期が早まってもたいして違いはあるまい」
「あなたは本当に恐ろしい人よ」
 ローレンスはカッとなって、魔女の頬を強く叩いた。
「俺に向かって生意気なことを言うな。お前の主人は私だ。そのことを忘れるな。ハハハ、お前はずっと私に服従していればいいんだ。私の計画を実行する際に、お前だけは生かしといてやるよ」
 魔女は叩かれた頬をおさえた。
「なにをボサッとしてる。早く命令された通りに動け」
 ローレンスは魔女を蹴り飛ばす。
 魔女は地面に転がったが、直ぐに立ち上がりカラスへと変身すると、空高くへ飛んでいった。
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