楽園の外の住人

アズ

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本編前のあらすじ

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 醜い魔女はお城に住む王子様を欺く為に魔法で美女の姿へと変装し、王子はその魔女に一目惚れし、二人は永遠に結ばれることになった。しかし、王子がその魔女と結婚してからというもの、国の内政は悪化していくばかりで国民には沢山の税をかけ、自分達は裕福に暮らしていた。国民達の不満は爆発し、その女の処刑を求める声は高まるばかりだった。そして、一部の民衆が立ち上がり革命を起こす為に密かに城内部の情報を人脈を通じて流してもらうのだが、それはとても危険なことだった。革命は即ち国家反逆罪であり、重罪に該当する。捕まれば処刑という確定刑であり、なんとしても極秘で行われる必要があった。メンバーも厳選された少数で計画されたが、最後の最後でメンバーの裏切りを受け、裏切りのピーターを除き全員は捕まり見せしめの公開処刑にされる。ピーターは初期からいたメンバーで誰もがピーターを疑いもせず、彼にはメンバーのプライベートの情報まで打ち明けてしまっていた。結果、処刑後にその重罪人の家族も国境寸前で捕まり、その家族もまた処刑に処されることになる。国民は声を大にして言えないが、このどうしようもない政治が早く終わればと望んでいた。それだけにピーターの裏切りを知ってか『嘘つきピーター』というあだ名が広がった。
 その事件をきっかけに、国民に対する監視がより強化され、通報を受ければ武器を装備した兵士達がその家に来て家宅捜索を受ける。拒否する権利はなく、時にその場で逮捕されたりする者も現れた。たいした証拠もないのに裁判にかけられ、だいたいの確率は有罪となった。次第に国民は自分達の周りを信用できなくなり、気に入らない人物や通報される前にでっちあげで他の人物を通報したりと、誤認逮捕が相次いだ。不信感は人と人の関係に大きな壁ができ、街の通行人も挨拶が無くなり、無口が増えた。時に気に入られるように媚びる努力をし、それに疲れた人達は都市から離れていった。
 そして、一体感のない愛国心が薄れた国は脆く、その状況に早く察知した隣国のグラは攻め込む為の戦争の準備を整える。それに対して慌ててこちらも準備の為の召集令状を国民にかけた。徴兵された多くの兵士達は特に訓練も受けることなく戦場に出され、戦地で多くの犠牲を出す。周辺国も、隣国のグラも勝敗はついたかに思われた。だからこそグラは敗北を認めるよう国王に人を寄越した。だが、あろうことかその使者を魔女が殺してしまう。王子は顔を真っ青にして何故殺したのか問い詰めるが、その女の顔は冷徹なまでに慌てる様子もなく王子に「この戦争で逆転し成果を残せば国民はあなたに従うでしょう」と告げ、自分の不人気を取り戻したかった王子はつい魔女の言葉に耳を傾けてしまう。
 魔女は特殊部隊に敵地へ忍び込み、魔女特製の毒を井戸へ投げ込むよう命令する。
 こうしてグラの人々は突然体調を崩し、未知の感染症だと思い込みグラ国内は大混乱。更に死者も増加し、この状況を利用して一気に攻め込んだ。勿論、王子は魔女が裏でしたことを知らない。
 結果、グラが敗北を認め周辺国に衝撃を与えた。王子は国内の人気を取り戻し、魔女はこれを好機と判断し同じ毒で国王を暗殺。王子が国王となる。
 シルヴェストン都市で新国王が歓迎され、その横に魔女は堂々と存在感を民衆に見せつけた。自分を認めなければどうなるか、それを知る者は誰もが口を閉ざした。


 余計なことを口にしなければ神はお前達を見逃してくれる。


 魔女が家来に言った言葉だ。心の中でどう思っていようと自分に反抗しなければ罪には問わないという意味だ。心までは支配出来ないことを認めた上で、行動に対して絶対忠誠を誓わせた。
 巧みに人事にも口を出し、自分の周りに都合のいい人物でかためていき、国政にまで口を出すようになった。しかし、誰も不満を口に出せる状況にはなかった。
 対してグラは戦争の敗北で土地の25%を奪われ、更に多額の賠償金を支払う為に一気に貧しくなり、人間の売り買いが起きていた。
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