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受け視点
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そんな虚しい想いを抱えていた私だが、ある日突然、周囲が騒がしくなった。
少し前よりぴりぴりとした雰囲気を醸し出していた使用人に尋ねると『反乱が起きた』と口早に言い、私を突き飛ばして金目の物を漁って立ち去った。
それからしばらく経って、鬼気迫った顔をした兵士が私を部屋から引きずるように連れ出そうとした。
しかし廊下を進む途中で別の色の制服を着た兵士の大群に捕らえられ、また部屋へと逆戻りをする。
そのまま3日ほど部屋に閉じ込められて、それから再び兵士が部屋へとやってきて床に頭を下げる私を見下ろした。
『新王の息子のものとなることが決まった』
その兵士が告げた言葉に、かくりと気が抜けたような気持ちだった。
前の王が居た時と変わらないのか。
ただ、相手が変わっただけ。
次の相手はそれほど嗜虐趣味がないといい。
頭の片隅にそんな思いが浮かんで、馬鹿な考えだとすぐに否定する。
殴り甚振る趣味でもなければこんな体を抱きたいと思う男はいない。
こんな男を温かな腕で抱きしめたいと思う人など、いるはずないのだから。
心を凍らせて支度をして夜を待った。
前の王の時よりもずっと質の良い服を与えられて、部屋で待つように言われる。
相手の部屋を訪れることが常だったので、嫌に緊張した。
酷く甚振られてもそのまま気を失っていることができるから、有難いと思うべきなんだろうか。
外は雨が降っている。
いつかの夜のような大雨ではない。
ただ、しとしとと音を立てて大地を濡らしている。
ぼんやりと過ぎてしまった日のことを思い出していると、扉の外から幾人かの足音がした。
彼らは少しだけそのまま会話をし、それから僅かな音を立てて扉が開かれて。
あの男が、護衛だった男が現れた。
前よりもさらに逞しくなった体。
以前よりも落ち着きを増した目元。
だけど変わらず厳めしい顔。
僅かに歳を重ねた、だが間違いようもなくあの護衛の男が立っていた。
……まさか、彼は再び私の護衛になったんだろうか。
まさか。
心の中にほんの少しだけ期待が沸き起こる。
心臓が早鐘を打ち胸が騒いだ。
彼は私のことを忘れずにいてくれたんだろうか。
数年前にほんの僅かに話しただけの私を。
この王宮で唯一私に暖かさを与えてくれた男は、もう一度、ここから私を助けようとしてくれるのか。
実際に逃げることは私はしないだろう。
それは前も今も変わらない。
だけど、再び彼が逃げるべきだと言って、抱きしめてくれるなら……それだけでどれほど心の寄る辺になるか。
何も言わずにこちらを見つめる男に、緊張で唾を飲み込むと喉が鳴った。
「また、……私を逃がそうとしてくれるのか」
縋るような気持ちで呟いた言葉は震え、掠れていた。
期待しているのが自分でもありありと分かる、情けない声だった。
本当に逃がそうとしてくれなくていい。
ただ私の手を引いてくれたら。
その腕を回してくれたら。
それだけでいい。
そう思ってふらりと立ち上がる。
……だが。
男は私の言葉を聞くと、酷く酷く苦しそうな顔をして、首を横に振った。
「……違うのか」
違う。
そうか、違うのか。
逃げるように言われても断るつもりだったのに、なぜか魂が抜け落ちたような声が出た。
私は何を愚かなことを考えたんだ。
なぜ彼が再び助けてくれようとするなんて思ったんだ。
一度突っぱねた私に再び手を差し伸べるなんて、そんな奇特な真似するわけがない。
あの夜に私を逃がそうとしたことも、彼にとっては気の迷いかもしれない。
そのただの気まぐれの温もりに縋って今まで生きてきたけれど、彼はただの護衛だ。
監視役でもある。
その彼が部屋に来て、することなんて逃げないようにと見張りしかない。
馬鹿な、馬鹿すぎる質問をしてしまった。
胸の奥が詰まったような気分になり、は、と無理やり息を吐く。
だがどうしても体が震えて気分が悪い。
心の支えが取れてしまったようだった。
真っすぐ立っていることもできず、目の前がぐらりと揺れた。そう思ったら、強い力で引き寄せられた。
「……あなたを祖国には帰さない」
いつかと同じ、うっすらと甘い香の匂いがする。
あの夜と同じ、きつすぎるほど力強い腕が体を締め付けている。
温かな胸に抱きしめられたのだと気が付いて目を見開いた。
こんなところを、新しい主人に見られたら咎められる。
私だけではなくてきっとこの男も。
縋りつきたい気持ちを抑えて胸を押すと、より一層強い力で腕の中に閉じ込められた。
「だから俺も、酷い男なんだろうな。前の王と同じだ」
私の抵抗を抑えつけた男が耳元で低く囁く。
その声にはどこか自嘲的な暗い響きがあった。
「でも俺は絶対に暴力は振るわないし、あなたを他の男に差し出したりなんかしない。貢物ももう不要だ。俺を伴うなら、あなたの祖国を訪れることもしよう」
「なにを、言って……」
溢れるように呟かれる言葉に頭が付いて行かない。
私の処遇も貢物も、祖国へ行くことだって護衛には決定権なんてなにもないはず。
混乱して身を捩る私に、彼はまるで縋るように囁いた。
「だからどうか、この国で共にいてくれ」
共に。
彼と、共にという意味か?
だがそれだって新しい主人が許すとは思えない。
「待ってくれ。私の、新しい主人は、」
「権力を使って言うことを聞かせるのは卑怯だと分かっている。その力だって俺ではなく父のものだ。だが、お前が他の男に攫われるのも祖国へ帰るのも許せない」
腕の力を抜いた男の胸から、ようやく顔だけを引き剥がす。
そうして彼の言葉に首を傾げた。
彼の父の力とは、何を言っているんだろうか。
たしか昔、国の高官だとは言っていた気がするが、それが何だと言うんだ。
「俺のもとにいた方が、他の男に貰われるよりも安全だ。酷いこともしない」
怖い顔で男は再び私のことを締め上げてくる。
背骨が軋むほど強く抱かれているが、これは酷いことには入らないのだろうか。
そんな考えが頭の隅に浮かぶが、それよりも大事なことをこの男は言っていなかっただろうか。
どうにか男の服へと視線を向けると、明らかに護衛のものとは思えない上質な服。
しかもどこか高貴な人間の寝間着のように見える。
そしてどれだけ待っても部屋に訪れない私の『新しい主人』。
じわじわとあり得ないはずの答えが導き出されていって、そんな馬鹿なことあるかと思いながらも疑問を口にした。
「待て。お前が……、私の新しい主人なのか……?」
「嫌か。嫌だろうな。だが耐えてくれ」
男は苦しそうに吐き捨てると、厳めしい顔をさらに恐ろしく歪めた。
腕の力は逃げることなんてできないほど強い。
言葉も強く声には張りがある。
なのになぜだろうか。
あの夜のように、男の体が震えている気がして。
「……嫌なわけ、ないだろう」
思わずその背中に、腕を回した。
私の細い腕が触れるだけで、大きな男の体がびくりと動く。
それを宥めるように何度か撫でると、少しづつ彼から腕の力が抜けていった。
「次の私の主人はまともな男であれば、と思っていたんだ」
ずっと、あの夜から彼に心が囚われていたのだと告げることはできず、わざと強がるような言葉を口にする。
だがそれでも男はほっと小さく息を吐いて笑った。
はじめて見た笑顔だ。
その笑顔を見て、私はこの男のものになったのだと、体から全ての力が抜けていくようだった。
彼が何を思って私を引き受けたのかは分からない。
前の王から飽きられかけていた私なんてそれほど利用価値もないだろう。
祖国へ訪れると言った言葉もどこまで本当か分からない。
それでも。
もう二度と、この体温を感じることはないと思っていた。
誰かに抱きしめられることなど、もうないのだと。
そのぬくもりに再び包まれて、私は数年ぶりにようやく息ができた気がした。
そんな虚しい想いを抱えていた私だが、ある日突然、周囲が騒がしくなった。
少し前よりぴりぴりとした雰囲気を醸し出していた使用人に尋ねると『反乱が起きた』と口早に言い、私を突き飛ばして金目の物を漁って立ち去った。
それからしばらく経って、鬼気迫った顔をした兵士が私を部屋から引きずるように連れ出そうとした。
しかし廊下を進む途中で別の色の制服を着た兵士の大群に捕らえられ、また部屋へと逆戻りをする。
そのまま3日ほど部屋に閉じ込められて、それから再び兵士が部屋へとやってきて床に頭を下げる私を見下ろした。
『新王の息子のものとなることが決まった』
その兵士が告げた言葉に、かくりと気が抜けたような気持ちだった。
前の王が居た時と変わらないのか。
ただ、相手が変わっただけ。
次の相手はそれほど嗜虐趣味がないといい。
頭の片隅にそんな思いが浮かんで、馬鹿な考えだとすぐに否定する。
殴り甚振る趣味でもなければこんな体を抱きたいと思う男はいない。
こんな男を温かな腕で抱きしめたいと思う人など、いるはずないのだから。
心を凍らせて支度をして夜を待った。
前の王の時よりもずっと質の良い服を与えられて、部屋で待つように言われる。
相手の部屋を訪れることが常だったので、嫌に緊張した。
酷く甚振られてもそのまま気を失っていることができるから、有難いと思うべきなんだろうか。
外は雨が降っている。
いつかの夜のような大雨ではない。
ただ、しとしとと音を立てて大地を濡らしている。
ぼんやりと過ぎてしまった日のことを思い出していると、扉の外から幾人かの足音がした。
彼らは少しだけそのまま会話をし、それから僅かな音を立てて扉が開かれて。
あの男が、護衛だった男が現れた。
前よりもさらに逞しくなった体。
以前よりも落ち着きを増した目元。
だけど変わらず厳めしい顔。
僅かに歳を重ねた、だが間違いようもなくあの護衛の男が立っていた。
……まさか、彼は再び私の護衛になったんだろうか。
まさか。
心の中にほんの少しだけ期待が沸き起こる。
心臓が早鐘を打ち胸が騒いだ。
彼は私のことを忘れずにいてくれたんだろうか。
数年前にほんの僅かに話しただけの私を。
この王宮で唯一私に暖かさを与えてくれた男は、もう一度、ここから私を助けようとしてくれるのか。
実際に逃げることは私はしないだろう。
それは前も今も変わらない。
だけど、再び彼が逃げるべきだと言って、抱きしめてくれるなら……それだけでどれほど心の寄る辺になるか。
何も言わずにこちらを見つめる男に、緊張で唾を飲み込むと喉が鳴った。
「また、……私を逃がそうとしてくれるのか」
縋るような気持ちで呟いた言葉は震え、掠れていた。
期待しているのが自分でもありありと分かる、情けない声だった。
本当に逃がそうとしてくれなくていい。
ただ私の手を引いてくれたら。
その腕を回してくれたら。
それだけでいい。
そう思ってふらりと立ち上がる。
……だが。
男は私の言葉を聞くと、酷く酷く苦しそうな顔をして、首を横に振った。
「……違うのか」
違う。
そうか、違うのか。
逃げるように言われても断るつもりだったのに、なぜか魂が抜け落ちたような声が出た。
私は何を愚かなことを考えたんだ。
なぜ彼が再び助けてくれようとするなんて思ったんだ。
一度突っぱねた私に再び手を差し伸べるなんて、そんな奇特な真似するわけがない。
あの夜に私を逃がそうとしたことも、彼にとっては気の迷いかもしれない。
そのただの気まぐれの温もりに縋って今まで生きてきたけれど、彼はただの護衛だ。
監視役でもある。
その彼が部屋に来て、することなんて逃げないようにと見張りしかない。
馬鹿な、馬鹿すぎる質問をしてしまった。
胸の奥が詰まったような気分になり、は、と無理やり息を吐く。
だがどうしても体が震えて気分が悪い。
心の支えが取れてしまったようだった。
真っすぐ立っていることもできず、目の前がぐらりと揺れた。そう思ったら、強い力で引き寄せられた。
「……あなたを祖国には帰さない」
いつかと同じ、うっすらと甘い香の匂いがする。
あの夜と同じ、きつすぎるほど力強い腕が体を締め付けている。
温かな胸に抱きしめられたのだと気が付いて目を見開いた。
こんなところを、新しい主人に見られたら咎められる。
私だけではなくてきっとこの男も。
縋りつきたい気持ちを抑えて胸を押すと、より一層強い力で腕の中に閉じ込められた。
「だから俺も、酷い男なんだろうな。前の王と同じだ」
私の抵抗を抑えつけた男が耳元で低く囁く。
その声にはどこか自嘲的な暗い響きがあった。
「でも俺は絶対に暴力は振るわないし、あなたを他の男に差し出したりなんかしない。貢物ももう不要だ。俺を伴うなら、あなたの祖国を訪れることもしよう」
「なにを、言って……」
溢れるように呟かれる言葉に頭が付いて行かない。
私の処遇も貢物も、祖国へ行くことだって護衛には決定権なんてなにもないはず。
混乱して身を捩る私に、彼はまるで縋るように囁いた。
「だからどうか、この国で共にいてくれ」
共に。
彼と、共にという意味か?
だがそれだって新しい主人が許すとは思えない。
「待ってくれ。私の、新しい主人は、」
「権力を使って言うことを聞かせるのは卑怯だと分かっている。その力だって俺ではなく父のものだ。だが、お前が他の男に攫われるのも祖国へ帰るのも許せない」
腕の力を抜いた男の胸から、ようやく顔だけを引き剥がす。
そうして彼の言葉に首を傾げた。
彼の父の力とは、何を言っているんだろうか。
たしか昔、国の高官だとは言っていた気がするが、それが何だと言うんだ。
「俺のもとにいた方が、他の男に貰われるよりも安全だ。酷いこともしない」
怖い顔で男は再び私のことを締め上げてくる。
背骨が軋むほど強く抱かれているが、これは酷いことには入らないのだろうか。
そんな考えが頭の隅に浮かぶが、それよりも大事なことをこの男は言っていなかっただろうか。
どうにか男の服へと視線を向けると、明らかに護衛のものとは思えない上質な服。
しかもどこか高貴な人間の寝間着のように見える。
そしてどれだけ待っても部屋に訪れない私の『新しい主人』。
じわじわとあり得ないはずの答えが導き出されていって、そんな馬鹿なことあるかと思いながらも疑問を口にした。
「待て。お前が……、私の新しい主人なのか……?」
「嫌か。嫌だろうな。だが耐えてくれ」
男は苦しそうに吐き捨てると、厳めしい顔をさらに恐ろしく歪めた。
腕の力は逃げることなんてできないほど強い。
言葉も強く声には張りがある。
なのになぜだろうか。
あの夜のように、男の体が震えている気がして。
「……嫌なわけ、ないだろう」
思わずその背中に、腕を回した。
私の細い腕が触れるだけで、大きな男の体がびくりと動く。
それを宥めるように何度か撫でると、少しづつ彼から腕の力が抜けていった。
「次の私の主人はまともな男であれば、と思っていたんだ」
ずっと、あの夜から彼に心が囚われていたのだと告げることはできず、わざと強がるような言葉を口にする。
だがそれでも男はほっと小さく息を吐いて笑った。
はじめて見た笑顔だ。
その笑顔を見て、私はこの男のものになったのだと、体から全ての力が抜けていくようだった。
彼が何を思って私を引き受けたのかは分からない。
前の王から飽きられかけていた私なんてそれほど利用価値もないだろう。
祖国へ訪れると言った言葉もどこまで本当か分からない。
それでも。
もう二度と、この体温を感じることはないと思っていた。
誰かに抱きしめられることなど、もうないのだと。
そのぬくもりに再び包まれて、私は数年ぶりにようやく息ができた気がした。
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