19 / 20
19
しおりを挟む
「同じね、交換留学生として、隣国に行ってたのよ。ハーヴィーはいつも、学年一位だったから。前から名前と存在だけは知っていて」
「わたしも、同じだったよ。令嬢の中では、きみが学年ではトップだったしね」
「勉学に男女の差は関係ないわ」
ムッとするシャノン。
はは。ハーヴィーが愉快そうに笑う。
「そう。こういうところに惹かれたんだ──お前は、違ったのかな?」
ハーヴィーがリッキーに視線を移す。口角をあげてはいるが、目は少しも笑っていない。
「……ぼ、ぼくは」
「いいのよ、リッキー。無理に答えなくて」
「む、無理なんて……っ」
わたしも特に興味はないもの。突き放すように言い、シャノンは笑った。
「ね、もういいかしら。わたしたち、帰国してからずっと休みなく移動してたから、疲れているの」
「シャノンの実家も、わたしの実家も、ここから離れているからね」
「ええ。でも、学園がはじまる前日に戻れて良かったわ──そうだ、リッキー」
リッキーがぼんやりと「……え……?」と反応する。
「チェルニー伯爵が、あなたをどうするつもりかは知らないけど……今後、どこで会おうと決して話しかけたりしないでほしいの。実感はまだないかもしれないけど、あなたたちの評判はもう、最悪だから。わたしたちを絶対に巻き込まないでね」
それは、完全なる拒絶だった。リッキーの涙は止まらず、溢れてくる。
「……そんな……ひどい」
「でもね、リッキー。代わりにあなたは、自由を手に入れたのよ。期間限定なんかじゃなくてね」
『──ひと月後に、シャノンは隣国に留学する。三ヶ月間、帰ってこない』
『へ? そう、なの?』
『うん。だからその三ヶ月間だけ、ぼくは自由になれるんだ』
脳裏に浮かんだパティとの会話を、リッキーは、遠い過去の出来事のように、思い出していた。
「わたしも、同じだったよ。令嬢の中では、きみが学年ではトップだったしね」
「勉学に男女の差は関係ないわ」
ムッとするシャノン。
はは。ハーヴィーが愉快そうに笑う。
「そう。こういうところに惹かれたんだ──お前は、違ったのかな?」
ハーヴィーがリッキーに視線を移す。口角をあげてはいるが、目は少しも笑っていない。
「……ぼ、ぼくは」
「いいのよ、リッキー。無理に答えなくて」
「む、無理なんて……っ」
わたしも特に興味はないもの。突き放すように言い、シャノンは笑った。
「ね、もういいかしら。わたしたち、帰国してからずっと休みなく移動してたから、疲れているの」
「シャノンの実家も、わたしの実家も、ここから離れているからね」
「ええ。でも、学園がはじまる前日に戻れて良かったわ──そうだ、リッキー」
リッキーがぼんやりと「……え……?」と反応する。
「チェルニー伯爵が、あなたをどうするつもりかは知らないけど……今後、どこで会おうと決して話しかけたりしないでほしいの。実感はまだないかもしれないけど、あなたたちの評判はもう、最悪だから。わたしたちを絶対に巻き込まないでね」
それは、完全なる拒絶だった。リッキーの涙は止まらず、溢れてくる。
「……そんな……ひどい」
「でもね、リッキー。代わりにあなたは、自由を手に入れたのよ。期間限定なんかじゃなくてね」
『──ひと月後に、シャノンは隣国に留学する。三ヶ月間、帰ってこない』
『へ? そう、なの?』
『うん。だからその三ヶ月間だけ、ぼくは自由になれるんだ』
脳裏に浮かんだパティとの会話を、リッキーは、遠い過去の出来事のように、思い出していた。
188
お気に入りに追加
3,011
あなたにおすすめの小説
陛下、あなたが寵愛しているその女はどうやら敵国のスパイのようです。
ましゅぺちーの
恋愛
王妃カテリーナは数年前に現在の夫である国王と結婚した。
だが国王は初夜すらもカテリーナを放置し、それ以来いないものとして扱った。
そんなある日国王が一人の女を愛妾として王宮に召し上げた。
その女は類稀な美貌を持ち瞬く間に国王を虜にした。
だが聡明なカテリーナは勘付いていた。
その女が敵国から送られたスパイであることを。
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
聖女な義妹に恋する婚約者の為に身を引いたら大賢者の花嫁になりました。今更婚約破棄を破棄にはできません!
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のソフィアの婚約者、ヘリオスの義妹テレサは聖女だった。
美しく可憐な面立ちで、国一番の美女と謡われて誰からも愛される存在だった。
聖女であることで後ろ盾が必要なため、ヘリオスの義妹となった。
しかしヘリオスは無垢で美しい義妹を愛するようになり、社交界でも噂になり。
ソフィアは身を引くことを選ぶ。
元より政略結婚でヘリオスに思いはなかったのだが…
ヘリオスとその家族は絶句する。
あまりにもあっさりしたソフィアは貴族籍を除籍しようとしたのだが、隣国との同盟の為に嫁いでほしいと国王に懇願されるのだった。
そのおかげでソフィアの矜持は守られたのだ。
しかしその相手は隣国の英雄と呼ばれる人物でソフィアと縁のある人物だった。
しかもヘリオスはとんでもない勘違いをしていたのだが…
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ポンコツ女子は異世界で甘やかされる(R18ルート)
三ツ矢美咲
ファンタジー
投稿済み同タイトル小説の、ifルート・アナザーエンド・R18エピソード集。
各話タイトルの章を本編で読むと、より楽しめるかも。
第?章は前知識不要。
基本的にエロエロ。
本編がちょいちょい小難しい分、こっちはアホな話も書く予定。
一旦中断!詳細は近況を!
モブだった私、今日からヒロインです!
まぁ
恋愛
かもなく不可もない人生を歩んで二十八年。周りが次々と結婚していく中、彼氏いない歴が長い陽菜は焦って……はいなかった。
このまま人生静かに流れるならそれでもいいかな。
そう思っていた時、突然目の前に金髪碧眼のイケメン外国人アレンが…… アレンは陽菜を気に入り迫る。
だがイケメンなだけのアレンには金持ち、有名会社CEOなど、とんでもないセレブ様。まるで少女漫画のような付属品がいっぱいのアレン……
モブ人生街道まっしぐらな自分がどうして?
※モブ止まりの私がヒロインになる?の完全R指定付きの姉妹ものですが、単品で全然お召し上がりになれます。
※印はR部分になります。
私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるアルティリアは、婚約者からある日突然婚約破棄を告げられた。
彼はアルティリアが上から目線だと批判して、自らの妻として相応しくないと判断したのだ。
それに対して不満を述べたアルティリアだったが、婚約者の意思は固かった。こうして彼女は、理不尽に婚約を破棄されてしまったのである。
そのことに関して、アルティリアは実の父親から責められることになった。
公にはなっていないが、彼女は妾の子であり、家での扱いも悪かったのだ。
そのような環境で父親から責められたアルティリアの我慢は限界であった。伯爵家に必要ない。そう言われたアルティリアは父親に告げた。
「私は私で勝手に生きていきますから、どうぞご自由にお捨てになってください。私はそれで構いません」
こうしてアルティリアは、新たなる人生を送ることになった。
彼女は伯爵家のしがらみから解放されて、自由な人生を送ることになったのである。
同時に彼女を虐げていた者達は、その報いを受けることになった。彼らはアルティリアだけではなく様々な人から恨みを買っており、その立場というものは盤石なものではなかったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる