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第三章
01 知らないことの平和
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目を覚ますとそこは温かなベッドの中ではなかった。頬についた砂利を払い起き上がると、そこは荒野だった。空は夕焼けのようなオレンジ色だ。星に突入する前は物凄い荒らしだったのに今は静かだ。近くには壊れた宇宙船があった。
遠くに目をやると、黄色に光っている森が見える。
「森があるのか!?」
この星に生命が宿っているのか? そう言えば自分は宇宙服のヘルメットをしていない。ここに酸素があるんだ。
すると、後ろから「無事だったか」とリウから声がかかった。
ランスは振り向くとそこにはもう一人マーティン博士もいた。二人ともヘルメットはしていない。聞くと二人もこの星に酸素があることに驚いたらしい。
「そう言えば僕達が乗ってきた宇宙船は?」
二人は近くにある壊れた宇宙船を見た。かなり時間がたっているようで後ろ半分は折れている。所々大小様々な穴もあった。どう見ても僕達が乗っていた宇宙船とは違う。
リウはあれを見て「あの宇宙船は何だ?」と言った。
「おかしい……我々以外にこの星に来たものがいるなんて」
マーティン博士がそう言ってから僕は気がついた。この星に来た者ならだいぶ昔にいる。
「父さんの船だ」
「父さん?」
「ランス……」
「父さんは無事だったんだ!」
父さんとの記憶がほとんどないのにランスは嬉しい気持ちになった。可能性が見えてきた。
「父さんを探そう」
「どうやって?」
「それは……」
「その前にこの星について我々は何も知らない。何もだ。それは未知の世界だ。だから、我々はまずこの星について知る必要がある。まずは食料。これは喫緊の課題だな。それからこの星に生命がいるなら、我々は警戒した方がいい。とは言え、武器もない我々に戦うすべはないが」
「なら、あんたに任せるよ。俺達はどうすればいい?」
「それじゃルールを決めよう。まず、食料を見つけたら均等に分配。何か発見したらまず知らせろ」
「そのルールなら問題ない」
「僕もです」
「それじゃ食料探しだが、辺りを見渡す限りはあの光る森へ行ってみるしかないだろ。何故森が光っているのかは謎だが」
こうして三人は森に向かって歩き出した。
「そう言えばマーティン博士。どうやって私達は助かったんでしょうか?」
「それは私にも分からない」
会話はそこで途絶え、沈黙が暫く続いた。
ランスは歩きながらここに来るまでの過程を思い出そうとした。侵略者が突然僕達の星に現れ攻撃してきて、僕達は一度連中に捕獲された。それから、連中の目を盗み宇宙船で脱出した。宇宙船での脱出の提案はマーティン博士だった。宇宙船の操縦の仕方は宇宙で仕事したことがあるリウが知っていた。マーティン博士は宇宙局が管理していた宇宙船の場所を知っていてそれで僕達は協力することになった。大勢を連れ出したかったが、大人数だとリスクが高くなると理由で僕達三人だけで脱出することに。それからなんとか宇宙船を飛ばし宇宙へと出たが、そこに銀色の円盤が自分達宇宙船を追いかけに来た。リウはとにかく逃げることに専念した。連中は直ぐには攻撃することはなく、まるで僕達を追いかけ回して楽しんでるみたいだった。すると、例の星……父さんが調査に向かいそこで消息が絶たれた星を見つけた。僕はとっさに「そこに逃げて」とリウに命令した。リウは操縦桿をそちらに向けた。リウもそれ以外に方法はないと判断したようだった。マーティン博士は自殺行為だと大声をあげていたが、だからこそ連中がそこまで危険を犯して僕達を追いかけるとは思えなかった。
僕達の狙い通り連中は嵐の中に突っ込む宇宙船を見て追いかけるのをやめた。きっと連中は「馬鹿め」とあざ笑ったに違いない。でも、僕達はこうして無事だ。それに運の良いことにこの星には酸素がある。
宇宙船からの脱出に成功した僕達は今、この星で歩み続けていた。
未だ、僕達がどうやって助かったのか、そして僕達が乗っていた宇宙船はどこへ消えたのか、何故消えたのかは分からない。もしかすると神様が用意したあの世なのかもしれない。
僕はふと振り返った。壊れた宇宙船は遠くにあるが、思った以上に距離が離れていなかった。僕達は森に向かって歩いているが距離が思った以上にあるせいか進んだ気がしなかったが、そうではなかった。僕達はどうしてかそんなに歩いてはいなかった。なのに、感覚としてはかなり歩いた気でいた。
「かなり距離がありそうですね」と僕は呟いた。マーティン博士はそれに答える。
「どうやらこの星のGは我々の星と違うようだ」
星によってGが違うのは知っていたが、SF小説を読むと自然と宇宙船以外は自分達のいる星と同じGで想像してしまう。
「マーティン博士、この星に宇宙人がいたらどうします?」とリウは質問した。
「マーティンでいい。私もこの宇宙の全てを知っているわけではない。むしろ、宇宙から見たら我々はまだまだ赤子同然の知識量なのだろう。だからこそ未知の多い宇宙に想像力を広められるんだろうし、我々は宇宙に不思議と取りつかれ引き込まれる。そこに見えないブラックホールがあるように。その先にあるのは破滅か? ……今のは忘れてくれ」
「どうして破滅だと思うんですか?」
「人間が興味を持ち無邪気に新しいものを発明していった先にはそれらは戦争の道具として利用されてきた。人間の進化は誰も止められない。いや、人間には止められない。侵略者がやたら自然にラブなのは我々の進化に対して自然がブレーキをかけたのかもしれない。それは運命か…… 。侵略者が現れなければ人類は宇宙には宇宙人がいる可能性をずっと持ち続け探し続けていたかもしれない。それがとても危険な行いであり、その後のことを全く考えられていない愚行だと知らずに。宇宙人が先に我々を見つけるか、我々が先に見つけるかという問題より、私は宇宙人が例えいたとしても互い無干渉でいた方がいいと考える。しかし、どちらか片方が干渉を始めれば我々は宇宙を危険なものとして考えるようになるだろう。世の中には知らなくていいこともある。その方が平和だ」
「しかし、宇宙人が先に我々を見つけたらどうしますか?」
「どうもならない。我々はそれを直に学んだ」
「まるで人類の敗北が決まっているような考えだな」とリウは言った。
「我々の技術がいかに自信過剰であったと知ったのは、この広大な宇宙に比べればちっぽけに過ぎないことを実感したからだ。それにな、宇宙人が例え存在したとしても、その宇宙人が我々の星までやって来れるのかという問題は無視してはならない。我々以上の文明を持っているとも限らない。宇宙という歴史を考えれば人類の歴史は短いものだ。人類が生まれる前に宇宙のどこかで文明が生まれ、そして滅んでいったかもしれない。宇宙にはあらゆる可能性があり、我々はそれら全てを言い当てることも考えることも出来ない。広大で更に膨張を続ける宇宙を考えるのに人類の脳みそでは小さ過ぎるのだ」
宇宙に比べたら確かにマーティンの言う通り人類はちっぽけかもしれない。しかし、宇宙にまで飛び出し文明を広げてきた人類がちっぽけなままでいただろうか? それは単に歴史が宇宙に比べ浅いからではないのか。
三人の会話の途中、突然空からエンジン音が聞こえてきた。三人は一同に空を見上げた。オレンジ色の空に見たことのないV字型の宇宙船が飛んでいた。
遠くに目をやると、黄色に光っている森が見える。
「森があるのか!?」
この星に生命が宿っているのか? そう言えば自分は宇宙服のヘルメットをしていない。ここに酸素があるんだ。
すると、後ろから「無事だったか」とリウから声がかかった。
ランスは振り向くとそこにはもう一人マーティン博士もいた。二人ともヘルメットはしていない。聞くと二人もこの星に酸素があることに驚いたらしい。
「そう言えば僕達が乗ってきた宇宙船は?」
二人は近くにある壊れた宇宙船を見た。かなり時間がたっているようで後ろ半分は折れている。所々大小様々な穴もあった。どう見ても僕達が乗っていた宇宙船とは違う。
リウはあれを見て「あの宇宙船は何だ?」と言った。
「おかしい……我々以外にこの星に来たものがいるなんて」
マーティン博士がそう言ってから僕は気がついた。この星に来た者ならだいぶ昔にいる。
「父さんの船だ」
「父さん?」
「ランス……」
「父さんは無事だったんだ!」
父さんとの記憶がほとんどないのにランスは嬉しい気持ちになった。可能性が見えてきた。
「父さんを探そう」
「どうやって?」
「それは……」
「その前にこの星について我々は何も知らない。何もだ。それは未知の世界だ。だから、我々はまずこの星について知る必要がある。まずは食料。これは喫緊の課題だな。それからこの星に生命がいるなら、我々は警戒した方がいい。とは言え、武器もない我々に戦うすべはないが」
「なら、あんたに任せるよ。俺達はどうすればいい?」
「それじゃルールを決めよう。まず、食料を見つけたら均等に分配。何か発見したらまず知らせろ」
「そのルールなら問題ない」
「僕もです」
「それじゃ食料探しだが、辺りを見渡す限りはあの光る森へ行ってみるしかないだろ。何故森が光っているのかは謎だが」
こうして三人は森に向かって歩き出した。
「そう言えばマーティン博士。どうやって私達は助かったんでしょうか?」
「それは私にも分からない」
会話はそこで途絶え、沈黙が暫く続いた。
ランスは歩きながらここに来るまでの過程を思い出そうとした。侵略者が突然僕達の星に現れ攻撃してきて、僕達は一度連中に捕獲された。それから、連中の目を盗み宇宙船で脱出した。宇宙船での脱出の提案はマーティン博士だった。宇宙船の操縦の仕方は宇宙で仕事したことがあるリウが知っていた。マーティン博士は宇宙局が管理していた宇宙船の場所を知っていてそれで僕達は協力することになった。大勢を連れ出したかったが、大人数だとリスクが高くなると理由で僕達三人だけで脱出することに。それからなんとか宇宙船を飛ばし宇宙へと出たが、そこに銀色の円盤が自分達宇宙船を追いかけに来た。リウはとにかく逃げることに専念した。連中は直ぐには攻撃することはなく、まるで僕達を追いかけ回して楽しんでるみたいだった。すると、例の星……父さんが調査に向かいそこで消息が絶たれた星を見つけた。僕はとっさに「そこに逃げて」とリウに命令した。リウは操縦桿をそちらに向けた。リウもそれ以外に方法はないと判断したようだった。マーティン博士は自殺行為だと大声をあげていたが、だからこそ連中がそこまで危険を犯して僕達を追いかけるとは思えなかった。
僕達の狙い通り連中は嵐の中に突っ込む宇宙船を見て追いかけるのをやめた。きっと連中は「馬鹿め」とあざ笑ったに違いない。でも、僕達はこうして無事だ。それに運の良いことにこの星には酸素がある。
宇宙船からの脱出に成功した僕達は今、この星で歩み続けていた。
未だ、僕達がどうやって助かったのか、そして僕達が乗っていた宇宙船はどこへ消えたのか、何故消えたのかは分からない。もしかすると神様が用意したあの世なのかもしれない。
僕はふと振り返った。壊れた宇宙船は遠くにあるが、思った以上に距離が離れていなかった。僕達は森に向かって歩いているが距離が思った以上にあるせいか進んだ気がしなかったが、そうではなかった。僕達はどうしてかそんなに歩いてはいなかった。なのに、感覚としてはかなり歩いた気でいた。
「かなり距離がありそうですね」と僕は呟いた。マーティン博士はそれに答える。
「どうやらこの星のGは我々の星と違うようだ」
星によってGが違うのは知っていたが、SF小説を読むと自然と宇宙船以外は自分達のいる星と同じGで想像してしまう。
「マーティン博士、この星に宇宙人がいたらどうします?」とリウは質問した。
「マーティンでいい。私もこの宇宙の全てを知っているわけではない。むしろ、宇宙から見たら我々はまだまだ赤子同然の知識量なのだろう。だからこそ未知の多い宇宙に想像力を広められるんだろうし、我々は宇宙に不思議と取りつかれ引き込まれる。そこに見えないブラックホールがあるように。その先にあるのは破滅か? ……今のは忘れてくれ」
「どうして破滅だと思うんですか?」
「人間が興味を持ち無邪気に新しいものを発明していった先にはそれらは戦争の道具として利用されてきた。人間の進化は誰も止められない。いや、人間には止められない。侵略者がやたら自然にラブなのは我々の進化に対して自然がブレーキをかけたのかもしれない。それは運命か…… 。侵略者が現れなければ人類は宇宙には宇宙人がいる可能性をずっと持ち続け探し続けていたかもしれない。それがとても危険な行いであり、その後のことを全く考えられていない愚行だと知らずに。宇宙人が先に我々を見つけるか、我々が先に見つけるかという問題より、私は宇宙人が例えいたとしても互い無干渉でいた方がいいと考える。しかし、どちらか片方が干渉を始めれば我々は宇宙を危険なものとして考えるようになるだろう。世の中には知らなくていいこともある。その方が平和だ」
「しかし、宇宙人が先に我々を見つけたらどうしますか?」
「どうもならない。我々はそれを直に学んだ」
「まるで人類の敗北が決まっているような考えだな」とリウは言った。
「我々の技術がいかに自信過剰であったと知ったのは、この広大な宇宙に比べればちっぽけに過ぎないことを実感したからだ。それにな、宇宙人が例え存在したとしても、その宇宙人が我々の星までやって来れるのかという問題は無視してはならない。我々以上の文明を持っているとも限らない。宇宙という歴史を考えれば人類の歴史は短いものだ。人類が生まれる前に宇宙のどこかで文明が生まれ、そして滅んでいったかもしれない。宇宙にはあらゆる可能性があり、我々はそれら全てを言い当てることも考えることも出来ない。広大で更に膨張を続ける宇宙を考えるのに人類の脳みそでは小さ過ぎるのだ」
宇宙に比べたら確かにマーティンの言う通り人類はちっぽけかもしれない。しかし、宇宙にまで飛び出し文明を広げてきた人類がちっぽけなままでいただろうか? それは単に歴史が宇宙に比べ浅いからではないのか。
三人の会話の途中、突然空からエンジン音が聞こえてきた。三人は一同に空を見上げた。オレンジ色の空に見たことのないV字型の宇宙船が飛んでいた。
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