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捜索
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「あ、サタ。おはよう」
「おはよ……やばい、寝過ぎた」
夕暮れ時には起きようと思ってたのに、狭い窓から外を見るとすっかり真っ暗闇。それほど遅い時間じゃないとは思うけど、夕暮れから夜更けまでを仕事の時間帯にしていた俺にとっては致命的だ。まだ痛む体をベッドから起こして、仕事に出る支度をしようとする。だが窓際に座ったレオンは、渋い顔をすると首を横に振った。
「今日は外に出ない方がいいかも」
「え? なんで?」
手招きされ近寄ると、雨戸の陰に隠れるように外をのぞかされる。この部屋は2階で、高い建物がないスラムの様子がよく見える。
「こっから見える?あの制服の騎士団員たち……見回りが今日は異常に厳しいんだ。娼婦狩りだよ。」
「娼婦狩り?」
「うん。名目としては12歳以下の子供がいないかとか、無理やり働かされてる者がいないかを調べてるらしいんだけど、実際は街の大掃除。娼婦や男娼なんて、叩けば埃なんていくらでもでてくるからね」
年に一回くらいだからまだ大丈夫だと思ってたんだけど、とレオンはぼやきながら頭を掻いた。このスラムは王都の中心部に比べると治安が悪い。実際ここに住んでいる獣人は脛に傷がある人がほとんどで、レオンはどうか知らないけど、少なくとも俺は騎士団に調べられたらマズイ。当たり前だけど出生記録も身分証もなければ、獣性のかけらもない人間なんだから。もし見つかってしまったらと想像して俺はぶるりと震えた。王宮の中で実験動物のように飼われるなんて冗談じゃない。
「……いつ終わるのかな?」
「今日だけだとおもうけど、今回は冷静で冷酷って噂のアズラーク団長が指揮してるらしい。娼婦と火遊びでもして、何か盗まれでもしたかな。」
アズラーク……団長?聞き覚えがありすぎる名前にひくりとのどが震える。いや、もしかしたらアズラークなんて名前は、この世界ではありふれた名前なのかも。冷静を装ってさりげなく尋ねる。
「な、なぁ。そのアズラーク団長ってもしかして、銀髪に真っ白い尻尾で、めちゃくちゃ背が高い人?」
「うん、そうそう。ライオン族でもめったにいないホワイトライオンで、すごい美形の。なに、どっかで見たの?」
「い、いや~、どっかで見たって言うか……」
……まさか昨日ヤッちゃいましたとは言えない。はは、と引き攣った笑いをこぼす。
そんな俺にレオンは呆れたようにため息をこぼした。
「まあ確かに格好いいよね。騎士団はエリートで憧れだし。でもマジで冷酷な人らしいよ。獣性薄くても特別扱いとかしないし興味示さないって有名だし。どんだけ美人からの番の申し込みも、ぜーんぶお断りしてるみたいだしね」
「そ、そうなんだ」
「だからサタは出生票もないし家にいたほうがいいよ。俺、なにかメシ買ってくる」
レオンはそう言うと、フードをかぶってするりと扉の外に消えて行ってしまった。
それにしてもまさか彼が団長だったなんて……。どうりで身なりも見た目もいいわけだ。下っ端の騎士団員でもこのスラムの住人からすれば雲の上の人なのに、何百人もいるらしい騎士団員をまとめる立場なんて、想像もつかない。なんでスラム街なんかにいたのか分からないけど、本当なら俺の客になるような人じゃなかったってのは確かだ。
また苦しくなる心臓を抑えて、窓の外の騎士団員たちを眺めた。かっちりとした制服とマントは、普段見回りをしている警邏団とは少し違う。鋭利な美形のアズラークにもよく似合っていた……そう思いだしただけで心臓が高鳴ってしまう。
ぼんやりと外を見ていたら、少し離れた場所に馬に乗った集団がいるのに気が付いた。こんな狭い路地で馬に乗るなんて珍しい。そう思っていたら、そのうちの一人がどうも見覚えのある風貌だということに気が付いた。
「おはよ……やばい、寝過ぎた」
夕暮れ時には起きようと思ってたのに、狭い窓から外を見るとすっかり真っ暗闇。それほど遅い時間じゃないとは思うけど、夕暮れから夜更けまでを仕事の時間帯にしていた俺にとっては致命的だ。まだ痛む体をベッドから起こして、仕事に出る支度をしようとする。だが窓際に座ったレオンは、渋い顔をすると首を横に振った。
「今日は外に出ない方がいいかも」
「え? なんで?」
手招きされ近寄ると、雨戸の陰に隠れるように外をのぞかされる。この部屋は2階で、高い建物がないスラムの様子がよく見える。
「こっから見える?あの制服の騎士団員たち……見回りが今日は異常に厳しいんだ。娼婦狩りだよ。」
「娼婦狩り?」
「うん。名目としては12歳以下の子供がいないかとか、無理やり働かされてる者がいないかを調べてるらしいんだけど、実際は街の大掃除。娼婦や男娼なんて、叩けば埃なんていくらでもでてくるからね」
年に一回くらいだからまだ大丈夫だと思ってたんだけど、とレオンはぼやきながら頭を掻いた。このスラムは王都の中心部に比べると治安が悪い。実際ここに住んでいる獣人は脛に傷がある人がほとんどで、レオンはどうか知らないけど、少なくとも俺は騎士団に調べられたらマズイ。当たり前だけど出生記録も身分証もなければ、獣性のかけらもない人間なんだから。もし見つかってしまったらと想像して俺はぶるりと震えた。王宮の中で実験動物のように飼われるなんて冗談じゃない。
「……いつ終わるのかな?」
「今日だけだとおもうけど、今回は冷静で冷酷って噂のアズラーク団長が指揮してるらしい。娼婦と火遊びでもして、何か盗まれでもしたかな。」
アズラーク……団長?聞き覚えがありすぎる名前にひくりとのどが震える。いや、もしかしたらアズラークなんて名前は、この世界ではありふれた名前なのかも。冷静を装ってさりげなく尋ねる。
「な、なぁ。そのアズラーク団長ってもしかして、銀髪に真っ白い尻尾で、めちゃくちゃ背が高い人?」
「うん、そうそう。ライオン族でもめったにいないホワイトライオンで、すごい美形の。なに、どっかで見たの?」
「い、いや~、どっかで見たって言うか……」
……まさか昨日ヤッちゃいましたとは言えない。はは、と引き攣った笑いをこぼす。
そんな俺にレオンは呆れたようにため息をこぼした。
「まあ確かに格好いいよね。騎士団はエリートで憧れだし。でもマジで冷酷な人らしいよ。獣性薄くても特別扱いとかしないし興味示さないって有名だし。どんだけ美人からの番の申し込みも、ぜーんぶお断りしてるみたいだしね」
「そ、そうなんだ」
「だからサタは出生票もないし家にいたほうがいいよ。俺、なにかメシ買ってくる」
レオンはそう言うと、フードをかぶってするりと扉の外に消えて行ってしまった。
それにしてもまさか彼が団長だったなんて……。どうりで身なりも見た目もいいわけだ。下っ端の騎士団員でもこのスラムの住人からすれば雲の上の人なのに、何百人もいるらしい騎士団員をまとめる立場なんて、想像もつかない。なんでスラム街なんかにいたのか分からないけど、本当なら俺の客になるような人じゃなかったってのは確かだ。
また苦しくなる心臓を抑えて、窓の外の騎士団員たちを眺めた。かっちりとした制服とマントは、普段見回りをしている警邏団とは少し違う。鋭利な美形のアズラークにもよく似合っていた……そう思いだしただけで心臓が高鳴ってしまう。
ぼんやりと外を見ていたら、少し離れた場所に馬に乗った集団がいるのに気が付いた。こんな狭い路地で馬に乗るなんて珍しい。そう思っていたら、そのうちの一人がどうも見覚えのある風貌だということに気が付いた。
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