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嫉妬
しおりを挟む巻き込んでしまったアルカは、俺に視線も合わさずに走って逃げていった。
一方俺は、腰が抜けかけていたけれど、逃げるわけにもいかず食堂へと戻って。
そしてアルジオは、俺の仕事が終わるまでずっと待っていた。
今日は迎えはいらないから先に帰ればいいと伝えても「だめだ」と首を横に振るばかりで、話をしてくれない。
他の人の目がある食堂で彼にしつこく話しかけるわけにも、追い出すわけにもいかない。
困り果てているうちに仕事の時間が終わり、そしてそのまま攫うようにして部屋に連れてこられた。
玄関の扉が閉まったと思った時には太い腕が俺の体を捕らえていた。
いつもよりも乱暴な仕草で抱きしめられて背骨が痛い。
それでも噛みつくように口づけられると、痛みなんてどこかへ飛んで行ってしまう。
「ん……っ、」
舌で唇を撫でられて、口をこじ開けられる。
ぬるりと熱い舌に咥内を舐め上げられると、背筋にぞくりと快感が走った。
必死で彼の服に縋りつく。
でないと膝から頽れてしまいそうだった。
「ぁ、……!」
「……エーク、」
長い口づけが解かれ、お互いの呼吸の音が静かな室内に響いて、それがどうにも恥ずかしい。
今まで数え切れないくらい何度もしていることなのに。
真っ赤になっているだろう顔を隠したくて顔を俯けて、頭を冷やしたくて腕を突っぱねる。
彼に抱きしめられたままだと、とてもじゃないが冷静になんてなれない。
ちょっと落ち着いて、前みたいに言葉も交わさないドライなセックスをすれば、ちゃんと思った通りに振る舞えるはず。
だから少しだけ落ち着く時間が欲しい。
そう思って彼の腕から逃れようともがくけど、筋肉で固い腕はぴくりとも動かなかった。
「だめだ、エーク。今日は手加減できない。諦めてくれ」
耳元で少し厳しい声音でそう言われ、息を吹き込まれて腰が痺れる。
こんなに熱い手のひらで触られたら、俺の体はぐずぐずに溶けてしまうし、心はもっと溶けてなくなってしまう。
いやいやと首を横に振るけど、アルジオは宣した通り、手加減をしてくれないみたいだ。
まだ玄関だというのに引きちぎるように服を脱がされて、露わになった首筋に彼が噛みつく。
痛いと思ったのは一瞬で、ぬめる舌が皮膚を這う感触に体が震えた。
首筋から鎖骨。
鎖骨を通って胸へ落ちた唇が、胸の突起をぺろりと舐め上げる。
「ひっ……あッ!」
そのまま片方の乳首を指先で摘ままれて擦り上げられ、もう片方は唇でおおわれる。
時折いじわるをするように噛みつかれて、鋭い刺激が走る。
すっかり彼とのセックスに慣れた体は、従順それを快感だと拾い上げて喜ぶ。
ぎゅ、と彼のシャツを握りしめると、触れるだけのキスが落とされた。
「そうやって大人しくしていてくれ。怪我をさせたくない」
玄関の床にずるずると座り込んだ俺を抱き上げて、アルジオが寝室へ進む。
男の一人暮らしなのにいい匂いのするベッドに俺を座らせて……後ろ手に縛った。
「え、……っ、な、なんで?」
動かなければ痛みはない。
たぶん、アルジオが脱ぎ去ったシャツで拘束されているんだろう。
今までにないことに俺は焦ってもぞもぞと動いたけど、きつく結ばれているらしく解ける気配はない。
「お前が、煽るからいけない」
ベッドに座らせられた俺の両足の間にアルジオが陣取る。
ずるりと下着ごとズボンを抜き取られて、足首を掴んで大きく割り開かれて、小さく悲鳴が漏れた。
「……ひっ、ぃ、や!」
足首を引かれた衝撃で後ろに倒れ、さっきのキスで兆しかけの性器も、その奥すらも彼の眼に晒されている。
今までだって見られたことくらいあるのにそれでも体が羞恥に固く強張った。
だがアルジオは俺の体を無遠慮に眺めまわすと、ちゅ、と音を立てて腹にキスを落とした。
そのまま唇は優しく臍をくすぐり、鼠径部を舐め。
彼は俺の顔を見ながらぺろりと性器の先端を舐め上げた。
「ア……、アルジ、オっ……さ、ん」
口淫をされたことがないわけじゃない。
だけど快感に慣れていない俺は、それをされるとすぐに訳が分からなくなってしまうから、いつもやめて欲しいと断っていた。
今も嫌だと腰をくねらせて逃れようとするけど、男は骨盤を押さえつけるようにして握る。
腕が自由にならなくて腰を掴まれたら、動くことができない。
「エーク、」
「……っ、ひ、ぁ、!」
何度か先端を戯れるように舐めたアルジオが、見せつけるようにして俺の性器を飲み込んでいく。
熱くて柔らかい口腔がそれを舐めしゃぶり、時折きつく吸い上げる。
じゅ、と卑猥な音が室内に響く。
それを聞きたくないと思うのに、耳をふさぐこともできない。
なんで、こんなこと。
なんで俺は、この男に縛られて責められているんだ。
「……ゃ、あっ、もう……!」
強すぎる刺激に、内腿がびくびく震える。
これ以上我慢できない。
アルジオの口に放つのは嫌だから、どいてくれと必死に首を横に振る。
するとアルジオは吸い上げていた力を弱めて。
代わりに指で根本をきつく抑えた。
「ぃっ……!」
痛みに呻くと、アルジオは性器から口を離す。
指の力はゆるめないまま、俺の屹立を戯れるように舐め上げた。
出したいのに出せなくて辛くて目の前がにじむ。
「ああ、震えてて可愛そうだな。……ちゃんとイきたいか?」
柔らかい声とともに、先端を指先でくるくると苛められて腰が跳ねる。
「ィ、……イきた、い! おねが、イかせ、て……!」
必死に懇願するが、なかなかアルジオは指先を解放してくれない。
しゃくりあげるように涙をこぼす。
そんな俺の情けない顔を見て、アルジオは少し目を細めた。
「じゃあエーク。ああいう事は、もうしないと約束するか?」
ああいうこと。
それはいったい何の話だろうか。
体が燃えるように熱くて、頭の中も煮立ったようでまともに考えられない。
返事をしない俺に焦れたのか、大きな掌が俺の性器を根本から強くしごき上げる。
「っ、! あ、あ……ッ!」
「返事は?」
なんのことか聞きたいけれど、アルジオの指は俺が戸惑っている間もずっと俺を苛んでいる。
このままだとおかしくなる。
早く。
早く解放してほしい。
「しない、……! も、しな、い、……から、許して……っ!」
涙を零しながらそう誓うと、アルジオは優しく微笑んで、俺を戒めていた指先を放した。
そのまま彼は再び俺の性器を口に迎え入れる。
そのうえ先走りですっかり濡れそぼった後孔にゆっくりと指を差し込まれて。
鋭い刺激に、俺はあっさりと白濁を弾けさせた。
はー、はー、と荒い息を吐いて、絶頂感をやり過ごす。
気持ちよくて、気持ちよすぎて体が震えてとまらない。
強い快感にそのまま目を閉じて眠りそうになったけれど、まだ後孔に入れられていた指が、くい、と動かされた。
「あ、ぅ゛っ、……ッ」
「エーク、まだ寝ないでくれ」
ゆっくりと内側を撫でる指。
弛緩した体を、さらに甘く溶かしていく。
太い指が何度も抜き差しされて、じわじわと後孔がほぐれていく。
「ッ、ぁ、や、やだ、……っ」
「ここ、好きだよな」
そっと前立腺を撫でられて、体が震えた。
内壁の一番気持ちいいところ。
触れられるたびにおかしくなってしまうから、あまり好きじゃないのに、アルジオは楽しそうに何度もそこばかりを突く。
その度に体がオモチャみたいに跳ねて、射精したばかりで力がなくなっている陰茎が、股間で揺れる。
「ぅ、ゃ、……、そこ、ゃ、だぁ……きもちぃいの、も、やだぁ、」
気持ちいい指から逃げたくて、ベッドの上をずり上がる。
すると指を引き抜いてアルジオに、腰を強く掴んで引きずり戻された。
「は……、可愛い……、クソ、もう挿れるぞ」
「え、……ッ、ア! んぁッ! あ、ぁあ、っ、! ~~~ッ!」
さっきまで優しそうだったアルジオの瞳がぎらりと光り、熱いものを後孔に押し付けられる。
そして、ずにゅぅううう、と一気に奥まで陰茎が突きこまれた。
「ッ、ぁ、あ゛、や゛ぁ!」
ぎしぎしと軋むベッドで、体を乱暴に揺すられる。
気持ちいい。気持ちよくて、おかしくなりそう。
さっき射精したばかりなのに、アルジオの陰茎で内壁を擦られるたびに、目の前に星が飛ぶ。
高くて細い声を上げて、体を痙攣させる。
触られてもいないのに、俺の陰茎は再びとろりと少量の精液を零してしまった。
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