30 / 35
30
しおりを挟む
「どう言えば伝わるの? わたしは、あなたが嫌いなの。同じ空気すら吸いたくない。そうさせたのは、あなたよ。わたしの容姿は、確かに優れていない。そんなことわかっているわよ。でもね、わたしと並んで歩くのが恥ずかしかったと言われて、わたしがどれほど傷付いたか、あなたはちっとも理解していない。だからやり直そうなんて平気で言えるのよ!」
あとね!
答えを待たず、ミラベルが訴え続ける。
「わたしに優しくしてくれている人を侮辱するのは止めて! これ以上続けるなら、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求するわよ!」
はあはあ。
力の限り、心のままに吐露したミラベルの言葉は、どれほどオーブリーに届いたのか。
オーブリーは、なにも言わず、ただぽかんとしている。
アーノルドはしばらくオーブリーを見ていたが、やがてミラベルに「もう行こう」と、優しく声をかけた。
ミラベルが「……すみません、アーノルド様。わたし、こんな人が元婚約者だったなんて、恥ずかしいです……っ」ともらすと、アーノルドは、わたしもだよ、と苦笑した。
アーノルドと学友に促され、ミラベルがオーブリーに背を向ける。縋ろうとするオーブリーの足を、アーノルドが睨み付け、止める。
「……趣味悪い」
苦虫をかみつぶしたような口調で吐き捨てたのは、マルヴィナだった。その目線はアーノルドを追っていたが、すぐにオーブリーに向けられた。
「すごいんですね、オーブリー様って。誰だって、あなたとアーノルド様じゃ、アーノルド様を選びますよ。なのに、拒絶されたのが自分ではなく、アーノルド様だなんてよく言えましたね? 本気なら、もういっそ、感心します」
オーブリーは「……もう、お前の言葉なんて聞かない」と、静かに振り返った。
あとね!
答えを待たず、ミラベルが訴え続ける。
「わたしに優しくしてくれている人を侮辱するのは止めて! これ以上続けるなら、精神的苦痛を受けたとして、慰謝料を請求するわよ!」
はあはあ。
力の限り、心のままに吐露したミラベルの言葉は、どれほどオーブリーに届いたのか。
オーブリーは、なにも言わず、ただぽかんとしている。
アーノルドはしばらくオーブリーを見ていたが、やがてミラベルに「もう行こう」と、優しく声をかけた。
ミラベルが「……すみません、アーノルド様。わたし、こんな人が元婚約者だったなんて、恥ずかしいです……っ」ともらすと、アーノルドは、わたしもだよ、と苦笑した。
アーノルドと学友に促され、ミラベルがオーブリーに背を向ける。縋ろうとするオーブリーの足を、アーノルドが睨み付け、止める。
「……趣味悪い」
苦虫をかみつぶしたような口調で吐き捨てたのは、マルヴィナだった。その目線はアーノルドを追っていたが、すぐにオーブリーに向けられた。
「すごいんですね、オーブリー様って。誰だって、あなたとアーノルド様じゃ、アーノルド様を選びますよ。なのに、拒絶されたのが自分ではなく、アーノルド様だなんてよく言えましたね? 本気なら、もういっそ、感心します」
オーブリーは「……もう、お前の言葉なんて聞かない」と、静かに振り返った。
2,466
お気に入りに追加
3,526
あなたにおすすめの小説
アリシアの恋は終わったのです【完結】
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】円満婚約解消
里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。
まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」
「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。
両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」
第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。
コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。
殿下、幼馴染の令嬢を大事にしたい貴方の恋愛ごっこにはもう愛想が尽きました。
和泉鷹央
恋愛
雪国の祖国を冬の猛威から守るために、聖女カトリーナは病床にふせっていた。
女神様の結界を張り、国を温暖な気候にするためには何か犠牲がいる。
聖女の健康が、その犠牲となっていた。
そんな生活をして十年近く。
カトリーナの許嫁にして幼馴染の王太子ルディは婚約破棄をしたいと言い出した。
その理由はカトリーナを救うためだという。
だが本当はもう一人の幼馴染、フレンヌを王妃に迎えるために、彼らが仕組んだ計略だった――。
他の投稿サイトでも投稿しています。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。
松ノ木るな
恋愛
純真無垢な心の侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気と見なして疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。
伴侶と寄り添う心穏やかな人生を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。
あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。
どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。
たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
【本編完結済】この想いに終止符を…
春野オカリナ
恋愛
長年の婚約を解消されたシェリーネは、新しい婚約者の家に移った。
それは苦い恋愛を経験した後の糖度の高い甘い政略的なもの。
新しい婚約者ジュリアスはシェリーネを甘やかすのに慣れていた。
シェリーネの元婚約者セザールは、異母妹ロゼリナと婚約する。
シェリーネは政略、ロゼリアは恋愛…。
極端な二人の婚約は予想外な結果を生み出す事になる。
そんなにその方が気になるなら、どうぞずっと一緒にいて下さい。私は二度とあなたとは関わりませんので……。
しげむろ ゆうき
恋愛
男爵令嬢と仲良くする婚約者に、何度注意しても聞いてくれない
そして、ある日、婚約者のある言葉を聞き、私はつい言ってしまうのだった
全五話
※ホラー無し
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる