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第一章 魔法の剣
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「空を飛ぶ機体があるのならば、最初から空から行けばいいわ」
ミアはそう言ったが、そうもいかない理由があった。それをサイモンは答える。
「そんな勿体ないことできるかよ。機体だって貴重なんだ。無駄にしただけかなり痛手さ。今じゃ、その機体を動かす燃料ですら貴重なんだ。ほとんどないといっていい。動かせるのはせいぜい原子力飛行機ぐらいじゃないのか」
サイモンが言う原子力飛行機はかつては問題点が多く一度は実用化を断念した技術だ。それを再び実用化にもっていったのは、やはり資源の問題だった。
「それに、燃料があっても三つ目の山は落雷が止むことがないんだぜ。近づけてもこの燃える山くらいさ。それもあの巨大な鳥を避けながらになるがな。他の機体を囮に他の機体が近づくぐらいしないと無理だ」
「4つ目の山に直接回ればいいわ」
「4つ目の山は何故か機械が全て近づくとダウンするんだ。だから、無理だな」
「それじゃ、あなたの仲間が救助に来ることはないということね」
「ま、俺を切り捨てるのは連中にとって簡単なことなんだろうよ」
そんなことを言われても二人は可愛そうだとは思わなかった。
彼も同情が欲しかったわけでもなく、単に言ってみただけだった。
しかし、彼の言葉は沈黙をつくっただけで、サイモンは後悔した。二人には俺の冗談は合わないと知ったからだ。
「サイモンさん、気になったんですけど、ラボの電力は今までどうしてたんですか?」
「太陽光パネルだよ。流石に原子力は無理だからね」
この大地の外では燃料を失った火力発電所が錆びついて廃墟のままになっていた。風力発電所は気候変動により強風が連日襲えば簡単に破壊してしまう。今じゃ羽のない風力発電所がただの棒として突っ立っているだけだ。地球上のエネルギーは原子力だった。
戦争において原子力はデメリットでしかなかった。それは、一番狙われるリスクがあるからだ。敵に大ダメージを与えるには効果的であるが、それが地球上にどのような影響を与えるか。原子力の建設ラッシュは世界のエネルギーを支える砦であると同時に失うと脆く、人類の滅びへと突き進む。原子力の建設はむしろ戦争中は控えられるべきだったが、宇宙の大規模テロ攻撃後は原子力の建設は本格化された。
原子力を狙わないのは暗黙上のルールとなり、これ以上の地球汚染と、人間が死ぬことを控えるようになった。
今では戦争は激しさを失い、やや落ち着きを取り戻している。
当然かもしれない。人間は長い戦争で疲れてしまったのだ。
それに、地球上に残っているのは貧困層が圧倒的に多く、戦うエネルギーはもうない。金持ちは宇宙の塵となったのだ。
今では争いを続ける理由もない。
誰かが決めたことではないが、世界は停戦中に入っていた。これを終戦と呼ばないのは、誰も降伏をしないからだ。
それに対し、この場所は他ではずっと戦いがあったというのに、全くそれを感じさせなかった。
どれだけの生き物が人間が作りし兵器によって絶滅していったのか。
それがここでは生物が存在する。ただ、それは普通の生物と呼べず異形な姿をしている。
魔力がそうさせるのなら、人類にも影響を及ぼしそうだが、魔女も魔法の剣を手にした者も人の姿のままだ。
サイモンはミアを見た。
いや、その考えは違うかもしれない。ミアという魔女も歳をとらないのは魔力の作用によるものではないか。魔法でそうしていると思ったが、どちらにせよ魔力に影響を受けている。中には異形の姿と化した魔女もいたとか。その真相は不明だ。だが、魔剣は人間を異形の姿に変える。
魔力が人間にとっていいものなのか考える必要がありそうだ。
「サイモンさん、ここの生物についてどれだけ解明されたんですか?」
「いや、分からないよ」
「え?」
「俺は生物学者じゃなく助手であるが、それでも素人というわけじゃない。助手として選ばれるだけの条件は最低限ある。そんな俺でも、生物学者の先生方ですら分からないんだ。先生はここの生物を総称して魔法生物とカテゴリーしている」
「魔法生物」
「旅人は獣と呼ぶらしいが、獣と魔法生物は一線を引くべきだろう。やはり違うからな。ただ、魔法生物は一度魔力を取り込むと、元の姿には戻らない。それは魔法生物の死体を見てるから分かることだ。魔法生物が生命の活動を終えた時、魔力が消えるのを確認している。それでも、死体が変化をしないのは、魔力によって変異した生物はそれ以上の変化は訪れないのではないかとみている」
「いいえ、違うわ」
そう答えたのはミアだった。
「違うのか!?」
「ええ。魔力を大量に取り込めばもっと変化する。それがどのように変化を遂げるかは予想できない。魔法には禁忌と呼ばれ魔女の中決められたルールがあるの。その中に、動物実験を禁止するものがあるわ。大量の魔力を与えて大きな変異を与える実験が行われた時、大きな問題が発生したの」
「大きな問題?」
「私はそれをよく知らないの。でも、魔女なら禁忌くらいは知っているわ」
「何故魔女はそのような動物実験をしようとしたんだ? 魔女はむしろ自然を守る側だと思っていたが」
「武器を持つ人間から守る為よ。でも、それは大きな過ちだった。天罰がくだったと師匠は言っていたわ。恐ろしい天罰だと。確かにあなたの言う通り、魔女のすべきことではなかった。魔女には使い魔を持つように生き物に対しても会話するすべを持っていた。魔女が自然を守るように、そこにいる生物も同じように守るガーディアンの役割をしていたのに、やはり魔女も人間だった。天罰の一つは魔女は動物と会話が絶たれ、使い魔を失った。ほら、私に使い魔はいないでしょ?」
確かにその通りだった。
「ミアよ、聞いてもいいか。最後の山にある試練、お前は知っているのか? 俺達は引き返せない以上そこに行くことになる」
「知らないわ。魔女でもその山には絶対に近づかなかった。でも、その山にもいる筈よ。ガーディアンが。師匠が言うには、その山はまるで墓地のように静かで、風もないそうよ。まるで、死も自然の一部かのような場所だと。本当に無数の剣が山に突き刺さっているのなら、墓地はあながち間違いではないかもね」
最後は笑った。
突き刺さる剣が墓みたいだとは縁起が悪い話しだ。
「ミア、君は魔女だが俺達をまさか惑わすつもりじゃないよな。これも罠だと言わんだろうな」
「なにを言ってるんですか?」とエドはサイモンに聞いた。
「少年、君は見た目でもう忘れているようだが、彼女は明らかに君より歳上だろう。外見で騙されるな。ミアの話しが本当なら、何故お前の師匠は最後の山の話しをしたんだ? 近づけないなら師匠は知らない筈だ」
確かにその通りだった。
すると、ミアは不気味なくらいに大笑いをした。
それは長く続いた。
ミアがようやく落ち着いた頃にはエドは背筋が凍りついていた。
まさか…… 。
「安心して。とって食べたりはしないわ。私が完璧に説明できていないだけ。エドは知っているわ。魔女の中に最後の山へ行って魔剣を抜いてしまった魔女が」
「山姥!!」
「師匠は山姥を封印したのよ。つまり、魔女は近づこうとしなかったのは本当だし、例外で師匠と山姥になった魔女がいたのも本当の話しよ」
「そ、そうだったか。すまない、君を疑ってしまった」
「いいえ、構わないわ。魔女もいい人ばかりでなかったのは事実だから」
隠すこともせずにあっさりとミアはそう言った。
それは、僕らのことを信じてのことなんだろう。
ミアはそう言ったが、そうもいかない理由があった。それをサイモンは答える。
「そんな勿体ないことできるかよ。機体だって貴重なんだ。無駄にしただけかなり痛手さ。今じゃ、その機体を動かす燃料ですら貴重なんだ。ほとんどないといっていい。動かせるのはせいぜい原子力飛行機ぐらいじゃないのか」
サイモンが言う原子力飛行機はかつては問題点が多く一度は実用化を断念した技術だ。それを再び実用化にもっていったのは、やはり資源の問題だった。
「それに、燃料があっても三つ目の山は落雷が止むことがないんだぜ。近づけてもこの燃える山くらいさ。それもあの巨大な鳥を避けながらになるがな。他の機体を囮に他の機体が近づくぐらいしないと無理だ」
「4つ目の山に直接回ればいいわ」
「4つ目の山は何故か機械が全て近づくとダウンするんだ。だから、無理だな」
「それじゃ、あなたの仲間が救助に来ることはないということね」
「ま、俺を切り捨てるのは連中にとって簡単なことなんだろうよ」
そんなことを言われても二人は可愛そうだとは思わなかった。
彼も同情が欲しかったわけでもなく、単に言ってみただけだった。
しかし、彼の言葉は沈黙をつくっただけで、サイモンは後悔した。二人には俺の冗談は合わないと知ったからだ。
「サイモンさん、気になったんですけど、ラボの電力は今までどうしてたんですか?」
「太陽光パネルだよ。流石に原子力は無理だからね」
この大地の外では燃料を失った火力発電所が錆びついて廃墟のままになっていた。風力発電所は気候変動により強風が連日襲えば簡単に破壊してしまう。今じゃ羽のない風力発電所がただの棒として突っ立っているだけだ。地球上のエネルギーは原子力だった。
戦争において原子力はデメリットでしかなかった。それは、一番狙われるリスクがあるからだ。敵に大ダメージを与えるには効果的であるが、それが地球上にどのような影響を与えるか。原子力の建設ラッシュは世界のエネルギーを支える砦であると同時に失うと脆く、人類の滅びへと突き進む。原子力の建設はむしろ戦争中は控えられるべきだったが、宇宙の大規模テロ攻撃後は原子力の建設は本格化された。
原子力を狙わないのは暗黙上のルールとなり、これ以上の地球汚染と、人間が死ぬことを控えるようになった。
今では戦争は激しさを失い、やや落ち着きを取り戻している。
当然かもしれない。人間は長い戦争で疲れてしまったのだ。
それに、地球上に残っているのは貧困層が圧倒的に多く、戦うエネルギーはもうない。金持ちは宇宙の塵となったのだ。
今では争いを続ける理由もない。
誰かが決めたことではないが、世界は停戦中に入っていた。これを終戦と呼ばないのは、誰も降伏をしないからだ。
それに対し、この場所は他ではずっと戦いがあったというのに、全くそれを感じさせなかった。
どれだけの生き物が人間が作りし兵器によって絶滅していったのか。
それがここでは生物が存在する。ただ、それは普通の生物と呼べず異形な姿をしている。
魔力がそうさせるのなら、人類にも影響を及ぼしそうだが、魔女も魔法の剣を手にした者も人の姿のままだ。
サイモンはミアを見た。
いや、その考えは違うかもしれない。ミアという魔女も歳をとらないのは魔力の作用によるものではないか。魔法でそうしていると思ったが、どちらにせよ魔力に影響を受けている。中には異形の姿と化した魔女もいたとか。その真相は不明だ。だが、魔剣は人間を異形の姿に変える。
魔力が人間にとっていいものなのか考える必要がありそうだ。
「サイモンさん、ここの生物についてどれだけ解明されたんですか?」
「いや、分からないよ」
「え?」
「俺は生物学者じゃなく助手であるが、それでも素人というわけじゃない。助手として選ばれるだけの条件は最低限ある。そんな俺でも、生物学者の先生方ですら分からないんだ。先生はここの生物を総称して魔法生物とカテゴリーしている」
「魔法生物」
「旅人は獣と呼ぶらしいが、獣と魔法生物は一線を引くべきだろう。やはり違うからな。ただ、魔法生物は一度魔力を取り込むと、元の姿には戻らない。それは魔法生物の死体を見てるから分かることだ。魔法生物が生命の活動を終えた時、魔力が消えるのを確認している。それでも、死体が変化をしないのは、魔力によって変異した生物はそれ以上の変化は訪れないのではないかとみている」
「いいえ、違うわ」
そう答えたのはミアだった。
「違うのか!?」
「ええ。魔力を大量に取り込めばもっと変化する。それがどのように変化を遂げるかは予想できない。魔法には禁忌と呼ばれ魔女の中決められたルールがあるの。その中に、動物実験を禁止するものがあるわ。大量の魔力を与えて大きな変異を与える実験が行われた時、大きな問題が発生したの」
「大きな問題?」
「私はそれをよく知らないの。でも、魔女なら禁忌くらいは知っているわ」
「何故魔女はそのような動物実験をしようとしたんだ? 魔女はむしろ自然を守る側だと思っていたが」
「武器を持つ人間から守る為よ。でも、それは大きな過ちだった。天罰がくだったと師匠は言っていたわ。恐ろしい天罰だと。確かにあなたの言う通り、魔女のすべきことではなかった。魔女には使い魔を持つように生き物に対しても会話するすべを持っていた。魔女が自然を守るように、そこにいる生物も同じように守るガーディアンの役割をしていたのに、やはり魔女も人間だった。天罰の一つは魔女は動物と会話が絶たれ、使い魔を失った。ほら、私に使い魔はいないでしょ?」
確かにその通りだった。
「ミアよ、聞いてもいいか。最後の山にある試練、お前は知っているのか? 俺達は引き返せない以上そこに行くことになる」
「知らないわ。魔女でもその山には絶対に近づかなかった。でも、その山にもいる筈よ。ガーディアンが。師匠が言うには、その山はまるで墓地のように静かで、風もないそうよ。まるで、死も自然の一部かのような場所だと。本当に無数の剣が山に突き刺さっているのなら、墓地はあながち間違いではないかもね」
最後は笑った。
突き刺さる剣が墓みたいだとは縁起が悪い話しだ。
「ミア、君は魔女だが俺達をまさか惑わすつもりじゃないよな。これも罠だと言わんだろうな」
「なにを言ってるんですか?」とエドはサイモンに聞いた。
「少年、君は見た目でもう忘れているようだが、彼女は明らかに君より歳上だろう。外見で騙されるな。ミアの話しが本当なら、何故お前の師匠は最後の山の話しをしたんだ? 近づけないなら師匠は知らない筈だ」
確かにその通りだった。
すると、ミアは不気味なくらいに大笑いをした。
それは長く続いた。
ミアがようやく落ち着いた頃にはエドは背筋が凍りついていた。
まさか…… 。
「安心して。とって食べたりはしないわ。私が完璧に説明できていないだけ。エドは知っているわ。魔女の中に最後の山へ行って魔剣を抜いてしまった魔女が」
「山姥!!」
「師匠は山姥を封印したのよ。つまり、魔女は近づこうとしなかったのは本当だし、例外で師匠と山姥になった魔女がいたのも本当の話しよ」
「そ、そうだったか。すまない、君を疑ってしまった」
「いいえ、構わないわ。魔女もいい人ばかりでなかったのは事実だから」
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