悲劇の令嬢を救いたい、ですか。忠告はしましたので、あとはお好きにどうぞ。

「──馬鹿馬鹿しい。何だ、この調査報告書は」

 ぱさっ。
 伯爵令息であるパーシーは、テーブルに三枚に束ねられた紙をほうった。向かい側に座る伯爵令嬢のカーラは、静かに口を開いた。

「きちんと目は通してもらえましたか?」

「むろんだ。そのうえで、もう一度言わせてもらうよ。馬鹿馬鹿しい、とね。そもそもどうして、きみは探偵なんか雇ってまで、こんなことをしたんだ?」

 ざわざわ。ざわざわ。
 王都内でも評判のカフェ。昼時のいまは、客で溢れかえっている。

「──女のカン、というやつでしょうか」

「何だ、それは。素直に言ったら少しは可愛げがあるのに」

「素直、とは」

「婚約者のぼくに、きみだけを見てほしいから、こんなことをしました、とかね」

 カーラは一つため息をつき、確認するようにもう一度訊ねた。

「きちんとその調査報告書に目を通されたうえで、あなたはわたしの言っていることを馬鹿馬鹿しいと、信じないというのですね?」

「き、きみを馬鹿馬鹿しいとは言ってないし、きみを信じていないわけじゃない。でも、これは……」

 カーラは「わかりました」と、調査報告書を手に取り、カバンにしまった。


「それではどうぞ、お好きになさいませ」
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