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誤解

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__体が重い。

それにあちこち痛い。

息を吸うと喉も痛いし、喉の渇きも感じる。
泣くことなんて大人になってからはなかったはずなのに目元も腫れたような違和感がある。

一体、なにが。

辺りが明るくなっているということは、もう朝なんだろう。
早く起きて公務に赴かなければ。

そう思って違和感の残る瞼を持ち上げて__。
見覚えのない天蓋に大きく目を見開いた。

豪奢な掘りの施された天蓋に囲われたベッド。
肌触りの良いシーツ。


ここは。
そうだ、ここは。

記憶が次々に掘り起こされて、眠気なんて一気に吹き飛んでいく。

ここはヒルベルトの屋敷じゃないか。
そしてこの体のだるさの原因は……昨日の、味わったことのない、いや想像したことすらないような執拗で激しい性交のせいで……。



「起きましたか?」


ベッドに寝転がったまま呆然としていると、同じように寝そべっていたらしいヒルベルトに声を掛けられた。

涼しい顔でこちらを見つめるヒルベルト。
陽の光を浴びたその顔は相変わらずの美形だ。
だが__その彼を、昨日までのようにただ高潔な騎士だとはとても見ることはできなくなってしまった。

なぜあんなことを。
浮気とはどういう意味だ。

言いたいことは山ほどあるというのに何と言っていいのか分からなくて固まっていると、じっと私の顔を見たヒルベルトがこちらに手を伸ばしてくる。
くるりと体を反転させられ、後ろから抱きすくめられて。
背中に触れた逞しい胸板に思わず心臓がどきりと変な音を上げる。

だがするりと私の腹を撫でた手が、そのまま腹筋を辿り下肢へと向かっていって慌てて声を上げた。


「ちょ……っ!なにを、!」

「まだ一滴でも出るなら搾り取っておこうと思いまして」


当然とでもいうような口調でそう告げると、体に掛けられていたシーツをめくられる。
抵抗虚しくあっさりと性器を握り込まれて小さく悲鳴が漏れた。


「ひぁっ……!」

「貞操帯の準備ができたら、すぐそちらも付けましょう」


昨夜散々弄ばれて、勃起することもできない性器をそれでもしつこいくらいに苛められる。
本当に一滴でも絞り出そうとしているのか、先端に指先がのめり込んできて痛みとも快感ともつかない刺激に体が震えた。
もう一方の手が後ろから私の胸の尖りをつまんで、くりくりと刺激してくる。
そうされると、もう快感なんてとっくに限界を超えているのに、じんと腰の奥が痺れる気がした。


「ヒルベルト……ゆ、……ゆるし、て」


情けない懇願の声が喉から漏れる。

ローレリーヌの身代わりに、無理やり押し付けられた男が憎いのだろうか。
だとしても、こんな復讐の方法をとらなくても。


「許す?浮気のことなら、もう怒っていませんよ」


だが私の言葉に、ヒルベルトが不思議そうにそう呟く。
まるで、何を言っているのかと言いたげに。

彼の湿った唇がそっと私の首筋に押し付けられて、柔らかく肌を吸われた。


「あなたは命をかけて貰い受けた人ですから、……一生大事にします」


うっそりとしたヒルベルトの声が、豪奢に整えられた部屋に響いて消えた。









-------------
ユーリス:兄である王にいいように使われがちで、貧乏くじを引きがち。真面目。今後もヒルベルトの恋心になかなか気が付かなくて苦労する。貞操帯が届くまで毎晩大変だし、届いてからも大変な日々

ヒルベルト:本当は好青年。ユーリスのためにせっせと部屋を準備していた。ただ少し猪突猛進。
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