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デレクに何をされたのか。ようやく理解したルイザの身体が、暴力による恐怖からかショックからか、小刻みに震えだした。
「お……お前が悪いんだからな! お前のせいでぼくは、エセルに……っ」
デレクが動揺しながらも、そんな言葉を吐き捨てた。ルイザが左頬をおさえ、泣き崩れる。
「…………っ」
二人のやり取りに、気付けばエセルは、ルイザの肩を抱き寄せた。
「……エセル、様?」
ルイザが滲む視界で、エセルを見る。エセルは「あなたは何も悪くありません」と、力強く言ってから、デレクに視線を移した。
「──あなたに全面的に落ち度があるにもかかわらず、暴力をふるいましたね。女性に……しかも、愛すると言った方に」
「だ、だって……それは」
「それは? 何ですか?」
怒気の含まれた強い口調に、デレクが怯む。
「……ルイザが、ぼくだけが悪いみたいに振る舞うから……」
「実際、その通りでしょう? あなたは、わたしという婚約者がいることを、ルイザさんには隠していたのですから」
「……隠してはいた、けど! 平民の彼女が、貴族のぼくの妻になれるなんて、普通なら考えないだろ!? 何も言われずとも、察するべきことだ!!」
デレクが息を吸うひまもなく、まくしたてる。エセルは、ぎりっと奥歯を噛んだ。
「……もう、いいです。黙ってください」
デレクはエセルの低い声に、はっとした。
「エ、エセル、ごめん。ぼくが愚かだったんだ。そうだよね。母上がそうだからって、きみも愛人の存在を許してくれるなんて、甘い考えだった。ルイザとは別れるよ。愛人も、屋敷に住まわせたりしないし、作らないと約束する。こ、これで許してくれるよね……?」
デレクが情けない声音で、眉尻を下げる。エセルはすうっと息を吸うと、馬車の外で待機している従者の名を叫んだ。
「お……お前が悪いんだからな! お前のせいでぼくは、エセルに……っ」
デレクが動揺しながらも、そんな言葉を吐き捨てた。ルイザが左頬をおさえ、泣き崩れる。
「…………っ」
二人のやり取りに、気付けばエセルは、ルイザの肩を抱き寄せた。
「……エセル、様?」
ルイザが滲む視界で、エセルを見る。エセルは「あなたは何も悪くありません」と、力強く言ってから、デレクに視線を移した。
「──あなたに全面的に落ち度があるにもかかわらず、暴力をふるいましたね。女性に……しかも、愛すると言った方に」
「だ、だって……それは」
「それは? 何ですか?」
怒気の含まれた強い口調に、デレクが怯む。
「……ルイザが、ぼくだけが悪いみたいに振る舞うから……」
「実際、その通りでしょう? あなたは、わたしという婚約者がいることを、ルイザさんには隠していたのですから」
「……隠してはいた、けど! 平民の彼女が、貴族のぼくの妻になれるなんて、普通なら考えないだろ!? 何も言われずとも、察するべきことだ!!」
デレクが息を吸うひまもなく、まくしたてる。エセルは、ぎりっと奥歯を噛んだ。
「……もう、いいです。黙ってください」
デレクはエセルの低い声に、はっとした。
「エ、エセル、ごめん。ぼくが愚かだったんだ。そうだよね。母上がそうだからって、きみも愛人の存在を許してくれるなんて、甘い考えだった。ルイザとは別れるよ。愛人も、屋敷に住まわせたりしないし、作らないと約束する。こ、これで許してくれるよね……?」
デレクが情けない声音で、眉尻を下げる。エセルはすうっと息を吸うと、馬車の外で待機している従者の名を叫んだ。
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