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「今日の昼休み、生徒会室で、お兄様とわたしが話しているところを見たヘクターが、それは密会だと。みなに、パトリス様にばらされたくなければ、婚約破棄に応じろと、言われました……」

 ヘクターは腕を拘束されながら、叫んだ。

「……そう、そうなのです! ぼくは、殿下とローナが兄弟とは聞かされていなかった! 接点のない二人がこっそり会っていることがショックだった! だから、つい……っ」

 パトリスが「ショック?」と片眉をあげた。

「自分だとて、伯爵令嬢と密会していたではありませんか」

「なっ……」

 どうしてそれを。と言いかけて、気付いた。そうだ。世間知らずのローナが、どうして伯爵令嬢との密会を知っていたのか。あの子と会うときには、細心の注意を払っていたはずなのに。

(……そうか。全ては、殿下とこの公爵令嬢がかかわっていたのか……っ)

「──すみません、パトリス様。思えばあの事実を教えてもらったときに、ちゃんとヘクターと話し合うべきでした」

「いいえ。ヘクターは、あなたの御両親であるフォノフ侯爵が選んだ相手ですし、ニコリッチ侯爵は、確かな人格者です。だから、信じたくないという思いが強かったのでしょう?」

「……はい」

 なるほど。ユーインは、顎に手を当てた。

「伯爵令嬢と付き合うために、ローナと婚約破棄をしたかった。だから、わたしとローナが会っていたことを密会だと決めつけ、脅しにかかった。そういうわけか」

「お、脅しなどど……っ」

 掠れた声を出すヘクターに視線を合わせたユーインは、威圧的に、こう告げた。


「──だが。それだけで、ローナがこんなに怯えるか?」

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