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「ベイジルはこんなわたしにも優しいですから……わたしを傷付けまいと、あなたとの仲を認めないかもしれません」
ネリーが、確かに、と神妙な顔で頷く。
「あたしがクラリッサ様に一言、言ってやりますと申し出たときも、ぼくの本心を告げたら、クラリッサはショックのあまり、自害するかもしれないとひどく心配していましたし……」
「…………そうですか」
それを信じながら、口付けしただの不貞行為をしただの自慢気に告げてきたネリーの神経を疑ったが、むろん、追求はしなかった。
「なにか証拠があればいいのですが。ベイジルが認めざるをえないなにかが……」
「証拠?」
クラリッサが顎に手を当て、黙考する。
「そうですね……どの家ともかかわりのない探偵にお願いして、ベイジルとあなたの仲を証明してもらいましょうか」
「まあ! まるで恋愛小説みたいですね!」
あまり深く物事を考えない思考回路のネリーにいまは感謝しながら、クラリッサは念を押すように、口を開いた。
「ベイジルを誘い、できうる限り、あなたたちが愛し合っているところを探偵に見せつけてください。ベイジルがこれ以上、哀しい嘘をつかなくてもいいように」
「はい! 任せてください!」
「あと、慰謝料のことですが」
「? 慰謝料?」
ネリーが、はてと首を傾げた。慰謝料のことなど、まるで頭になかったかのような表情をしている。
「あの、本来ならあなたは、わたしから慰謝料を請求される立場にあることは……わかっています、よね?」
「ど、どうしてですか? だってクラリッサ様は、ベイジル様の幸せのために自ら身を引く決意をしたのですよね? それなのに慰謝料を請求するなんて、おかしくないですか? それともベイジル様の幸せなんてぜんぶ嘘で、ただお金が欲しかっただけなんですか?!」
怒りを露わに、腕を掴まれ前後に揺すられる。婚約者がいる相手と、堂々と不貞行為をしましたと言っておきながら、慰謝料を請求されるなんておかしいと喚くネリー。
よかった、とクラリッサが胸中で呟く。やはり優しい誰かではなく、ベイジルにはぜひ、倫理観の欠如したネリーと一緒になってほしいと強く思った。
ネリーが、確かに、と神妙な顔で頷く。
「あたしがクラリッサ様に一言、言ってやりますと申し出たときも、ぼくの本心を告げたら、クラリッサはショックのあまり、自害するかもしれないとひどく心配していましたし……」
「…………そうですか」
それを信じながら、口付けしただの不貞行為をしただの自慢気に告げてきたネリーの神経を疑ったが、むろん、追求はしなかった。
「なにか証拠があればいいのですが。ベイジルが認めざるをえないなにかが……」
「証拠?」
クラリッサが顎に手を当て、黙考する。
「そうですね……どの家ともかかわりのない探偵にお願いして、ベイジルとあなたの仲を証明してもらいましょうか」
「まあ! まるで恋愛小説みたいですね!」
あまり深く物事を考えない思考回路のネリーにいまは感謝しながら、クラリッサは念を押すように、口を開いた。
「ベイジルを誘い、できうる限り、あなたたちが愛し合っているところを探偵に見せつけてください。ベイジルがこれ以上、哀しい嘘をつかなくてもいいように」
「はい! 任せてください!」
「あと、慰謝料のことですが」
「? 慰謝料?」
ネリーが、はてと首を傾げた。慰謝料のことなど、まるで頭になかったかのような表情をしている。
「あの、本来ならあなたは、わたしから慰謝料を請求される立場にあることは……わかっています、よね?」
「ど、どうしてですか? だってクラリッサ様は、ベイジル様の幸せのために自ら身を引く決意をしたのですよね? それなのに慰謝料を請求するなんて、おかしくないですか? それともベイジル様の幸せなんてぜんぶ嘘で、ただお金が欲しかっただけなんですか?!」
怒りを露わに、腕を掴まれ前後に揺すられる。婚約者がいる相手と、堂々と不貞行為をしましたと言っておきながら、慰謝料を請求されるなんておかしいと喚くネリー。
よかった、とクラリッサが胸中で呟く。やはり優しい誰かではなく、ベイジルにはぜひ、倫理観の欠如したネリーと一緒になってほしいと強く思った。
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