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 あれから、数日が経った。コスタ伯爵の元に向かった執事はまだ帰ってきておらず、家からの連絡もない。落ち着かなくて、待っていられなくて。執事を追いたいと願い出たが、使用人たちは聞く耳を持ってくれず。オーブリーはただ、待つことしかできずにいた。

 従者から話を聞いた使用人たちとは、必要最低限の会話しかしていない。できないのだ。オーブリーがいつも通りに話そうとしても、使用人たちが取り合わなくなってしまった。

 きっと。執事と同じく、みんなもミラベルが好きだったから。

 屋敷でも学園でも孤立し、唯一ともいえる話し相手は、マルヴィナだけ。そのマルヴィナとの会話は、気を使うし、常に見下してくるから気分も悪いし、正直、心が疲れ切っていた。

(……こんなはずじゃなかった)

 何度思ったことだろう。そもそも、マルヴィナの提案を受け入れたのは、相手の望むかたちが、愛人だったから。ミラベルと別れずに、美しい人を手元に置いておけると思ったから。なのに、つい流れで、婚約者として付き合うことになってしまった。

(……やっぱりあのとき、もっとよく考えて行動すればよかったな)

 金遣いが荒く、わがままなマルヴィナ。街ではたまに、マルヴィナの美しさに振り返る男たちがいる。そういうときは誇らしい気持ちにもなるし、付き合えてよかったと、一瞬は思える。でも、学園では誰もマルヴィナの美しさに見惚れない。どころか、距離をとられるしまつ。

「男好きで、性格も難がある、かあ……」

 誰にも聞こえないよう、廊下を歩きながらぽつりと呟いてみる。俯くオーブリーの耳に、複数の笑い声が響いてきた。

 顔を上げると、ミラベルが数人の学友と笑いながら、ちょうど曲がり角を曲がってくるのが、オーブリーの視界の先に入った。

(笑ってると、そこまで不細工じゃないんだな……)

 無意識に。そんな身勝手なことを思いながら、気付いてくれと、じっと視線を送ってみる。

 すると。

「──あ」

 こちらに気付いたのか。ミラベルが、オーブリーの方に顔を向け、薄く頬を赤く染めた。

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