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幸せ

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アルジオの手が伸びてきて、太い腕にぎゅっと抱きしめられる。

 心地よい温かさの中で呼吸を落ち着けていたら、彼の片方の手がするりと後頭部に伸びた。

 後ろ頭をそっと支えられて、顔が近づけられる。柔らかく触れ合った唇に、鼻から甘えるような声が漏れた。
    
 「んっ、……っ、」

 すり、と唇同士をこすり合わされて、すこしくすぐったい。でもその温かさが嬉しくて、離れた時は名残惜しくて、彼の胸にすがりついてしまった。
 
「アルジオ、さん、」
「エーク……。好きだよ、1人でいつも頑張ってるところも、自立したところも尊敬してる。そういうお前だから好きになった。でも、これからはもっと俺を頼ってほしい」

 甘くとろけるような言葉が、耳にするりと入ってくる。

「俺のこと、そんなに好き……?」
「好きだ。はじめて見た時から可愛いと思ったけど、エークと会うたびに強さや、気遣いのできる細やかさに惹かれている。……遠慮がちなところは、美点だけど俺にだけはなくしてもいいと思ってるけどな」

 囁きながらアルジオの手がすでにはだけさせられた胸元を撫で始めた。
   
「アル、ジオ、……」
「好きだよ、エーク」
「え、ちょっ、ま、……」
「なに?」

 優しく、そーっと乳輪を指先で弄られる。その甘い感触にゾクゾク、と背筋に快感が走った。
 
 性感を引き出すような触り方に、まさかと思って彼の手を押し留める。
 
「ま、またヤるの?」
「嫌なのか? 俺に触れられたくない?」
「そうじゃないけど、その……さっきもヤっただろ?」

 心はすれ違ってはいたけれど、今夜はすでに彼に抱かれている。まだ思いだすだけで、腰がじぃん、と痺れるような快感をたっぷり与えられていた。

 なのにアルジオは、まるで空腹の獣のようにギラついた瞳で俺のことを見下ろした。
 
「本当はまだ抱き足りなかった。もっと何度もお前の中に入って、俺の下で泣いてるエークの顔を見ていたい」
「……っ!?な、そ、……そういうこと、っ言うなよ、」
「エーク相手に遠慮していたら、悪いように誤解されると分かったからな。エークも、もう遠慮しないで思ったことを言ってくれ」

 アルジオは止めていた手を再び、さわ、と動かして、俺の乳首を摘んだ。

「ひぁ……っ!」 
「……たとえば、どこが気持ちいい、とか」
「んっ、や、ぁ、」

 乳首に与えられた刺激に腰を震わせると、アルジオは胸から手を離して、その場に膝をついた。そして素早く俺のズボンを下履きごとずり下げると、露出した陰茎にちゅ、と唇をよせた。

「え、な、! ぁ゛……っ!ア゛!」

 大きな口に陰茎がすっぽりと飲み込まれて、分厚い舌が絡みついてくる。
      
「ちょ、……っぁ、ゃめ、んぁ、……っ! なめ、な、ぃで」

 じゅぽ、じゅぽ、と下品な音をたてて顔を上下される。その度に腰が溶けてしまうような快感が走った。
 
「むり、も、……っ、むりだから、ぉれ、たたな、……」

 さっきヤった時に、すでにたくさんイかされている。
 だからもう俺は勃起しないはず……と思って、やだやだ、と首を横に振る。なのにアルジオは俺の言うことを聞いてくれるどころか、ますますキツく吸い上げてきた。
  
「ゃあ、っ!すうの、きつい、ぃ!」
「……ほら、しっかり勃った」

 ちゅぱぁ、と粘着質な音をたてて、アルジオが陰茎から口を離す。すると崩れ落ちそうになってる俺の足の間で、すっかり立ち上がった陰茎がぴょこんと顔を出していた。
 
 酷い。酷い、酷い!遠慮するなとか、俺の言うこと聞いてくれるって言ったのに。

 頭ではそう思うけど、唾液にテラテラと光る陰茎を見ていると、口から漏れ出てくるのは「あ゛、ぅ、」と快感にくぐもった声だけだった。

 結局大好きなアルジオさんに触られて、本気で嫌なわけはない。体がそれを物語っているようだった。

「エーク、抱いてもいいか?」
 
 とん、と体を押されてベッドへと転がる。その俺にのしかかったアルジオが、ぱかりと俺の足を大きく開いた。
 
 指をずにゅううぅ、と後孔に突き込まれる。
 すっかり俺の良いところを熟知している指に、俺は悲鳴のような嬌声をあげた。
  
「ア゛っ! ゃ、んん゛っ、」
「さっきしたから、まだ柔らかいな……。ああ、気持ちいい? ビクビクしてるの、すごく可愛い」

 くいくい、と指を折られて、前立腺をいじめられる。そうするともう俺の体はあっさりと白旗をあげた。

「ひっ、ぁあ゛!っぁ!きもち、ぃぃ、っ!」

 腰をびくびくと跳ねさせて、指に「物足りない」とばかりにしゃぶり付く。卑猥な姿だと分かっていても止められなかった。
  
「ここ、もう入れてもいいか?」
「も、ぃい、から! はや、…、…く、っ! ~~~ッ!」

 中をかき混ぜる指だけで甘くイってしまい、一際大きく体が跳ねる。前から精液は出てないのに気持ち良くて、目の前がチカチカと光った。

「はー……、ぁ、はー……、」
「………………可愛い」
「ぅあ゛っ……!」

 アルジオの熱い陰茎がぴとりと後孔にあてられて、それからやや性急に奥まで入ってくる。
 内壁をごりごりと刺激して入ってくる感触がたまらない。
 
「エーク、……ッ! エーク、っ、好きだ、」
「ア、ぁあ゛っ、!きもち、ぃ、!すき、俺もすき、ぃ!」
「絶対、離れないでく、れ、……ッ!」

 何度も何度も奥まで突き込まれる。気持ちいいところを陰茎で擦られて、意識が飛びかけた頃、熱いものが俺の腹の中で弾けた。
  
 


 ◇

 
「……疲れた。腰痛い。……あと恥ずかしい」
「水はいるか? 飲んだら、風呂まで連れて行こう……中に出してしまったものを掻き出さないとな」

 ニコリと笑ったアルジオは、ベッドの上で寝転がっている俺にせっせと水を持ってきたり、俺の額にキスしたり、体を拭いたりと忙しい。

 その甘ったるい笑顔を見て、今までの冷めた仏頂面はなんだったんだ、と笑いたい気持ちだ。だけど俺も今までなら「そんなことしなくていい」と手を振り払っていただろうから、同罪だ。
 
「ありがと。あ、俺の服とってくれる?」

 少しだけ勇気を出して、彼の手を取ってその甲に口付ける。ピク、とアルジオの肩が跳ねた気がしたけど、もう、それが悪い意味だとは思わない。

「服……それなら、こっちを着てくれ」
「へ?」
「エークに似合うかと思って、用意してたんだ」

 立ち上がったアルジオさんが、大股で数歩、棚の方へ歩き、その中から布のようなものを取り出した。
 手渡されたそれは、柔らかな、高級だと分かる寝巻きだ。しかも、明らかに大きさがアルジオさんには小さいもの。
  
「外出用の服もある。その……かなりたくさん。……嫌じゃなければ、もらってほしい」

 重ねて言われた言葉に、思わずあんぐりと口を開ける。俺のために、アルジオさんは服を買っていてくれたのか?しかもたくさんってことは、前から……?

 頭の中に疑問や「もったいない」なんて言葉が浮かんでしまうけど、俺はそれを飲み込んで、腕の中の寝巻きをぎゅっと抱きしめた。

「………………ありがとう。大好き」

 なんだか酷い遠回りをしてしまった気がするけど、今は自己嫌悪なんて投げ捨てて、アルジオの甘ったるい愛に蕩けていよう。そう思った。
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