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「あなたにかけた魔法は、人の心の醜さを可視化するものです。もっともわかりやすい、顔でね。わたしが長年をかけて完成させた、オリジナルの魔法です」

「……心の醜さ」

 呆然としながら、サイラスが繰り返す。オーエンは、さらに続けた。

「これまでどれほどの人間を傷付け、殺してきたかによって、顔の崩れかたの度合いか違ってくるのです。怨念のようなものが作用しているのかもしれませんね。人の想いとは、思うよりずっと強いですから」

「……どうして、そんな魔法を」

「王族の醜さとはどれ程のものか。あるときふと、知りたくなりましてね。大量の魔力を消費するうえ、とても複雑なので、簡単に扱えるものではありません。本当は、私自身にかけるつもりだったのですが──」

 オーエンが、小さく、薄く笑う。

「私のように、王族によって理不尽に大切な者の命を奪われた者は数しれません」

 オーエンは、すっと立ち上がった。

「この国はいま、傾きかけている。王の血を途絶えさせてはならない。王族は王族としか結ばれてはならない。その法のもと、増え続ける王族のせいでね。贅を尽くし、何をしようと法で裁けない王族はもう、民にとって、憎しみの存在でしかない。民はもう、限界です。いつ反乱が起きてもおかしくはない。事実、貴族を筆頭につくられたそのための組織には、王族に仕える者も多数在籍している」

 サイラスは、そうか、と苦笑した。

「……滅びは、当然の結果だな」

「そうかもしれません。ですが、私はこうも思うのです。例えば王族を皆殺しにし、貴族の中から国王を選ぼうとすれば、今度は貴族の中で、争いが起きるのではないかと。そう懸念する声は、少なくありません」

 皆殺し。その言葉に、サイラスは血の気が引いた。がばっと顔をあげる。

「ま、待ってくれ……王族の中にも優しい者はいる。少なくとも、セシリー嬢はわたしたちとは違う。魔法にかけられている間も、あの子だけはきちんと人の顔に見えた。だから……っ」

 必死に訴えるサイラスに、オーエンは「ええ。存じていますよ」と、笑いかけた。
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