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1章 魅力
02 美の魅力
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私は綺麗なものが好きだった。最初は艶々の石だった。それから綺麗な夜空。キラキラと光るお星さま。その内、周りの人達は私を見てとても私を可愛がってくれた。べっぴんさんにきっとなるだろうって。それからは綺麗なものは自分のものになった。やがて、大人達が持っている宝石にも興味を持つようになった。色んな男子に声がかかるようになった。私は幸せだった。
でも、私より綺麗な人が転校してくると事態は変わり、男子の一部はその子に目がいくようになった。ほとんどの男子は私を見てくれるのに、その転校生は他の女子からも人気があった。私はそれが許せなかった。
私はじっと鏡を見て自分に足りないものを探す時間に多くを費やした。
そのうち、男子の一人が私や転校生ではない、そこまで可愛くない女子に惚れていた。私には全く分からなかった。
そんな私をおばは心配するようになった。独占欲は不幸しかないとおばは言った。男の心を全て奪える美は魔性として恐れられ、美を求め振り向いてもらう為に男は殺し合ってしまうのだと。そんな美があるのかと私は聞いた。おばは嘘つきだった。そんな見たこともないのに想像だけで語るなんて信用出来ない。でも、もしおばの言う通りなら私はそれを手に入れたいと思った。
そこへ、私のところに果実が転がり込んできた。禁断の果実と呼ばれたその名とは裏腹に綺麗な赤色をしていた。私はそれを口にした。
するとどうだろうか。私以外に綺麗で美しいものはいなくなった。ただ、最近突然強い睡魔に襲われることが起きるようにもなった。多分、果実の副作用かもしれない。でも、生活に支障がでる程ではなかった。
気がつくと私は鏡の前に立っていた。鏡の前で私は血だらけになっていた。頬にも手にも髪にも服にも。私はそれを見てなんだか可笑しくて笑ってしまう。とても気持ちが良かった。
やがて私はモデルになった。私の名は世間に広まった。社長は「お前なら世界をとれるぞ」と言ってくれた。私は「余裕よ」と答えた。だってそうだ、私は禁断の果実を口にしたんだから。
モデルには沢山のライバルがいた。でも、何故か突然そのライバルは姿を消した。私にはどうでもいいことだった。だってそうでしょ? 私には都合がいいことなんだもの。
私はいつものようにメイクさんに綺麗にしてもらい、私は美しい状態でステージの上に立つ。
「社長がお呼びです」
社長からの突然からの悲報。
「残念だがもう雇うわけにはいかない」
「どうして? どうしてなの? 私に世界をとらせてくれるんじゃなかったの?」
「お前のマネージャーが見てしまったんだ。お前が鏡の前でずっと笑っているのを。まるで取り憑かれているようだって。他にもお前の奇行を他のメンバーや同業者から聞いてるぞ」
「なによ、ライバルが私に嫉妬して蹴落そうとしているだけよ。本気にしないで。私なら世界は取れる。そうでしょ? 社長」
「あぁ。お前は美しい。だが、モデルが精神に問題があるとしたら契約は難しい。お前には治療が必要だ」
私は勢いよくテーブルの上を叩いた。振動で灰皿がズレた。
「分かってるでしょ! それは私に引退しろって言ってることになるって」
「だからそう言っている」
「どうして……信用してたのに」
何故こうなるの? 何故分かってくれないの? 私はもっと輝きたいだけなのに。
「お、お前……」
社長は腰を抜かして私を指差した。私の顔になにかついているのか? 私は社長室にある鏡を見た。するとそれはまるで別人かのようにしわくちゃなシワだらけの青白いおばあちゃんの姿になっていた。
「あああ!! 私の顔が……私の美しい顔がぁ!!」
社長は這いずりながら逃げようとした。
「だめぇー!!」
私は社長に跨り捕まえると、社長の首を絞めた。
社長は私の両手の中で息を止めた。
「あぁ……私……社長、社長!」
しかし、社長は返事をしなかった。
「そんな……死んでる。なんで……」
ふと、あの鏡に映る自分を見た。顔は元に戻っていた。美しい自分が。
「あれ? あれ?」
それはいつもの私だった。
私はなにを恐れていたのか? あの時に映った姿はなんだったのか。
それからというもの、最近鏡を見るのが怖くなった。また、自分の顔が年老いた姿になったんじゃないかって。私は怖くて怖くて怖くて怖くて……あれ?
私は鏡の前に立った。いつもの顔。ホッとしてから急に怒りを感じた。
「そうよ! 私は美しい。なのに、鏡のせいで私の人生は滅茶苦茶よ!」
私は鏡を割った。砕けた鏡の破片が洗面台に落ちる。
チャイムが鳴った。
ドアを開けると、スーツ姿の警察数名が立っていた。
「殺人容疑の逮捕状が出ている」
警察は手錠を出してきた。私はそれを見て刑事を押し倒した。
「抵抗するな!」
他の警察が逃げようとする女を取り押さえようとした。だが、女の必死な抵抗に警察達と押し合いになった。そして、女が押し出され三階から外へ落ちると、顔面からその真下の塀に落下して。
「なぁ、ソフィー。お前が美人だと褒めてたモデル、亡くなったそうだぞ」
「知ってるわよ。まさか殺人だなんて……」
「人は見た目によらないな」
記事によれば逃亡しようとしたそのモデルは三階から落ち顔面から着地。顔はぐちゃぐちゃで原形がなかったそうだ。
「確かそのモデルも禁断の果実を口にしたんじゃないかって噂だったな」
「噂でしょ」
「だが、もし本当ならそのモデルは美に取り憑かれ呪われ死んだってことになる」
「美を追求するあまり周りが見えなくなったって? それってまるで」
「あぁ。マイソンの時と同じだ」
「ねぇ、魅力はそんなに悪いの?」
「これは善とか悪とかじゃない。それだけを求めても駄目だってことさ。もっと本質的なものを追求しないといけないんだろ」
放課後。
今日は珍しく俺は一人で帰ることになった。ソフィーは今日は当番だった。その帰り道のベンチに赤い林檎がポツンと置かれてあった。わざとらしく堂々と。
「誰がこんなものを置いたんだ?」
俺は林檎を手に取って持ち上げた。綺麗な赤色だった。
「禁断の果実……まさかな」
俺はそれを思いっきりフルスイングして遠く彼方へと投げ飛ばした。
「ふん、あんなものに頼ろうとするなんてどうかしてる」
俺はそう言って校門を出た。
その頃、エマが投げ飛ばした林檎は転がり、形は全く崩れていなかった。そして、偶然通りかかった通行人がその林檎を見つけて、それを拾い上げるとそれを開けた口の中へ…… 。
でも、私より綺麗な人が転校してくると事態は変わり、男子の一部はその子に目がいくようになった。ほとんどの男子は私を見てくれるのに、その転校生は他の女子からも人気があった。私はそれが許せなかった。
私はじっと鏡を見て自分に足りないものを探す時間に多くを費やした。
そのうち、男子の一人が私や転校生ではない、そこまで可愛くない女子に惚れていた。私には全く分からなかった。
そんな私をおばは心配するようになった。独占欲は不幸しかないとおばは言った。男の心を全て奪える美は魔性として恐れられ、美を求め振り向いてもらう為に男は殺し合ってしまうのだと。そんな美があるのかと私は聞いた。おばは嘘つきだった。そんな見たこともないのに想像だけで語るなんて信用出来ない。でも、もしおばの言う通りなら私はそれを手に入れたいと思った。
そこへ、私のところに果実が転がり込んできた。禁断の果実と呼ばれたその名とは裏腹に綺麗な赤色をしていた。私はそれを口にした。
するとどうだろうか。私以外に綺麗で美しいものはいなくなった。ただ、最近突然強い睡魔に襲われることが起きるようにもなった。多分、果実の副作用かもしれない。でも、生活に支障がでる程ではなかった。
気がつくと私は鏡の前に立っていた。鏡の前で私は血だらけになっていた。頬にも手にも髪にも服にも。私はそれを見てなんだか可笑しくて笑ってしまう。とても気持ちが良かった。
やがて私はモデルになった。私の名は世間に広まった。社長は「お前なら世界をとれるぞ」と言ってくれた。私は「余裕よ」と答えた。だってそうだ、私は禁断の果実を口にしたんだから。
モデルには沢山のライバルがいた。でも、何故か突然そのライバルは姿を消した。私にはどうでもいいことだった。だってそうでしょ? 私には都合がいいことなんだもの。
私はいつものようにメイクさんに綺麗にしてもらい、私は美しい状態でステージの上に立つ。
「社長がお呼びです」
社長からの突然からの悲報。
「残念だがもう雇うわけにはいかない」
「どうして? どうしてなの? 私に世界をとらせてくれるんじゃなかったの?」
「お前のマネージャーが見てしまったんだ。お前が鏡の前でずっと笑っているのを。まるで取り憑かれているようだって。他にもお前の奇行を他のメンバーや同業者から聞いてるぞ」
「なによ、ライバルが私に嫉妬して蹴落そうとしているだけよ。本気にしないで。私なら世界は取れる。そうでしょ? 社長」
「あぁ。お前は美しい。だが、モデルが精神に問題があるとしたら契約は難しい。お前には治療が必要だ」
私は勢いよくテーブルの上を叩いた。振動で灰皿がズレた。
「分かってるでしょ! それは私に引退しろって言ってることになるって」
「だからそう言っている」
「どうして……信用してたのに」
何故こうなるの? 何故分かってくれないの? 私はもっと輝きたいだけなのに。
「お、お前……」
社長は腰を抜かして私を指差した。私の顔になにかついているのか? 私は社長室にある鏡を見た。するとそれはまるで別人かのようにしわくちゃなシワだらけの青白いおばあちゃんの姿になっていた。
「あああ!! 私の顔が……私の美しい顔がぁ!!」
社長は這いずりながら逃げようとした。
「だめぇー!!」
私は社長に跨り捕まえると、社長の首を絞めた。
社長は私の両手の中で息を止めた。
「あぁ……私……社長、社長!」
しかし、社長は返事をしなかった。
「そんな……死んでる。なんで……」
ふと、あの鏡に映る自分を見た。顔は元に戻っていた。美しい自分が。
「あれ? あれ?」
それはいつもの私だった。
私はなにを恐れていたのか? あの時に映った姿はなんだったのか。
それからというもの、最近鏡を見るのが怖くなった。また、自分の顔が年老いた姿になったんじゃないかって。私は怖くて怖くて怖くて怖くて……あれ?
私は鏡の前に立った。いつもの顔。ホッとしてから急に怒りを感じた。
「そうよ! 私は美しい。なのに、鏡のせいで私の人生は滅茶苦茶よ!」
私は鏡を割った。砕けた鏡の破片が洗面台に落ちる。
チャイムが鳴った。
ドアを開けると、スーツ姿の警察数名が立っていた。
「殺人容疑の逮捕状が出ている」
警察は手錠を出してきた。私はそれを見て刑事を押し倒した。
「抵抗するな!」
他の警察が逃げようとする女を取り押さえようとした。だが、女の必死な抵抗に警察達と押し合いになった。そして、女が押し出され三階から外へ落ちると、顔面からその真下の塀に落下して。
「なぁ、ソフィー。お前が美人だと褒めてたモデル、亡くなったそうだぞ」
「知ってるわよ。まさか殺人だなんて……」
「人は見た目によらないな」
記事によれば逃亡しようとしたそのモデルは三階から落ち顔面から着地。顔はぐちゃぐちゃで原形がなかったそうだ。
「確かそのモデルも禁断の果実を口にしたんじゃないかって噂だったな」
「噂でしょ」
「だが、もし本当ならそのモデルは美に取り憑かれ呪われ死んだってことになる」
「美を追求するあまり周りが見えなくなったって? それってまるで」
「あぁ。マイソンの時と同じだ」
「ねぇ、魅力はそんなに悪いの?」
「これは善とか悪とかじゃない。それだけを求めても駄目だってことさ。もっと本質的なものを追求しないといけないんだろ」
放課後。
今日は珍しく俺は一人で帰ることになった。ソフィーは今日は当番だった。その帰り道のベンチに赤い林檎がポツンと置かれてあった。わざとらしく堂々と。
「誰がこんなものを置いたんだ?」
俺は林檎を手に取って持ち上げた。綺麗な赤色だった。
「禁断の果実……まさかな」
俺はそれを思いっきりフルスイングして遠く彼方へと投げ飛ばした。
「ふん、あんなものに頼ろうとするなんてどうかしてる」
俺はそう言って校門を出た。
その頃、エマが投げ飛ばした林檎は転がり、形は全く崩れていなかった。そして、偶然通りかかった通行人がその林檎を見つけて、それを拾い上げるとそれを開けた口の中へ…… 。
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