別れ話をしましょうか。

ふまさ

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 驚いたことに、それからもアールは、デージーとの会話を重ねた。屋敷にコリンナがいても、もう、深く会話をすることはなく。あくまで、デージーに会いにきてくれていた。

 デージーはそれが、信じられなかった。

「あ、あの。わたしといて、楽しいですか……?」

 外で昼食をと。誘われた移動中の馬車内で、たまらずたずねたのは、アールと二人で会うようになってから、半月が経とうとしていたころだった。

「楽しいよ?」

 当然のように答えられ、デージーは思わず、どこがですか、と反射的に返してしまった。

「そういうところかな」

「……わかりません」

 ははは。本心を隠すように、アールが笑う。

(シェーベリ伯爵から、我が家と繋がりを持つようにと言われているのかしら……)

 すなわち、これは政略的なもの。それなら納得ができる。

(それとも、せめて愛するお姉様と同じ血が流れているわたしと一緒になろうと……?)

 どちらかしら。思わず、正面に座るアールをじっと見詰めるデージー。視線が交差すると、アールがにっこりと微笑んだので、デージーは顔を真っ赤にしながら、慌てて視線をそらせた。

(……うう、情けない)

 ──でも。例え愛されていなくても、わたしはいま、愛する人と一緒にいるんだわ。

 それだけでも、夢のよう。明日にでもなくなってしまう可能性があるのなら、せめて、いまは。

 だからアールから婚約を申し込まれたときも、脳裏に様々なことが過ったものの、素直に喜び、これからも共にいれることを、神に感謝した。

 ──愛する人と結婚できるなんて。わたしはなんて幸せなのかしら。

 例えばアールの心がどこか別の人にあるとしても、構わなかった。傍にいてくれるなら。

 まだコリンナを想っていても、良かった。

 
 ──なのに。


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