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 カーラの、想像よりもずっと元気そうな姿。そして見舞いはもう大丈夫と言われたパーシーは、それなら放課後は時間があくなと考え、アデルを屋敷に招待することにした。

 まだカーラと話をしていないアデルはやはり遠慮気味に断ってきたが、それを何とか説得し、パーシーはアデルと二人、ペトロフ家の屋敷に帰ってきた。

 屋敷の執事が、怪訝な顔でパーシーを見つめる。

「……パーシー様。その方は」

「んん? お前にはきちんと話ただろう。彼女は、自身の屋敷では心が休まらないのさ。だから、少しでもぼくの屋敷で癒されてもらおうと思ってね。むろん、カーラの了承は得ているよ」

「……さようでございますか」

「そういうわけだから、お茶とお菓子を用意してくれるかな」

「……かしこまりました」

 腰を折り、執事が厨房に入っていく。アデルは「あ、あの。あたし、やっぱり」とおろおろしている。

「どうぞ、気を楽に。カーラとは、明後日には会えますから。そのときに、存分に話せばよいですよ」

 パーシーは後ろからアデルの両肩に手を置き、そっと押した。アデルが戸惑いながらも、足を動かす。泊まっていってもよいと告げたが、それは拒否され、仕方なくまた、アデルの屋敷まで送っていった。次の日も、パーシーはアデルを誘い、二人でお茶を楽しんだ。アデルはまた泊まることを拒否したが、きっとカーラと話せば考えも変わるだろうとパーシーは思っていた。


 ──そして、次の日。

 曇天の朝。鼻唄をうたいながら、学園に行く準備をすすめるパーシー。単純に、カーラと会えるのが楽しみだったし、可憐な女性二人に囲まれる自分を想像しただけで、口元がゆるんだ。

「──ん?」

 部屋で髪をととのえていると、玄関ホールから、執事の驚いた声がパーシーの耳に届いてきた。
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