真実の愛は、誰のもの?

ふまさ

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「ミアはかって! わがまま!」

 ダリアが叫ぶのを、エディが宥める。けれど、ダリアがそう喚く本当の理由をエディが知るのは、もう少しあとのことになる。

 まる一日。存分にエディに甘えたダリアは満足し、眠りについた。

 ルソー伯爵家から除籍されたエディは、ミアが住む屋敷に一緒に暮らすようになったが、当然のように、部屋は別々だった。でも、ミアがコーリーに襲われたあの日から、エディはミアの部屋で、一緒に眠るようになった。

 今夜もエディは、ダリアと一緒に眠った。

 朝になると、表には、ルシンダが出ていた。久しぶりだね、と声をかけると、ルシンダは、愛おしそうに目を細めた。

「そうね。今日は、わたしに付き合ってくれる?」

「喜んで。街に出掛けるかい?」

「いいえ。わたしも、ダリアみたいにあなたに甘えてみたいの」

「それは光栄だ。前は、僕が甘えてしまったから」

「あら。あれはわたしの特権だから、特別感があって、すごくよかったわ」

「そう言ってもらえると嬉しいな。でも、今日は甘えたい気分なんだね」

「そうよ。口付けだって、してもらうわ」

 エディは「口付けで、ダリアが出てくることはもうないの?」と首を捻ると、ルシンダは、多分ね、と笑った。

「してみないとわからないから、口付けは、夜までとっておくわ」

 そして。

 空が青から黒に染まったころ。二人は口付けをかわした。

 けれど、ダリアは出てこなかった。

「これで、ミアとも口付けができるわね」

 ルシンダの科白に、エディは「そうだね」と照れくさそうに微笑んでみせた。



 次の日。

 眩しい光が窓から入ってくる部屋の中。

 エディは、はじめて、ミアと口付けをした。

 そっと触れるだけのものだったが、ミアは唇が離れたあと、かあっと顔を赤くした。俯き「て、照れますね」と小さな声で呟いた。

「可愛い」

 思わず吐露すると、ミアは、う、と声を詰まらせた。

「わ、わたしはエディと違って、はじめてでしたから!」

「なんか、語弊があるなあ。間違ってはないけど」

 ふふ。笑うエディに、ミアは、そっと抱き付いてきた。エディが、受け止めるようにミアの背中に腕をまわす。

「エディ。ダリアとルシンダに代わって、お礼を言います。二人に、まる一日付き合ってくださって、ありがとうございました」

「ん? 僕も楽しかったから、お礼はいいよ」

「……本当に、エディは優しいですね」

「そうかな」


「そうですよ。そんなあなたに、わたしは、とてもじゃないですが、相応しくはありません」


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