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「──リッキー。あなたは、わたしに婚約を破棄されることを怖れているのよね?」 

「ち、違う! ぼくは、きみを愛しているから……だから、純粋に別れたくないって思って」

 これでは駄目だ、とシャノンは思った。婚約を破棄される恐れがある以上、リッキーは決して、パティへの想いを認めないだろう。

「なら、パティにはっきり言うの? きみとは付き合えないって」

「い、言うさ。言うよ!」

「……そう。どちらにせよ、これからは、登下校も、昼食も、別々にしましょう。もちろん、もう休日に会うこともしないわ」

「ど、どうして?」

 どうして。
 その質問は、怒りよりも、哀しみが少しだけ勝った。

「……あなたがわたしを選んだのは、単に、自分の居場所を守りたかったに過ぎないからよ。わたしを愛しているからじゃない」

 図星をつかれたように、リッキーは固まった。鐘の音が鳴り響く中、シャノンは一人、教室へと足を向けた。



 その日の昼休み。

「シャノン・グリエフ。話があるので、この後、職員室に来るように」

「? はい、わかりました」

 授業が終わったあと、担任にそう告げられたシャノンは、真っ直ぐに職員室へと向かった。クラスを騒がせてしまったことを咎められるのかもしれない。そんな心配をしつつ、職員室の扉をノックした。

「失礼します」

 シャノンの声に、担任が「ああ、来たね」と言い、奥の小さな部屋へと招き入れた。

 すすめられるまま、椅子に腰かけるシャノン。担任はテーブルを挟んで向かい側に座ると、さっそくだが、と口火を切った。

 それは、全く思いもしない話で。


 シャノンは一時、リッキーとパティのことを忘れ、心からの笑みを浮かべた。


 
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