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●支えてくれる人

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1時間以上、玄関に座り込んでいた。

立ち上がれない。
力が全く入らない。

手に違和感を感じて、見てみると、手が細かく震えていた。


それを見て、治まりかけていた涙が、また目にあふれてくる。


大好きな人ともう会えなくなる。
こんなにつらいこととは、知らなかった。


隆也と会えなくなることを、私の体は全身で拒否してるようだ。


手の震えも。

力が入らない足も。


体は正直だ―――


私は隆也に本音を見せずに、別れを受け入れた。

本当は嫌だったのに、子供みたいにだだをこねたかった。

何で私は隆也に、自分の本当の気持ちをぶつけられないんだろう。



スマホが鳴っている。

私は力なく、玄関に放ってあったバックの中からスマホを取り出した。


少し迷って、通話ボタンを押して、電話に出る。


『もしもし・・・』

『おー、由希ちゃん?』

『うん、シュン?』

『おぅ』


電話をかけてきたのはシュンだった。


もしかして隆也かなぁ・・・なんて、一瞬期待してしまった自分が滑稽だ。


『シュン、どうしたの?』

『由希ちゃん、何かあったでしょ?』


驚いた。

何で、シュンにわかってしまったんだろう。


『何で・・・?』

『声が暗い。それに、さっき様子がおかしかったから。だからちょっと心配になって、電話してみたんだけどさ』

『・・・・・・』


さっきの様子を心配してかけてくれたらしい。

シュンは本当に優しい。

でも今は優しくしないで欲しい。

優しくされると、我慢していた涙が又出てきてしまいそうになる。



『・・・・で、何があった?』

『さっき、隆也と会った。隆也がうちの前で待ってたんだ』

『・・・・・』

『それでね、隆也はまどかと結婚したいんだって・・・だから私とはもうね・・・』



そこから、私は話せなくなってしまった。

堰をきったように、涙がどんどん溢れてきたから。


我慢してたのに。

もう私はしゃくりあげることしか、できなかった。
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